あらゆる会話を一箇所に集める「貯める設計」
この課題に対してZoomが提供するのが、会話の発生地点をすべてZoom側でカバーする仕組みだ。クラウド電話サービス「Zoom Phone」を使えば、すべての通話が文字起こしされ、録音を含めて無制限・無期限に保管・分析される。Zoomミーティングはもちろん、Microsoft TeamsやGoogleの会議も分析対象としてデータベースに自動集約されるという。
さらに対面商談についても、スマートフォンのZoomアプリを起動するだけで、話者分離を含めオンライン会議と同水準の構造化された議事録が残せる機能がある。
電話・対面・オンラインの間を埋めるメールのやり取りもZoom側でデータ化できるため、「顧客とのすべてのコミュニケーションが一言一句、企業の資産として蓄積されていく」(永井氏)。これが、AI活用の土台となる「貯める設計」だ。
会話データを組織の共通言語にする「使う設計」
しかし、データを貯めるだけでは意味がない。永井氏が続けて語ったのが、蓄積した会話データを部門ごとにどう使うかという「使う設計」である。
営業においては、属人化しがちな「勝ちパターン」を会話データから分析し、型として組織に浸透させることが求められる。マーケティングであれば、営業が日々顧客から拾っている競合トレンドや反響、興味関心といった“生の声”を、次の施策やコンテンツに反映できているかが問われる。カスタマーサクセスの場合は、契約後の顧客との関係の中で解約の予兆をつかみ、経緯を踏まえたスムーズなコミュニケーションができているかが焦点になる。
「マーケティング、カスタマーサクセス、営業という全ての組織が同じ顧客との対話データを見て、それを共通言語にすることで収益を上げていく。これが本質的なAIによる売上向上の取り組み、レベニューオペレーション(RevOps)です」(永井氏)
この「貯める」と「使う」を同時に実現するソリューションとして紹介されたのが「Zoom Revenue Accelerator(ZRA)」だ。顧客との会話を自動で録音・分析し、Salesforceなどの主要CRMへの書き込みまで自動化できるという。画面上には会話ごとの要約(カスタマイズ可能)と文字起こしが表示され、その内容に対して生成AIで自由に質問できる。
商談の中でいわゆる「BANT」情報が聞けているかといった“勝ちパターン”のチェックも自動採点され、「なぜこのスコアなのか」を裏付ける文字起こし箇所まで根拠として提示される仕組みだ。永井氏自身もマネージャーとして、スコアの低い商談から優先的に確認し、フィードバックのサイクルを回していると明かした。
営業向けの画面では、CRMと連携し、1つの商談に紐づく147回もの会話(メール・電話・オンライン商談・対面商談)を横断的に分析できる例が示された。「この経緯の中で何を聞けたか、取りこぼしているリスクはないか」を自然言語で質問でき、得られた情報をもとにCRMが自動更新されるという。
マーケティング向けには、競合の名前がどれだけ会話の中で言及されているかをグラフで可視化する機能も紹介された。トレンドをいち早く察知し、対抗施策の先手を打つことができるという。
カスタマーサクセス向けには、解約に関連する単語が会話に出た際に即座にマネジメントへ通知する仕組みも用意されている。「なぜなら、リアルは顧客との会話の中にあるからです」と永井氏は繰り返した。

