自社や製品への“選好”を形成するための活動とは?
Forrester社が行った2025年の調査では、BtoBの買い手のうち68%が「正式な購買プロセスを始める時点で、既に第一候補の企業を決めている」と回答しています。その第一候補が最終的に選ばれる割合は80%でした。これは、問い合わせが来てから競争を始めても、既に手遅れの案件が多いことを示しています。

最近、生成AIが示す回答だけを顧客が見て、Webサイトにはアクセスしない“ゼロクリック”が問題視されています。自社サイトのアクセス数の減少を実感するマーケターも多いのではないでしょうか。その状況下でForrester社によって提示されたのが「Preference Marketing」です。Preferenceは選好、つまり特定の企業や製品を選びたいと思う状態を意味します。Preference Marketingは、顧客が本格的な購買活動を始める前から自社や製品への選好を形成するためのマーケティング活動と言えます。
顧客による情報収集や比較検討が早い段階から始まっているのであれば、資料請求などのフォーム入力を「購買活動の始まり」と捉えられなくなります。フォーム入力は、それ以前から進んでいた検討が、売り手側から初めて見えるようになったタイミングとも考えられるでしょう。そのため、フォームに入力した1人だけを追うのではなく、その企業でどのような検討が進んでいるのか、ほかに誰が関わっているのかまで捉える必要があります。
購買は人単位ではなくBuying Groupで進む
企業の購買、とりわけ金額が大きく導入後の影響が大きい商材の購買においては、意思決定が1人だけで行われることはまれです。利用部門の担当者や責任者に加え、経営層、購買部門、法務部門、情報システム部門など、立場の異なる複数の関係者が意思決定に関わります。このように、1つの購買案件に関与する複数の人々を「Buying Group」と呼びます。Buying Groupを捉える上では、決裁者だけを把握すれば良いわけではありません。予算を承認する人、製品を評価する人、実際に利用する人では、役割や関心が異なるからです。
また、検討が具体化するにつれて新たな関係者が加わることもあります。誰がどのような立場で関わり、意思決定に誰の合意が必要なのかを把握した上で、それぞれに必要な情報を届ける必要があります。つまり、Buying Groupはあらかじめ決まった役職のリストではありません。検討の進み具合に応じて、誰が購買に関わっているのかを継続的に捉えていくことが求められます。
購買の意思決定に影響するのは、社内の関係者だけではない点にも留意が必要です。レビューサイト、業界の専門家、取引先、生成AIなども判断に影響します。売り手から見える購買活動は一部に限られますが、把握できている接点をもとに「企業内でどのような検討が進んでいるのか」「次に誰と接点を持つべきなのか」を考えることはできます。
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熊倉 宏紀(クマクラ ヒロキ)
マーケットワン・ジャパン合同会社 デジタル&コンサルティング部 部長
リコーに入社し、大手法人営業を経験後、グローバルの製品マーケティングに従事。マーケットワン・ジャパン入社後は大手日系製造業や外資系ハイテク企業向けに、マーケティング戦略設計やデータ活用に向けたデジタルマーケティングの推進のコンサルティ...
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