消費者の広告・表示相談を受け付け、審査・適正化に努める日本広告審査機構(以下、JARO)は、2018年度に消費者から受け付けた苦情や問い合わせに基づく審査概況を発表した。
サマリー
- 総苦情件数8,386件、うちネット広告についての苦情が2,847件
- 規制強化も、健康食品通販のサブスクリプションに関わる苦情は減少せず
- 広告規制違反の恐れはネットが最多、表示手法の苦情も増加傾向
- 「見解」26件を発信、うちネット広告関連が14件で最多に
ネット広告の苦情は前年比116%
2018年度(2018年4月~2019年3月)の苦情は8,386件で、前年比111.1%だった。そのうちネット広告についての苦情が2,847件(同116.2%)と伸び、総受付件数を押し上げた。
規制強化も、健康食品通販のサブスクリプションに関わる苦情は減少せず
苦情8,386件を業種別に見ると、多かったのは「デジタルコンテンツ等」「健康食品」「携帯電話サービス」「通信販売業」「自動車」で、上位は前年度と同様の業種となった。オンラインゲーム、電子コミックや映像の配信サービスなどに意見が寄せられ1位となった。
「健康食品」については、医薬品医療機器等法や景品表示法、特定商取引法などに照らして問題があると思われる広告への苦情が多いという。販売形態は通信販売がほとんどであり、定期購入契約(以下、サブスクリプション)の事例も見られる。
サブスクリプションについては、2017年度に特定商取引法施行規則が改正され、定期購入契約に関する表示義務の明確化による消費者トラブルの減少が期待されたが、JAROに寄せられた苦情では2015年度15件、2016年度44件、2017年度95件、2018年度98件と推移しており、減少が見られない。
広告規制違反の恐れはネットが最多、表示手法の苦情も増加傾向
JAROに寄せられる苦情は(1)広告・表示規制上の問題、(2)広告表現、(3)広告の手法に大別できるが、近年、広告手法、特にインターネット上の迷惑な広告手法に関する苦情が寄せられているという。
まず、(1)の「広告・表示規制上の問題」は、広告・表示が事実と異なる、誤認を招くといった広告規制上問題があると訴える苦情である。媒体別では、「インターネット」2,042件、「テレビ」958件、「チラシ」177件、「折込」159件、「店頭」156件、「新聞」128件、「ラジオ」113件となる。広告規制に違反する恐れのあるものも含まれ、インターネット媒体が最多で52.7%を占めた。
(2)の「広告表現」は、広告の描き方が「セクハラである」「暴力的である」「子どもに悪影響がある」などといった意見である。媒体は「テレビ」3,134件、「インターネット」604件、「ラジオ」158件、「新聞」49件、「交通」38件となった。広告表現における苦情では「テレビ」が79.4%を占める。
(3)の「広告の手法」はCMの音の大きさ、広告の頻度、ステマ、迷惑な広告掲載方法などである。苦情対象媒体は「テレビ」300件、「インターネット」201件、「ラジオ」35件、「屋外」13件などであり、上位2媒体で9割を占める。「テレビ」については音量や頻度がほとんどである。
「インターネット」については、迷惑な広告掲載方法が35件で、「画面いっぱいに広告が広がって記事が読めない」「広告が動き回るので誤タップする」「閉じるボタンを押すと販売サイトに飛ばされる」「突然動画広告が再生される」など、記事やコンテンツが見られないなど強い不快感を訴える苦情が目立つ。その他、ターゲティング広告やリターゲティング広告に関するもの26件、オプトアウト・フィルタリングに関するもの19件などが寄せられた。
「見解」26件を発信、うちネット広告関連が14件で最多に
業務委員会で審議し「見解」を発信したのは26件で、内訳は警告21件、要望3件、提言2件(前年度はそれぞれ28件、2件、2件の計32件)であった。対象媒体は「インターネット」14件、「テレビ」7件、「ラジオ」「店頭」各2件、「新聞」「チラシ」「折込」「フリーペーパー」各1件(1件の見解で複数の媒体が関わる事例がある)で、1位「インターネット」は2011年度から続いている。
- [警告]広告および表示事項が関係法令に抵触することから、当該広告の即時排除もしくは当該表示の撤回が必要と認められるもの。
- [要望]広告および表示事項が消費者に誤認を与える恐れのあるもの、または関係法令に抵触する恐れがあり、当該表示の修正を求めることが必要と認められるもの。
- [提言]広告および表示事項の一部が消費者に誤認を与える恐れがあるため、検討を求めることが必要と認められるもの。
2018年度の警告一覧
- しわに塗ると数日で効果が出るとうたった化粧品のクリーム(チラシ)
- まつ毛が増えるかのように体験談でうたった化粧品のまつ毛美容液(テレビ、インターネット〈自社サイト〉)
