2万4,000人への調査を経て本書が目指すもの
今回の『法人営業 勝ちパターン大全』においては、これまで私が実施してきた2万1,308人の調査に加え、さらに2,676人の購買経験者に対する調査を新しく実施しました。そこで、お客様においてどのような人たちが関わり、どんなプロセスで検討を進め、どんな考え方で意思決定をしているのかを徹底的に解き明かしました。
さらにその知見をもとに、法人営業で成果を上げるための勝ちパターンを、営業側の提案プロセスではなく、お客様側の購買プロセスに沿った形で組み直し、体系立てて整理しました。
法人営業における難しさを「迷路」と定義し、膨大な調査結果と体系的なロジックによって「こうすればいいのか」という具体的なアクションにつなげる本です。
本書が目指すのは、次のようなものです。
お客様の裏側にいる「見えない関係者」の存在とその力学が見えるようになること。案件ごとに異なる購買プロセスを構造的に捉え、「次に何をすべきか」を自分で判断できるようになること。そして何より、個人の勘や経験に頼らず、チームで共有できる勝ちパターンとして、組織の営業力を底上げする土台を手にすること。
お客様の裏側が見えなければ、どんなに優れた商品や素晴らしい提案でも実ることはありません。しかし、お客様の裏側を知り尽くした上での勝ちパターンは盤石です。
「4つの迷路」をいかに脱出するか?
法人営業には大きく分けて4つの迷路が存在します。案件が壁に遮られて思うように進まない場合、営業担当者はこんな迷路に迷い込んでいるというわけです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
(1)「キーパーソンに会えない」迷路
担当者の反応は良好で、あとはキーパーソンとのアポイントを調整するだけ。しかし、そのアポイントがなかなか決まらない。結局、先方で検討されているのかどうかもよくわからないまま、「待ち」の状態が続いてしまう。これが1つ目の迷路です。
例えば、「上の者にも話しておきますね」と言ってくれた担当者に、翌週フォローの連絡を入れると、「まだ話せていなくて……」という返答が来る。さらに翌週も同じ答え。こちらとしては「待つしかない」と感じてしまいますが、なぜ担当者はキーパーソンに話を持っていけないのか、その理由が見えていないことが問題なのです。
もしかすると、担当者自身がキーパーソンに持ちかけるための「材料」を十分に持っていない可能性があります。あるいは、キーパーソンがいまは別の案件で頭がいっぱいで、新しい論点について考える余裕がないのかもしれません。
(2)「連絡がつながらない」迷路
商談ではスムーズに話せていて前向きな印象だったのに、メールを送っても返事が来なくなる。これが2つ目の迷路です。このようなとき、どのようなタイミングでどんな連絡をすればいいのかがわからなくなってしまいます。
ここで多くの営業担当者が陥るのが、「何度もリマインドのメールを送る」か「返事が来るまで待つ」の2択にとらわれてしまうことです。しかし、お客様の側で起きていることは、もっと複雑です。
例えば、社内で予想外の優先案件が浮上して、あなたの件が後回しになっている場合もあります。あるいは、お客様の担当者が「上司に相談したけれど、あまりよい反応が得られなかった」ため、返事しづらくなっているケースもあるのです。
追加資料を送ったあと、お客様から返信がなかった。その間に、お客様の社内では別の会社の資料をもとに議論が進み、方向性が固まっていた。このような「選ばれなかった営業」は、まさにこの迷路に迷い込んでいた可能性があります。営業担当者からは、その動きがまったく見えていなかったのです。

