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MarkeZine Day 2026 Spring

デジタルで広がる、オフライン広告の可能性

2025年下半期に話題になったOOH15選!「BMSG」から「無限城」まで、SNSで話題化する法則

驚きを与える「特殊演出」で話題化

 私のように意識してOOHを見ている方は、少数派。多くの方はOOHを広告として強く意識せず、街並みの一部として受け流していると思います。だからこそ、意表を突く演出は人々を振り向かせる強力なトリガーになります

 たとえば、9月に展開されたLUXと名探偵コナンのバス停広告は印象に残っています。

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 最大の特徴は、日中と夜間でクリエイティブが変化する点。筆者自身、通りがかりで違和感があり、写真を見比べてクリエイティブが異なっていたことに気づきました。

 「変化に気づいた瞬間」に発生する「驚き」こそ、この広告が持つ最大の価値であり、記憶に残る起点となっています。

 9月に見た、世界陸上の広告も記憶に残っています。

 リアルな「学校の掲示板」を想像させる装飾で展開。学生の頃に作った記憶があるフワフワの花、生徒の絵、校内新聞、空きスペースを埋めるように貼られたイラスト……と懐かしさを思わせ、学生時代の記憶を呼び覚ますような、リアリティ溢れる広告展開となっていました。

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 掲示物をよく見ると、実は「世界陸上」という共通のテーマで制作されています。1枚1枚、個別に作られた制作物が丁寧に貼られ、アンバサダーを務めた織田裕二さんを象徴する「キター」が画鋲で描かれたワンポイントも。

 内容的にすべてを1枚のポスターにして「印刷」しても対応できそうですが、あえて手間をかけてリアリティを追求したことで、高い注目率につながっていたと感じます。

 9月に六本木で展開された、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』の広告も見逃せません。

 六本木ヒルズの「メトロハット」と呼ばれる媒体で展開された広告ですが、特筆すべきは天井壁画。通常販売されている内周に加え、天井をおさえることで強烈な没入感を生み出していました。

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 ただ、そうは言っても「実際に現地で見ると、天井に気づかないのでは?」という声もあると思います。

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 上記写真は、六本木ヒルズ側からエスカレーターで下って六本木駅に向かう途中、エスカレーターに乗った直後に撮影した写真です。

 最初、天井によって全貌が見えないのですが、エスカレーターが進んで天井がなくなると一気に視界が開け、天井画が顔を出します。その瞬間、一気にアリスワールドに引き込まれた印象でした。ガラッと雰囲気が変わる……とも言えるでしょうか。

 実際、エスカレーターで下っている人が気づいて上を見ていることで、エスカレーター上りの人たちが「何事か?」と気づくというシーンが多かったです。天井単体で広告価値があるとは思いませんが、空間全体を掌握するための一要素として展開されることで、グッと没入感を高めた展開でした。

「世界観を体感」できる仕掛けで話題化

 表現の自由度が高いOOHは、時に「作品の世界観」を表現する手段として使われます。

 作品を知らない方には届きにくい反面、ファンや文脈を理解する方に対し、より深い理解と熱狂を生み出します。

 たとえば、7月公開の『劇場版「鬼滅の刃」無限城 第一章 猗窩座再来』の公開に合わせて展開された新宿駅の広告は印象的でした。

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 新宿駅入口で実施された広告は「貴様らがこれから行くのは地獄だ」というコピーが印象的。新宿駅が迷宮や巨大迷路と形容される文脈に合わせ、作中で描かれる複雑構造の「無限城」に置き換えて表現。この文脈に気がついたユーザーがSNS投稿したり、いくつかWEBメディアで取り上げられたりするなど話題となっていました。

 同様に鬼滅の刃の広告で、「夜だけ」現れる鬼たちのシャッター広告も見逃せません。

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 Spotifyが展開した同作とのコラボ広告では、敵である「鬼」が夜しか活動できないことを逆手に取り、店舗の営業後しか現れないシャッターを活用。夜だけ渋谷に鬼を出現させ、「#渋谷ニ鬼ノ気配アリ」をつけてX投稿するとプレゼントがもらえる仕掛けで展開していました。

 同じく7月に実施されたアニメ『SAKAMOTO DAYS(サカモトデイズ)』の広告も記憶に残っています。「集中貼り」という手法で、駅壁面に複数枚展開されたポスターの一部が特に印象的でした。

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 同作に登場する篁(たかむら)というキャラクターが日本刀の使い手であることにちなんで、まるで篁に切られたようなポスターが掲載。刀の軌道がビシッと一直線にそろっているのは正直驚きでしたし、同作を知る私個人としても、この再現度は感動ものでした。

 人気作だから成り立つという見方もありますが、コアファンが確実に反応し、思わずシェアしたくなる内容に落とし込んでいる点は見逃せません。

 最近は、各作品やアーティストのファンコミュニティで掲出場所が聖地のように扱われるケースが数多く見られます。「知らない人」に知ってもらうのではなく、「知っている人」が見に行く理由を作り、その動き自体が拡散の起点になる……そんな事例も増えてきました。

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「イベント化」することで話題化

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この記事の著者

加藤 誠也(カトウ セイヤ)

株式会社ビズパ 執行役員
食品メーカーで営業職を経験後、2019年同社に入社。オフライン領域(OOH、紙広告、店舗メディア 等)に特化して企業のマーケティング活動を支援。「広告巡礼」が日課で、毎日事例をSNSで紹介しており、オフライン領域のプロとしてメディア出演や大学での講演も多数。詳細プロフィールはこちら

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/12/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50176

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