業界トップとの「共創」で社会に新カテゴリーを作り、産業全体のモデルケースへ
同社が取り組んだのが、東宝との共創による「映像制作のゼロエミッション化」だ。その核となるのは、24時間365日、常にカーボンフリーな電力を供給し、その需要と供給を1時間単位で一致させる「24/7カーボンフリー電力」の実装である。
これは、従来の「年間の使用量を再エネ価値でオフセットする」という手法とは一線を画す。ドイツから導入した水素発電機やJERA所有の太陽光発電所を組み合わせ、物理的なインフラ構築からウェブアプリケーションによる制御までを自社のエンジニアが実装。撮影のその瞬間、まさに使われている電力がクリーンであることを証明する仕組みだ。
注目すべきは、パートナーとして東宝という業界のトップランナーを選んだ戦略性だ。あえて業界全体に影響力を持つ企業とタッグを組み、その複雑な制作現場に「24/7カーボンフリー電力」を実装してみせることは、他のエンタープライズ企業に対する強力な証明、すなわち、業界全体の「モデルケース」を構築することになる。
施策のユニークさは技術面に留まらない。趙氏は「現場の方々に価値を理解していただくことを重視した」という。東宝スタジオ内には、現在の電力が何由来かをリアルタイムで示すモニターを6台設置。目に見えない電力を可視化することで、制作現場の意識醸成を図った。
このプロジェクトは、単なる「電力の切り替え」を超え、社会に新たなカテゴリーを作っている。
- コンテンツを脱炭素の電力で制作:世界的なIP(Intellectual Property:知的財産)となるコンテンツの制作現場に脱炭素を導入
- ビジネスモデルの変革:カーボンフリーで撮影された映画を優先配給するロードマップや、「脱炭素CM」といった新たな広告カテゴリーの可能性を模索
- 市場への波及効果:業界のトップランナーでの実績をレバレッジに、同様の課題を抱える他産業のトップランナーへ横展開していくための「実証済みモデル」を確立
「目的は儲けよりも、業界を巻き込んで社会を変えること。2035年までに国内No.1のGX推進企業になりたい」と趙氏は展望を語る。コモディティ化した電力に「物語」と「技術的根拠」を与え、業界全体に影響力を持つ企業とともに新たな市場を切り拓くJERA Crossの挑戦は、あらゆる産業におけるGXマーケティングの道標となるだろう。
取り組みの関係企業:株式会社JERA Cross(共創パートナー)、TOHOスタジオ株式会社(共創パートナー)
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