6兆円の印刷市場をネットを使って変革する
ラクスルは全国の印刷会社をネットワーク化し、印刷機の非稼働時間を活用することで、低価格な印刷を可能にする印刷のEコマース事業を展開している。同社は今年2月、事業強化を目的に総額40億円の第三者割当増資を実施。引受先として、既存株主であるオプト、グローバル・ブレイン、WiL、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ANRI、電通デジタル・ホールディングス、GMO VenturePartnersに、新たにリンクアンドモチベーション、グリーベンチャーズ、Global Catalyst Partners Japanが加わった。
ラクスルは3月3日、虎ノ門ヒルズで事業構想発表会を開催。ラクスル代表 松本恭攝氏は、6兆円の規模がありながら3万社の印刷会社がひしめく印刷市場は「巨大だが、非効率的でいびつな業界構造となっている」と指摘した。
ラクスルは印刷会社をネットワーク化し「シェアリングエコノミー」による印刷サービスを実現。付け合わせ印刷で版代をシェアしたり、紙やインクの一括購入、周辺機器の安価貸出、営業担当者がいなくても受注できる仕組みを提供することで、登録会員は10万社に成長している。
同社のサービスを最も利用しているのは中小企業。その8割がチラシやパンフレットの印刷だ。昨今では「集客」と言えば「ネット集客」に目が行きがちだが、松本氏は「中小企業の8割はネットを使えていない」と指摘。身近な集客ツールであるチラシをより効率的に安価に活用するための新サービス「チラシラクスル」を発表した。
「どっちのデザインがいい?」も事前にわかる「チラシラクスル」
「チラシラクスル」は、「デザイン・印刷・配布」の3つのサービスで構成。新サービス「ラクスルデザインラボ」によって、クラウドソーシングを活用した「デザイン制作」と「印刷前デザイン比較」が可能になる。
デザインスキルのあるクラウドワーカーが、利用者の要望に合わせて複数のデザインをゼロから制作し、上がってきた複数のデザイン案に対して主婦や学生、高齢者で構成されるクラウドワーカーがインターネット上で評価を行う仕組みを取り入れている。印刷前にデザインの検証・比較をした上で、最も気に入ったデザインを選択し印刷する。価格はデザイン制作とデザイン比較合わせて1万円から。
印刷は、印刷会社の非稼働時間を活用したラクスルの印刷サービスが担う。配布では、Web上で発注が完了する折込チラシ、ポスティングサービスを提供。画面上に地図を表示し、チラシを配布したい地域を選択することができる。
折込チラシは、折込希望日や新聞銘柄を入力すると配布部数と金額を確認できる。価格はチラシ3000部なら印刷込みで約2万5000円、10,000部なら約7万円で配付可能。新ポスティングサービス「ラクスルポスト」においても、地図上で配布希望地域を丁町目単位で選択し、配布希望日と部数を入力すると金額がわかる。価格は印刷・ポスティング込みで1万円から。「ラクスルポスト」はリクルートマーケティングパートナーズが運営する中古車情報メディア「カーセンサー」と提携し、中古車販売店向けにOEMサービスも提供している。
発表会にはラクスルに出資する、鉢嶺 登氏(オプト代表取締役社長CEO)、伊佐山 元氏(WiL共同創業者CEO)、青柳直樹氏(グリー 取締役 執行役員常務)が登壇。さらに経済産業省から 石井芳明氏(経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官)も加わって、中小企業の集客支援やベンチャー企業の資金調達についてのパネルディスカッションが行われた。
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