経済産業省は5月28日、環境に配慮した次世代の自動車と燃料の導入に向けた戦略を発表した。技術革新を進め、2030年までに電気自動車を本格的に普及させるとしており、これを政府が6月中旬に閣議決定する「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)」に盛り込みたい意向だ。またITを活用し、「世界一やさしいクルマ社会の実現」を目標に掲げた。
現在の日本の自動車エネルギー・環境技術は世界でもトップクラスにあり、日本の自動車メーカーは日進月歩で電気自動車、ハイブリッド、燃料電池、クリーンディーゼルなど全方位で環境技術開発に取り組んでいる。また、カーナビゲーションシステムも世界最高峰であり、VICS(道路交通情報通信システム)の普及率も極めて高い。
しかしその一方で、日本のクルマ社会全体としては問題が山積みだ。大都市や幹線高速道路では渋滞は日常茶飯事で、東京の平均車速はわずか18km/h、ロンドン(30km/h)やパリ(26km/h)に遠くおよばない。平均時速が1km/h 遅いと燃費は1%悪化するとされており、日本のクルマ社会は環境に優しいとは言えない状態だ。政府の政策もこうした状態を反映している。京都議定書目標達成計画によると、運輸部門のCO2 削減の63%は自動車単体の燃費向上に依存し、クルマ社会の反映であるITS を活用した交通流対策の貢献はわずか1%に過ぎない。
これを打開するのがITの活用だ。経済産業省の資料でも「クルマの改革、燃料の改革とともに、環境に優しい道路整備や街づくりをも同時に進めれば、世界一やさしいクルマ社会の実現も夢ではない」としている。下記の資料は28日に経済産業省が発表した資料「世界一やさしいクルマ社会イメージ」を抜粋したものだ。
このイメージでは街には車道と歩道、さらには低速車専用道路が縦横に整備され、低速車両専用道路では、老若男女が電動車両で環境にやさしいパーソナルビークルを駆使して自由に快適に移動する。主要高速道路に目を転じれば、IT を駆使した隊列走行車両が専用レーンを走行している。インターチェンジを降りれば、個々の車両に分かれて高効率の物流サービスを展開する。街中でも高速道路でも、各自動車から発信された走行情報が集積され、カーナビにリアルタイム交通渋滞情報が転送される。これを通じて、より精密なエコドライブ支援や渋滞回避ルートの提示、信号制御の効率化が実現し、渋滞も大きく解消される。
このイメージ通りに実現するかはわからないが、渋滞が解消され排気ガスが減れば、空気もきれいになり、大都市で生活している人も深呼吸したくなる朝を迎えられるようになるだろう。