「ニコニコ動画」は、再生している動画に字幕コメントを入れるサービスによって、開始から半年ほどで100万人ものユーザーを集める人気サイトとなった。しかし、あまりの人気ぶりに、動画データを利用していたYouTubeから突然アクセスを拒否され、サービス停止に追い込まれるなど、ユーザーや周囲の人たちをつねにハラハラさせてきた「人騒がせなサービス」でもある。その開発・運営の舞台裏について、新サービス公開直前の3氏にお話をうかがった。
インタビュー 登場人物
西村博之(株式会社ニワンゴ 取締役管理人)ふらっと会議に現れて適当にしゃべる係という、ご存知2ちゃんねる管理人「ひろゆき」氏。
中野 真(株式会社ドワンゴ dwango事業本部第一企画開発セクション セクションマネージャー)全体の統括、マネージャー、進行管理など、最近はあまりコーディングしていません。
鈴木慎之介(株式会社ドワンゴ 開発部ポータル機能開発セクション)「ニコニコ動画(仮)」のコーディングを担当。現在は管理もやりつつ、ときどきコーディングも。
写真は左から、西村氏、中野氏、鈴木氏。
※本記事は、インタビューをもとにMarkeZine編集部が再構成したものです。インタビュー時には開発中だった「ニコニコ動画(RC)」は6月18日に正式に公開されました。
※ほぼノーカット版をCodeZineでも公開しています。→「前編」「後編」
いつの間にかユーザーにのっとられていた(?)ニコニコ動画
MZ
鈴木
鋭意制作中でございます。ちなみに昨日おとといは、会社で楽しく過ごさせていただきました(笑)。
MZ
「ニコニコ動画」は、2007年の1月からβサービスをスタートして、わずか半年の間に、ユーザーの爆発的増加、YouTubeからのアクセス拒否によるサービス停止、自前の動画投稿サーバの構築など、めまぐるしい変化をとげてきました。スタッフの皆さんは開発当初から「これは来るかも」という思いはあったのでしょうか。
中野
開発している時点で、たぶん面白いだろうなという思いはあったんですけど、やっぱり自分の頭の中でイメージできる、実際に使われているときの想像って、限界があるんですよ。
実際サービスインしてみたら、「弾幕(画面を埋め尽くすような大量のコメント)」が出てきたりとか、「字幕職人(職人的な技を駆使して画面上のコメントを見事に整える人々)」が出てきたりとか、ああいうのはちょっと予想を超えて「ああ、これは面白いな」と。作った立場なんですけど、感動しましたね。こんなことできるんだって。そういう意味では、我々が作ったと言うよりもユーザーが作った部分がすごくある気がします。
代表的なコメント字幕作品のひとつ「新・豪傑寺一族―煩悩解放―レッツゴー!陰陽師」は、
ユーザーの圧倒的支持を受けて、DVD付きCDが発売された(画面はγサービス時点のもの)。
MZ
「開発者ブログ」では、開発者とユーザーの双方から率直な意見がやりとりされています。中には困ってしまうようなものや逆にうれしくなるような意見というのもあったと思いますが。
中野
そうですね。最初、すごくユーザーが協力的だったんですが、時間が経つにつれてユーザーが「ニコニコ動画は俺たちのモノだ」という感じになってきて…。
一同
(爆笑)
中野
それは面白かったですね。どんどんユーザーがワガママになっていくという。でも、そういう環境になると面白い意見が出てくるので、その中から拾って実現したりもしています。困ったことでいうと…タグでチャットされるのはちょっと困った(笑)。
鈴木
でも、それもご愛嬌ということで。あと、ユーザーさんの中でも空気を読む方もいらっしゃって、「そういう迷惑になることはやめようよ」という、自浄作用がある程度働きはじめているんですよね。だから、そういうのもあって、少なからず我々の思わぬところで、こちらもあずかり知らぬ運営みたいなものができてきていると思うんです。
MZ
ユーザーによっていつの間にか運営されていたと(笑)。ニコニコ動画のユーザーの皆さんはかなりパワフルなんでしょうか。
鈴木
夜中のアクセスがすごいんですよ、朝方とかも。時々見てるんですけど「寝てるのか?」と本当に気になるくらいで。滞在時間も長いんですよ。平均で1回あたり28分くらい。ヘビーユーザーだと、1人で2~3時間くらい「ニコニコ漬け」ですね。
中野
土日とかも昼間っからピーク状態にいくので。外出たほうがいいんじゃないかって(笑)。リピーター多いです。でも、ユーザーの人たちには、「ニコニコは1人1時間まで」とか言いたいですね(笑)。
ひろ
宣言しちゃうんだ(笑)。
中野
ゲームも1日1時間までとかですよね。ユーザーのためを気遣って、1日1時間以上見ると生活に支障をきたすよっていうことで。