SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第100号(2024年4月号)
特集「24社に聞く、経営構想におけるマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング

理論通りにキャズムは存在していた。日本でキャズムを越えていくUber Eatsのブランディング戦略

 書籍『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』の著者・木村元による対談連載「ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング」。この連載では、著者が本書を執筆する上で影響を受けてきた方やブランドマーケティングの進展を考える上で話を聞いてみたい方と、対談を重ねていきます。第1回は、Uber Eats Japan代表の中川晋太郎さんを訪問。ユニリーバ時代の著者の上司でもある中川さんには、前編で「Uber Eatsのブランドマーケティングについて」、後編で「マーケターのスキルアップについて」お話を伺っています。

Uber Eatsのマーケティングで感じた「新しい習慣を作ることの難しさ」

木村:中川さんは、2022年からUber Eats Japanのゼネラルマネージャーを務められていますが、元々はP&Gとユニリーバで消費財のマーケティングに従事されてきた経験をお持ちです。消費財からフードデリバリーのテックという全然違うカテゴリーに移った時、マーケティングの考え方の違いに面食らうようなこともありましたか?

中川:Uber Eatsにジョインしてまず最初に驚いたのは、ビジネスをドライブしていく上でのマーケティングのロールの違いでした。Uber Eatsのようないわゆるテックカンパニーでは、プロダクトを作るエンジニアの人たちが中心にいて、彼ら彼女らがどれだけ素晴らしいアプリを作るかで勝負が決まってくるという側面が非常に強く、これが想像以上でした。

Uber Eats Japan合同会社 ゼネラルマネージャー 中川晋太郎氏P&G でブランドマネジメント担当としてキャリアをスタートさせた後、事業再生支援会社を経て、 2009 年にユニリーバ・ジャパンに入社。ヘアケア商品のマーケティング責任者を経て、 2016 年からは同社ホーム&パーソナルケア部門のディレクターとしてマーケティングを統括。2021年1月の Uber 入社後、モビリティとデリバリーの両事業におけるマーケティング活動を統括し、2022年9月に Uber Eats Japan の暫定代表に就任。2023年2月より現職。
Uber Eats Japan合同会社 ゼネラルマネージャー 中川晋太郎氏
P&G でブランドマネジメント担当としてキャリアをスタートさせた後、事業再生支援会社を経て、 2009 年にユニリーバ・ジャパンに入社。ヘアケア商品のマーケティング責任者を経て、 2016 年からは同社ホーム&パーソナルケア部門のディレクターとしてマーケティングを統括。2021年1月の Uber 入社後、モビリティとデリバリーの両事業におけるマーケティング活動を統括し、2022年9月に Uber Eats Japan の暫定代表に就任。2023年2月より現職。

 ブランドマネジメント制度を採っているP&Gやユニリーバでは、製品設計から売上までマーケティング部門が一貫して関わる形になっていますよね。対して、Uber Eatsでは、エンジニアが開発したアプリの価値や体験を伝えていくという立ち位置なので、誤解なきように伝えたいのですが、マーケターが少しサポーター寄りになっていると言えるかもしれません。

 ただ、これはあくまで会社のオペレーションの回し方であって、個々人のマインドセット次第で、マーケティングの関わり方は異なってくると思います。

 もう一つ、マーケティング戦略の観点で「新しい習慣を作ることの難しさ」は、今もですが、ジョインした直後は特に感じていました。

木村:なるほど、そうなんですね。執筆した『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』で、Uber Eatsやメルカリのように新しいカテゴリー(市場)を作っていく時は、ブランドマーケティングの正攻法では勝負できないだろうと書いたのですが、実際のお話しを詳しくお聞きしたいです。

中川:日用品の場合、基本的には既にカテゴリーが成立しているので、その中でどうシェアを獲っていくか、単価を上げていくかという勝負になってくると思います。たとえば、今シャンプーしか使っていない人にトリートメントも使ってもらうようにする、スキンケアにもう1ステップ増やしてもらうといったアプローチもありますが、いずれも「髪を洗う」という既存の習慣の中でのワンステップですよね。対して、Uber Eatsの場合は、「オンラインデリバリーを頼んでみる」という今現在の日常生活で行っていない行動変容を起こすことになるので、変化をもたらす難易度や、マーケティングの重点の置き方が全然違ってきます

木村:Uber Eatsは日本よりも先に海外でスタンダートになっていった印象があります。オンラインデリバリーの市場を日本でも拡大していく時に、海外ではこういう風に仕掛けたなど、前例を踏襲していたりするんですか?

株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。
株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏
ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。

中川:Uber Taxiについてはアメリカやヨーロッパのほうが歴史が長いのですが、Uber Eatsに関してはカナダ以外のおおよその国で同じタイミングでサービスをスタートさせており、実は国ごとでそんなに歴史に差があるわけではありません。そのため、グローバルでの前例を日本で応用するようなことはまだないのですが、たしかに日本市場はペネトレーション*の伸びしろがまだまだあります。日本ではオンラインデリバリーサービスをまだ利用したことがない人が多数なのに対して、アメリカやオーストラリア、台湾などのマーケットではもうほぼ浸透しきっていると言えるような状態です。

ペネトレーション:penetrationは「浸透」「普及」を意味する言葉。マーケティングにおいては、新しいプロダクトやサービスを市場に浸透させることを意味する。

会員登録無料すると、続きをお読みいただけます

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

次のページ
理論通り、キャズムは存在していた

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • Twitter
  • Pocket
  • note
関連リンク
ブランディング先進企業に学ぶ、マーケティング戦略としてのブランディング連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2023/11/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43952

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング