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ゲーミフィケーションとは何か? 概念の基本と現状

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2011/09/09 11:00

 今年になり、各所で目にするようになった「ゲーミフィケーション(gamification)」という概念。海外では既に専門カンファレンスまで開催されている。本連載では、この新しい概念の概要や背景、手法や応用範囲などを全6回に渡り解説していく。第1回目は、ゲーミフィケ―ションの概要と各分野との関連性、国内外でどのように注目されているかを紹介していく。

本連載にあたり

 初めまして、深田と申します。本日よりおよそ月1回ペースで6回にわたり、最近聞く機会が少しずつ増えてきている「ゲーミフィケーション」に関する連載記事を持たせていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

 簡単に自己紹介を致します。私自身はGamification.jpという、ゲーミフィケーションに関する情報発信サイトを今年の1月に立上げ、以降このコンセプトを皆さんに正しく届けたいという思いで記事を書いています。『ソーシャルゲームはなぜハマるのか ゲーミフィケーションが変える顧客満足』という書籍も執筆させていただきました。

Gamification.jp
Gamification.jp

 一方、そもそもは株式会社ゆめみという会社を2000年に創業し、そちらで事業を営んでいる立場でもあります。ゆめみはエンジニアが7割を占める技術の会社ですので、ゲーミフィケーションという概念も「どうやって実際に使いものにするのか、あるいは使いものになるのか」というスタンスでずっと捉えてきました。

 これまでもインターネットの業界においては、様々なバズワードが表れては消えて行きました。本当に消えてなくなってしまったものも多くありますが、一方で当たり前のものとなることで消える言葉もありました。数年前に聞かれた「Web2.0」という言葉は今さら誰も使いませんが、これは当たり前になったためと言えるでしょう。おそらく、今から数年後には、「ソーシャル」という言葉も、当然のことであって今さら言うまでもないということになるのではないでしょうか。

 私は「ゲーミフィケーション」という言葉もそういった言葉の1つになる、気がつけばそれが当たり前のことになっている未来を描いています。とは言っても、現時点ではまだまだその言葉すら浸透しておらず、実際に活用される段階には至っていない状況であることも確かです。

連載の目的と想定読者

 本連載は、ゲーミフィケーションについての正しい理解を広めること、そしてその有用性を認識してもらうことを目的としています。特に読んでいただきたいのは、企業でマーケティングを担当されている方、中でもお客様とのリレーションを考えることが業務であるような方です。ゲーミフィケーションは顧客を活性化するためのサービスデザイン手法として捉えることもできます。特にWebと相性がいいので、Webサイトの活性化にも有用です。

連載の構成

 連載の第1、2回でゲーミフィケーションの基本的な概念を説明し、その本質的な意味について理解を深めていただきます。第3回では、この概念を実際のサービスに適用するための「ゲーミフィケーション・フレームワーク」を説明します。第4回ではFAQを通じてゲーミフィケーションに関するよくある誤解を解消します。第5回で実際の適用事例についていくつか取り上げます。最終第6回では今後の展望について説明します。

 なお、急速に変化している領域ですので、本連載期間中にもなるべく最新の情報を提供できるようにしていくつもりです。それでは早速本文に入って行きましょう。

ゲーミフィケーションとは何か

 まず、「ゲーミフィケーションとは何か」という所から入っていきましょう。言葉の定義としては、

ゲームが持つプレイヤーを活性化させるノウハウを、ゲーム以外の領域に使うこと

が最も簡潔なものとなります。一体、何のことでしょうか? よく考えるとこのような試みは、ゲーミフィケーションともったいぶって言わなくとも様々なところで行われています。「くら寿司」を例にとって考えてみましょう。

くら寿司から見る「ゲーミフィケーション」

 皆さんは、くら寿司に行ったことはありますでしょうか? 回転寿司チェーン大手の1社で、いつ行っても非常に混雑しています。同社が提供するテーブルには「ビッくらポン!!」と呼ばれる仕掛けが設置されています。食べ終わった寿司のお皿を各テーブルにある皿回収ポケットに入れていき、5枚入れるたびに、注文用タッチパネルの画面でルーレットやゲームがスタートします。「アタリ」が出ると、設置されているガチャガチャから、オリジナルグッズのカプセルが出てくるというのが、この仕掛けです。

くら寿司の客卓に設置されてる仕掛け「ビッくらポン!!」
くら寿司の客卓に設置されてる仕掛け「ビッくらポン!!」

 この仕掛けがあることで、つい「あと2枚食べてもう1度スロットにチャレンジするか!」となってしまいます。特にファミリー層が主要な顧客層であると思いますので、お父さんは子供から「もっと食べて!」とせがまれる姿が容易に想像できます。一皿100円ですから「まあ2枚位いいか」と追加注文することで、お客さんもハッピー、企業側もハッピーという結果となります。

 このように、利用者が楽しくなるような仕掛けを通じて活性化を図るということは、リアルな店舗でも見られます。ゲーミフィケーションでは、このような仕掛けを汎用的に様々なサービスに施していくことを狙います。

 「なぜ今注目を集めているのか?」という問いに対しては第2回で答えを用意していますが、それには「ソーシャルWeb」ということが大いに関係しています。そのため、ここでいうゲームとは、あえて狭く捉えて「主にソーシャルゲームのことを指す」と考えてください。広く捉えれば、「遊び全般」とも言えますし、その中間として「デジタルゲーム全般」と捉えてもいいのですが、ソーシャルとゲーミフィケーションは太い関係があることと、話を分かりやすくするために、本連載ではそのように考えます。

プレイヤーを活性化させるためのノウハウ「ゲームメカニクス」

 また、もう1つ「ゲームメカニクス」という言葉もここで紹介しておきます。これは上で説明した「ゲームが持つプレイヤーを活性化させるためのノウハウ」のことを指す言葉です。様々にあるのですが例えばレベルや称号、ポイント、ミッション、ランキング、といったようなゲームによく見られるような要素もあれば、ゲームバランスのチューニングによる“つまづかかない”プレイの流れを作るような、ゲーム制作者のノウハウも含められます。

 こうしたゲームメカニクスは、そのエッセンスを抽出すれば“プレイヤーをどのようにすれば楽しませ続けることができるのか”という工夫の塊であると捉えることができます。さらに、ソーシャル性が加わることでより強力にプレイヤーをモチベートする仕組みとして機能させることができます。

 つまり、ソーシャルゲームはゲームメカニクスとソーシャル性の活用事例、双方のノウハウがたくさん詰まっていると見ることができるのです。ゲーミフィケーションは、このような目線でソーシャルゲームを眺めた結果、ゲーム以外の領域にそのノウハウを使うことを実現しようという発想で生まれたコンセプトです。


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著者プロフィール

  • 深田浩嗣(フカダコウジ)

    京都大学工学部情報学科卒業。2000年1月、同大学院在学中、片岡俊行、中田稔と共に株式会ゆめみを設立後、ゲーミフィケーションの概念を用いたエンゲージメントソリューション「Sprocket(スプロケット)」開発に注力。 2014年6月、株式会社Sprocketとしてゆめみより分社し代表取締役に就任。Sp...

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