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ユーザーを知らずにWebをデザインできますか?~ペルソナ/シナリオ法の活用~

ビジネスの分野でも、ソフトウェアやWebデザインのようなユーザー・インターフェース・デザインの分野でも、顧客やユーザーの経験(エクスペリエンス)をいかに向上し、競合他社に対する競争優位性を確立するかが課題として論じられることが多くなっています。ユーザーエクスペリエンスをデザインするために有効な手法のひとつとして、ペルソナ/シナリオ法を用いたデザイン・プロセスについてご紹介します。

ペルソナ/シナリオ法とは

 ペルソナ/シナリオ法は、デザインプロセスの上流工程におけるユーザー要求分析の手法で、ユーザーが本当に使いたいと感じる製品を実現するために用いられます。 

 ペルソナ/シナリオ法を最初に用いたのは、MicrosoftでVisual Basicを開発しWindowsを3.1から95へリデザインしたアラン・クーパーです。クーパーは、プロダクトのユーザビリティを高めるためにはユーザーへの感情移入が重要と考え、仮想のユーザーのペルソナを用いて実際のユーザーの利用シーンをシナリオとしてイメージしながら、Visual Basicのデザインを進めました。

 ペルソナを使ってユーザーの行動シナリオを描く利点は、デザイン&開発メンバー全員が、自分たちの作ろうとしているものが誰のためのもので、いつどんな時に、どんな場所で、どんな目的でどのようにそれを使うのかを、共に考えることができるようになる点にあります。モノのかたちや機能を決める際、デザインチームがそれを使うユーザーの姿を客観的に感じられるようになることで、デザイン作業は単にモノの形を決めるものから、ユーザーとモノとのインタラクションをデザインへと変化します。

ユーザーの経験を客観視するためのシナリオ

 ペルソナ/シナリオ法で用いるシナリオは、決して文章で書いたテキストでなければいけないというわけではありません。よりユーザーの利用シーンを直感的にイメージできるものにしたければ、写真やイラストを用いた絵コンテのようなものを作成したほうがより効果的でしょう。

 世界的に評価の高いデザイン・コンサルティングファームであるIDEOでは、ある製品のデザインを行う過程で具体的なデザイン作業に入る前に、その製品をユーザーが使うシーンを克明に描写した「予告編」の映像を制作することもあるそうです。

 デザイナーはオフィスにこもって作業を進めるためにどうしてもユーザー視点を忘れ、シーズ志向に陥りがちです。しかし、ペルソナを使ったシナリオを作成する作業を行うことで、デザインチームはユーザーが実際に製品を利用するシーン、利用する際のユーザー経験を客観的に、かつ具体的に考えるできるようになります。

 ペルソナ/シナリオ法は、デザインチームをユーザーニーズにフォーカスするようサポートしてくれ、単純に製品やWebサイトなどのモノをつくる作業から、製品やWebサイトを使うユーザーの経験そのものをデザインする作業へとデザイナーの仕事の意味を変えてくれる手法なのです。

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この記事の著者

棚橋 弘季(タナハシ ヒロキ)

芝浦工業大学工学部(建築学専攻)卒。マーケティング・リサーチ、Web開発等の仕事を経て2003年より株式会社ミツエーリンクスに。現在はWebを使ったマーケティングに関する企画や自社サービスの開発に従事。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2007/06/27 10:00 https://markezine.jp/article/detail/1348

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