拡大を続ける運用型広告市場
今日では一般的な用語として浸透した「運用型広告」。毎年電通が発表する「日本の広告費」に、運用型広告という分類が登場したのはたった3年前の2012年のことだ。DSPをはじめとする急激なアドテクノロジーの進化に伴い、2013年度における運用型広告の市場は前年比120%超で4,122億円にまで拡大している。(関連ニュースはこちら)
運用型広告とは、膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法のこと。検索連動広告や一部のアドネットワークが含まれるほか、DSP/アドエクスチェンジ/SSPなどが典型例。なお、枠売り広告、タイアップ広告、アフィリエイト広告などは、運用型広告には含まれない。
その運用型広告市場の拡大を牽引しているのがDSP/SSPを活用したRTB(Real Time Bidding)市場であり、プログラマティックと呼ばれる代表的な領域でもある。ミック経済研究所の調査によると、日本において、2016年にはネット広告の7割弱が運用型広告になると予測されている(関連ニュースはこちら)。
一方で先ゆく米国市場では、2017年までにデジタル広告の約80%がプログラマティックになると予測されている。その拡大を支えるのが「RTB」と「Non-RTB programmatic」だ。「Non-RTB programmatic」は、自動化された売買だがオークション(入札)は行わない取引のことであり、これが電通とGoogleが構築を目指すプライベート・マーケットプレイスと呼ぶ市場だ。(グローバル及び米国でのプログラマティック市場の動向の詳細はこちらの記事をご参考に)
電通が提唱する「プライベート・マーケットプレイス」とは何か
――昨年10月に、電通がGoogleと組み、プライベート・マーケットプレイス(以下、PMP)を構築していくことを発表し、大きな話題となりました(関連ニュースはこちら)。そもそもPMP、すなわちプライベートエクスチェンジ(選ばれた媒体社が参加するプライベートな広告取引のためのマーケット)という言葉自体が日本ではまだ浸透していないと思いますが、どういうものなのでしょうか。
「純広告とアドネットワーク、そしてDSPやSSPを使ったRTBの間のようなイメージでしょうか。具体的に説明するために、価格(プレミアム/レムナント)とターゲティング精度(プログラマティック/手売り)の2つの軸で考えてみましょう。例えば、純広告はプレミアムですがプログラマティックではないので、図の左上の領域に位置します。一方、RTBは基本的にレムナント(余り在庫)が多くプログラマティックなので、右下に位置します。そしてPMPの定義はかなり広いのですが、プレミアムな枠に対してプログラマティックに買い付けるという意味で右上の領域になります。これまでになかった新しい市場と言えます」
「またPMPに関しては、ギャランティー(Guaranteed)をするか否かで、大きく2つに分けられます。前者は基本的には予算やインプレッション数などを保証するので、純広告に近いかたちですが、そこにはプログラマティック的な要素が含まれています。もう一方はギャランティーしませんが、CPMを高くすることでRTBに流れる前に優先的に在庫を買い付ける仕組みです」
ギャランティーとは、買い手と売り手で取引交渉を直接行い、在庫(インプレッション)や単価、掲載期間などを保証すること。
ギャランティー有:「Automated Guaranteed」
プログラマティックな取引の中で純広(直販/direct sales)と同じく、最も高いプライオリティ設定となる。
ギャランティー無:「Unreserved Fixed Rate」
単純なDeal IDベースの取引だが、CPAは高く設定し、RTBに在庫を流す前に優先的に買い付けることができる。オークションは発生せずに、優先的に広告在庫を買うことができる仕組み。
「整理すると、まずSSP/DSPを活用してオープンで自由にリアルタイム取引を行うRTBの市場(Open Auction)があります。そしてその上に、完全にオープンではなく広告主を限定する招待制のオークション取引(Invitation Only Auction)があり、ここを狭義の意味で“Private marketplace”と呼ぶこともあります。この2つの領域ではフロアプライスだけ決まっており、価格は固定ではありません。そして電通が提唱するPMPはこれらとは異なり、基本的には価格が固定されたプライベート・エクスチェンジの市場ですね」