顧客の今と未来を見通す、エンタープライズ開拓の「型」
──「売れない壁」を乗り越えたのは、何が転機となったのでしょうか。
売れないながらも、1年間アプローチを続けたことでかなりの数の商談データが蓄積されました。そこでふと冷静になり、「飛び道具はない」「解決策は自分たちの中にしかない」という当たり前のことに思い至ったんです。
そこで、これまでの受注と失注の要因を定量的に振り返ってみた結果、受注理由は価格に関するものが多い反面、失注は「なんとなく他社のほうが使いやすそう」というイメージによるものが多いことに気づきました。ぼんやりとアプローチのイメージが湧いたものの、具体的にどう提案に落とし込むべきかは、まだ見えていませんでした。
ちょうどその時に出会ったのが、とある上場企業です。検討背景や要望をうかがうなかで、この企業の課題解決やビジョン実現に貢献するのは、「Diggle」の機能ではなく、プロダクトビジョンだと確信しました。
「Diggle」は、経営管理の工数削減や分析支援だけを目指すのではなく、「組織の距離を縮め、企業の未来の質を上げる。」ことをビジョンに掲げています。前提とするデータや世界観が部署や個人によって異なることで、コミュニケーションや制度設計がずれてしまうという根本的な課題の解決を目指しているのです。
このビジョンが、上場企業が抱えていた課題と完全に一致したんです。お客様自身による課題の言語化にも助けられながら、「Diggle」が提供できる価値を再認識しました。もし、この企業と出会ったのがエンタープライズ開拓に挑み始めたころであれば、機能だけを提案してしまい、この気づきは得られなかったかもしれません。
──この出会いをきっかけに見出した、エンタープライズ開拓の「型」について教えてください。
私たちのエンタープライズ開拓の「型」は、提案の深さと幅を重視しています。「深さ」とは、目の前の担当者だけでなく、課長や部長、経営層までを含むすべてのステークホルダーの視点を取りこぼさないこと。「幅」とは、顧客の顕在課題だけでなく潜在課題、さらには「今」と「未来」という時間軸まで視野を広げて提案を組み立てることです。
顧客企業が抱える課題感や理想像は、現場と経営層の間でまったく異なるように見えるかもしれません。しかし、よく話をうかがってみると、実は共通の「軸」が通っているんです。大勢のステークホルダーがいてそれぞれの事情がある中、この軸をきちんととらえてアプローチするための視点が「深さ」と「幅」であり、これを仕組み化したのが私たちの「型」です。
たとえば提案資料のフォーマットには、目先の課題を解決する機能の紹介だけでなく、「数年後にどのような社内文化を実現すべきか」という顧客自身の未来のビジョンを描く専用のページを必ず設けています。これにより、部分最適な機能比較に終始せず、全社的なビジョンに対して、「Diggle」がいかに貢献するかを提案しています。

MRR6倍へ成長。失注も力に変える「集団学習型」チーム
──この「型」をチーム全体で共有し、アップデートし続けているそうですね。現在のチーム体制を教えてください。
現在、エンタープライズ開拓チームは私のほかにフィールドセールスが5名、プリセールスが2名、カスタマーサクセスとBDRを含む20名規模の組織に拡大しました。誰もが売れない時期を経験したためか、「経験値を一人のものにしない」という姿勢が浸透しています。
その具体的な取り組みのひとつが、毎日の夕会です。メンバー全員が相談したい案件をストックしておき、「失注・受注分析」「エンタープライズ企業特有の文化」「商談の進め方」など曜日ごとにテーマを決め、一つの案件についてチーム全員でディスカッションするのです。
失注の振り返りも本当に妥協がなく、年次や役割に関係なく意見を出し合い、とことん突き詰めて全員で改善点を見つけようとします。ときには自分の課題を指摘される痛みもあるかもしれませんが、組織や個人として成果を出すために必要な取り組みとして、ポジティブにとらえています。そうして全員で営業力をアップデートし続ける「集団学習型」のチームと言えるでしょう。
──エンタープライズ開拓の現在の成果を教えてください。
収益面では、2024年第3四半期から2026年第3四半期の2年間でMRR(月次経常収益)が6倍、単価が2倍に向上しました。さらに超大手企業での導入や既存顧客から新規企業のご紹介など、信頼関係による受注事例を創出できています。
また社内においては、カスタマーサクセスからエンタープライズセールスにキャリアチェンジしたメンバーが、半期で過去最高MRRを更新しました。営業未経験から短期間でトップセールスへと成長できたのは、本人の努力もさることながら、基本となる「型」と、その実践を支える組織文化があったことも大きかったです。
