電通が11月に発表した第2四半期の連結決算では、売上高と売上総利益が前年比で5%前後のマイナス、営業利益と経常利益は25%前後のマイナス、四半期純利益は43.8%減という厳しい結果となった。電通は2008年の年初から、今年を「変革の年」と位置づけてさまざまな改革に取り組んできたが、景気後退の波はそれを覆うほど大きかったようだ。
電通は毎月、電通単体の売上高を発表しているが、これを2007年1月から2008年10月までまとめたのが以下のグラフ。電通全社、テレビ、マス4媒体合計、インタラクティブメディア、OOH(Out Of Home:屋外・交通広告)メディアを抜粋している。これを見ると決して明らかな右肩下がりとなっているわけではないのだが、電通の危機感は高まっている。
以下の表は、同じく電通の単体売上の発表から、各媒体ごとの前年比を抜き出したもの。ブルーが前年比100%以上、オレンジが120%以上を表している。これを見ると、前年割れはマス4媒体に多いことがわかる。2007年の雑誌、2008年に入ってからのラジオは、前年割れが続いている状態だ。一方、インタラクティブメディアやOOHメディアは2007年ほどではないが成長を続けている。
しかし、上の表ではインタラクティブメディアやOOHメディアが大きく成長しているように見えるのだが、電通全体で見るとこれらのメディアが占める割合は非常に小さい。以下のグラフは最新の10月度の単体売上の構成比を示すものだが、テレビの売上が46.2%なのに対して、インタラクティブメディアは1.4%、OOHメディアは2.7%にとどまっている。
電通が毎年発表している「日本の広告費」では、インターネット広告費は2004年から、1,814億円、2,808億円、3,630億円、6,003億円と成長を続けているのだが、最初の折れ線グラフでもわかるように、電通単体のインタラクティブ広告の売上にそうした変化は見られない。
また、2007年の日本の広告費全体にテレビが占める割合は約28%であることを考えると、電通の売上に占めるテレビの比重はやはり大きい。そのテレビ業界は、10月、11月に行われた民放各局の決算発表で、スポット広告の不振などにより厳しい決算が相次いだ。日本テレビ放送網とテレビ東京は赤字、TBSとテレビ朝日は減益となっている。
電通は年初に発表したとおり、社内体制の改革、国内外で提携や買収など、グループ全体で対策を実行している。しかし、景気の後退やマス4媒体の落ち込み、視聴者のテレビ視聴形態の変化、さらには2011年の地上デジタル放送への移行で、テレビ自体も大きく変化しようとしている。電通の変革は今年だけでは終わりそうにない。
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