WPPとカンターは2019年の世界のブランド価値ランキングTop100を公開した。ブランド価値の算出は、カンターの消費者調査に基づいて測定されたブランド資産と、企業の財務実績・業績分析の組み合わせによる。
12年にわたりトップを独占していたテクノロジーブランドに代わり、小売のAmazonがトップに
今年のランキングでは、テクノロジーブランド大手のGoogle、Appleを押さえAmazonが世界で最も価値のあるブランドとなった。買収で新たな収益源を生み出し、優れたカスタマーサービスを提供しながら、製品やサービスの多様なエコシステムを展開していることが要因として挙げられる。
調査開始の2006年に、Microsoftがブランド価値ランキングでトップの座を獲得して以来、「BrandZ Top100」にランクインするブランドの大半はテクノロジーブランドが占めてきた。今回、ブランド価値で前年比52%増の3,155億ドルという成長を見せたAmazonは、3%増という穏当な成長にとどまったApple(2位、3,095億ドル)、2%増にとどまったGoogle(3位、3,090億ドル)を抜き、12年にわたるテクノロジーブランドの支配に終止符を打ったことになる。
エコシステムモデルが急成長のカギとなり、消費者を獲得
図表1のTop10ブランドを見ると、Facebookが6位にとどまった一方で、Alibaba(アリババ)が初めてTencent(テンセント)を抜いて最も価値のある中国ブランドとなり、2ランクアップの7位となった。Tencentは3ランクダウンの8位に後退している。
その原因は、市場がより不安定になり各ブランドが消費者の期待感やニーズの進化に絶えず応えていかなければならなくなったことにあると考えられるという。そのような中で消費者を獲得し、急成長しているブランドを見てみると、エコシステムがブランドの成功をもたらしているとカンターは分析している。
図表2を見ると、Instagramは世界のユーザー数を10億人余りにまで増やし、47ランクアップの44位、ブランド価値が前年比95%増という大幅な成長率で今年最大の伸びを記録した。2番目に大きな成長幅を見せたのは、ヨガをはじめとしたアスリート向け製品を提供するアパレル企業Lululemon(ルルレモン)で、前年比77%増の692億ドルにまで成長している。それ以外にもNetflix、Amazon、Uberが著しい成長を見せている。
急成長ブランドはカテゴリーに縛られずに幅広い接点でサービスを提供してエコシステムを形成
今年のTop100にランクインしたブランドの価値総額の大半は、ランクインしたコンシューマーテクノロジーブランドがもたらしたもので、その総額は1兆ドルを超える規模となっている。
新興企業となる中国のスマートフォンメーカーXiaomi(シャオミ)は、スマートデバイスの接続にモノのインターネット(Internet of Things、以下IoT)を活用しており、ロシア、インド、マレーシアなどで需要が急増している。同じ中国ブランドのMeituan(メイチュアン)は、食品配達から宿泊予約、自動車送迎、バイクレンタルに至るまで、あらゆるサービスを提供しており、既存のカテゴリーを打ち破る消費者向けプラットフォームとして認識されている。また、Uberはエコシステムモデルを活用して食品やその他の配達サービスに進出しつつある。世界最大の家電/IoTプラットフォームであるHaier(ハイアール)は、IoTの分野で顧客やパートナーとのオープンなエコシステムの構築に取り組んでいる。
カンターのBrandZ Global Head であるDoreen Wang氏は、エコシステムを形成する急成長ブランドを次のように分析している。
「昨年、Amazonのブランド価値が約1,080億ドルという驚異的な成長を見せたことは、ブランド各社が個々のカテゴリーや領域に縛られなくなってきていることを物語っています。
テクノロジーが持つ柔軟性により、Amazon、Google、Alibabaなどのブランドでは、消費者との接点が複数にわたる幅広いサービスの提供が可能になり、そのサービス間の境界はあいまいになってきています。こうしたブランド各社は、自らのコンシューマーエクスペリエンスや専門技術を利用して、ビジネスサービスの境界を越え、新たなブランド成長の機会を生み出そうとしています。既成概念を打ち破るエコシステムモデルは、各地で成功を収めつつあります。
アジア地域の、特に消費者のテクノロジーへの対応力が高い国では、企業が自社のブランドを人々の日常生活のあらゆる側面に組み入れようとしています」
世界で最も価値のある日本ブランドはTOYOTA、急成長ブランドはShiseido(資生堂)
日本ブランドでは、自動車のTOYOTAと通信プロバイダーのNTT(日本電信電話)がTop100に入ったが、いずれも前年から順位を落としている。
また、パーソナルケアカテゴリーで10位につけたShiseidoのブランド価値は、前年よりも56%上昇し、カテゴリー全体の伸びをはるかに上回った。Shiseidoは過去10年間で想起性と差別性の評価を高めてきた。図表4にあるように、ポテンシャルスコアが高く今後も成長ペースが続くとカンターは見ている。
アジアでは中国の15ブランド、インドの3ブランド、日本の2ブランドがランクイン
アジアブランドの存在感は年々増しており、Top100にランクインするアジアブランドは昨年の21ブランドから24ブランドに増えている。日本の2ブランド以外では、中国:15ブランド、インド:3ブランド、韓国:1ブランド、香港:1ブランド、オーストラリア:1ブランド、インドネシア:1ブランドがランクインした。
【調査概要】
調査主体:WPP、カンター
調査手法:300万人以上の消費者アンケートと、Bloombergやカンターの持つ各企業の財務実績や業績を組み合わせてブランド評価を算出
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