中国のシニア層は1億4300万人にのぼり、ロシアの全人口を上回る規模となっている。Ogilvy & Matherは、これまでマーケティング的に注目されることのなかった、この世代のライフスタイルと消費動向を探る調査を行った。調査は2008年3月に北京と上海、成都と佛山という規模の異なる都市で開始され、60~75才の男女1100人から回答を得た。
中国のシニア層1人あたりの消費力は2005年の1620ドルから、2015年に4112ドルまで増加すると見込まれることから、彼らのニーズをつかむことが必要不可欠となる。そのライフスタイルに注目すると、調査対象者の85%は、電子メールを使って友人と連絡をとりあっており、毎月の出費のうち、通信費は食費、生活費、光熱費に続いて4番目で、医療費より多くなっている。
シニア層が買い物に利用しているのは、スーパーと大型スーパーで、上海では84%が、北京では96%に達している一方、規模の小さい成都と佛山では、それぞれ50%と47%にとどまっている。また、健康と病気の予防のために、76%の人が定期的に運動をし、39%はサプリメントなどをとっている。
西洋文化が中国社会に良い影響を与えると考える人は57%で、中国の国際化や、国民の生活水準の向上につながるとしている。しかし、外国のものをなんでも受けいれてしまう若者たちのことを心配する人も多い。また26%がリタイアメントホーム(高齢者専用住宅)で生活することに前向きであり、ほかの高齢者や家族との交流を求めているという。
今回の調査からOgilvy & Matherは、ヘルスケアだけでなく、旅行、レジャー、投資情報サービス、テクノロジー、食品などでも、中国シニア層をターゲットにしたビジネスの可能性があると分析している。しかし、中国に進出したマクドナルドは、世界的な不況の影響で手軽で安い中国本来の軽食に客が回帰しつつあることから、低価格のセットメニューの投入や、ネットを通じたプロモーションに力を入れており、若年層においてもそのマーケティングは容易ではない。しかし、ロシアの人口よりも多い中国シニア層が、世界の企業が注目するに値する消費パワーを秘めていることは間違いなさそうだ。
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