- 「送料(相当)500円(税込)」「初回実質無料」と表示し、定期購入であることがわかりにくかった栄養機能食品(インターネット〈自社通販サイト〉)
- 適度な運動や食事制限が必要であるにもかかわらず、本品のみでウエストが細くなったかのように表示したEMS器具(テレビ)
- 表示できる効能・効果の範囲を越えて発毛をうたう医薬部外品の育毛剤(ラジオ)
- 「返金保証」をうたっているが返金条件が厳しく、かつその表示がわかりにくい場所にある定期購入の青汁(インターネット〈自社通販サイト〉)
- 本品のみで歯に付着したステインが取れるかのようにうたった化粧品の口中洗浄液(テレビ、店頭、インターネット〈自社サイト〉)
- メールマガジンに、美容液(化粧品)の効能・効果を標ぼうしたショップの広告を掲載したインターネットモール(メールマガジン)※1
- インターネットモール発行のメールマガジンからリンクされたショップの販売ページに、あらゆる肌トラブルに効果があるかのように表示されていた化粧品の美容液(インターネット〈モール内のショップページ〉)※1
- 返金送料が無料だと強調しているが、除外商品がある旨の打ち消し表示がない通販サイト(テレビ)
- 設置費が無料だと強調しているが、設置方法によっては費用が必要だった通販会社(テレビ)
- 「メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐ」という効能で承認を取っているにもかかわらず、肌に塗るとシミが消えるかのように標ぼうした医薬部外品のクリーム(テレビ)
- 店頭の音声広告で、「何もしないで痩せられる」とうたって健康食品の宣伝をしていたドラッグストア(店頭)※2
- ミトコンドリアの働きを改善することで不妊に効果があるかのように標ぼうした健康食品(インターネット〈自社通販サイト〉)
- 張ることによってほうれい線が取れるとうたった化粧品のパッチ(インターネット〈SNSインフィード、自社通販サイト、メールマガジン〉)※3
- プラセンタ注射と同等の効果があるかのようにうたった健康食品(インターネット〈SNSインフィード、ランディングページ、自社通販サイト〉)
- 「ハリウッドセレブたちが大幅な減量に成功」などとうたった雑貨のパッチ(インターネット〈ショッピングモール内のショップページ〉)※3
- 「代謝アップ&血行促進」「毎日履くだけで2週間マイナス10cm」などとうたったガードル(インターネット〈SNSインフィード、アフィリエイトサイト、自社通販サイト〉)
- 「くすみ、シミ、肌の黒ずみにサヨナラ」などとうたった石けん(インターネット〈自社通販サイト〉)
- 「スタッドレスタイヤ4本セットが安い」「各サイズ限定3セット」と大書していたが、在庫がないと言って高い商品を勧めたカー用品店(折込)
- 「妊活」「授かる体の新習慣」などとうたった青汁(インターネット〈動画、自社通販サイト〉)
※1 「8」はインターネットモール運営者、「9」はそこに出店しているショップに対するものであり、モール発行のメールマガジンに効能・効果を標ぼうしたバナー広告を表示していた。モール運営者は広告主以外にも適用される医薬品医療機器等法を適用して警告し、ショップには同法に加え景品表示法を適用して警告した。
※2 「13」はドラッグストアの健康食品売り場における音声広告で、ドラッグストアは広告作成者として医薬品医療機器等法、景品表示法、健康増進法を適用し、問題を指摘した。
※3 「15」「17」の対象商品はともにパッチだが「15」は届け出をした「化粧品」で「17」は届け出がなく「雑品」。
初出時に、ネット広告の苦情件数に誤りがあったため謹んで訂正いたします。オンライン広告についての苦情が5,414件(前年比114.0%)とあるのは、2,847件(前年比116.2%)の誤りでした。5,414件は、JAROのオンラインフォーム経由で寄せられた苦情の件数でした。また「オンライン広告」表記を「ネット広告」に統一しました。
(サマリー)
誤:総苦情件数8,386件、うちオンライン広告についての苦情が5,414件
正:総苦情件数8,386件、うちネット広告についての苦情が2,847件
(本文)
誤:オンライン広告の苦情は前年比114%
2018年度(2018年4月~2019年3月)の苦情は8,386件で、前年比111.1%だった。そのうち「オンライン」広告についての苦情が5,414件(同114.0%)と伸び、総受付件数を押し上げた。
正:ネット広告の苦情は前年比116%
2018年度(2018年4月~2019年3月)の苦情は8,386件で、前年比111.1%だった。そのうちネット広告についての苦情が2,847件(同116.2%)と伸び、総受付件数を押し上げた。
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