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エンタープライズセールス事例

MRR6倍を実現したエンプラ開拓の「型」を解説。 商談の設計図「ビジョンページ」と集団学習の仕組み

ディグル株式会社 エンタープライズ事業部 部長 松本 翔吾[著]

経営層と方向性をそろえる。提案は「ビジョン」から始める

 目の前の課題ではなく、お客様が将来実現したい状態から提案を組み立てる「ビジョンセリング」という考え方自体は、以前から知っていました。

 ただ、正直なところ、それを「Diggle」のセールスに使えるとは思っていませんでした。経営管理は、集計作業の負担や分析の難しさなど目の前に解決すべき課題が多い領域で、それらを解決するだけでも十分に大きな価値があります。その先の未来まで話しても、抽象的に聞こえるだけではないかと考えていました。

 その認識が変わったのが、先ほど触れた上場企業との商談です。

 その企業が目指していたのは、経営管理業務の効率化だけではありませんでした。部署や人によって、見ている数字やその前提が異なることで、コミュニケーションや制度設計にずれが生じている。そうした根本的な課題まで解消したいという考えだったのです。

 これは、「Diggle」が掲げる「組織の距離を縮め、企業の未来の質を上げる。」というプロダクトビジョンと、まさに重なるものでした。そこで、目の前の課題に合う機能から話すのではなく、その企業が目指す状態と「Diggle」のビジョンを軸に、提案を組み立てました。

 結果的に、その案件はなんとわずか3週間で選定に至りました。私たちにとって、エンタープライズ開拓で初めて手応えを得た案件でした。

 この経験から、機能ではなくビジョンを起点にすることが、エンタープライズ開拓の突破口になると考えるようになりました。ビジョンを軸にすることで、目の前の業務課題だけでなく、「その部門が将来どうあるべきか」「その変化が会社の業績や組織にどうつながるか」まで、提案の視野も時間軸も自然と広げられるようになります。そうすることで、現場担当者だけでなく、部長や経営層とも同じ方向を向いて話せるようになるのです。

 では、ビジョンを起点に、実際の商談をどう組み立てるのか。その考え方を凝縮したのが、最終提案で提示している1枚の「ビジョンページ」です。

商談の設計図「ビジョンページ」を構成する5つの項目

 「ビジョンページ」は、大きく次の5つの項目で構成されています。

  1. 経営管理の理想状態
  2. プロダクトビジョン
  3. プロダクトのコンセプト
  4. お客様の現状と課題
  5. システム導入で実現すべきこと
ビジョンページのイメージ(クリックすると拡大します)

 一番のポイントは、ビジョンに関する要素を先頭に置いていることです。

 「現状と課題」から話を始めると、どうしても「この課題を解決する機能はあるか」「なければ追加で開発できるか」という議論に向かいます。特にエンタープライズでは、今の個別運用をどこまでそのままシステム上で再現できるかが論点になりがちです。そうなると、個別開発や現行運用の踏襲が正義となり、汎用性を強みとするSaaSの価値は伝わりにくくなります。

 ただ、そもそもお客様が本当に実現したいのは、システムを導入することではなく、経営管理の理想の状態を実現することです。だから私たちは、機能の話に入る前に、より高次の「どのような経営管理を目指すのか」について認識をそろえるようにしています。

 もちろん、現在の業務や課題も丁寧にヒアリングしますが、それらをそのまま機能要件に置き換えるわけではありません。最初に合意した理想状態へ立ち返り、そこへ向かうために本当に必要な要件は何かを、お客様と一緒に組み直していきます。

 このビジョンページは、単なる提案資料ではなく、商談全体の設計図でもあります。初回から最終提案までの商談で、各項目について1つずつ話し合い、認識をすり合わせながら合意を重ねていき、最後にそれまでお客様と一緒に組み立ててきた内容を、1ページに集約するのです。

 こうした進め方を重ねる中で、個別開発を強みとする競合と比較されたときにも、「Diggle」を選んでもらえる案件が増えていきました。

 とはいえ、この「型」で示せるのは、「何について合意するか」までです。お客様に合わせて内容を肉付けし、納得感のあるストーリーに仕立てるには、やはり経験が欠かせません。にもかかわらず、リードタイムが長く、案件数も限られるエンタープライズセールスでは、1人で経験を積むにも限界があります。

 そこで私たちは、夕会を活用し、1人ひとりの商談経験をチーム全体の学びに変える仕組みを作りました。

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1件の商談を「チーム全員の経験」に変える

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この記事の著者

ディグル株式会社 エンタープライズ事業部 部長 松本 翔吾(マツモト ショウゴ)

 2017年、大手銀行に入行。都内の支店でスタートアップから中堅企業まで幅広い業種の法人営業を担当した後、本店営業部で売上高1兆円以上の通信系大企業に対する事業提案や財務提案に従事。2022年1月、ディグル株式会社に参画。年間200社を超える中堅・大企業へ予実管理を軸とした経営基盤構築を提案。エンタープライズ領域の...

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