単一の指標に惑わされない。マーケティングファネルで捉える複数指標の運用術
――ユーザーがバナーをクリックした後の行動データは、どのようにUIやUXの改善に落とし込んでいるのでしょうか。
ユーザーがZOZOTOWNに訪れてから購入に至るまでの一連の行動データを細かく見ており、その接点ごとにUI/UXへ落とし込んでいます。特に私たちが手がける販促企画では、特設ページ(LP)に訪れたユーザーは、訪れていないユーザーに比べてコンバージョン率(購入確率)が2倍以上高くなります。そのため、まずは入口であるトップバナーを工夫してLPへの流入を最大化させます。
さらに、LP内でのクリック率などを分析し、反応が良いコンテンツがあれば、次の企画では上部に配置したり、類似のコンテンツを複数の切り口で展開したりと、ユーザーの関心に応じた構成に改善しています。
――日々の改善において、特に最優先で注視している「指標」は何ですか。
実は「これだけを見ている」という単一の指標はありません。バナーのCTRはもちろん、LPのCV率、閲覧点数まで、複数の指標を総合的に見ています。
販促企画の成果というのは、流入、検討、購入など各フェーズによって要因が異なります。単一の指標だけでは全体を網羅して見ることができないため、課題の特定が難しくなってしまうのです。複数の指標を組み合わせることで、初めてどこがボトルネックになっているのかが見えてきます。
――膨大な情報の中で、ユーザーとブランドの「新たな出会い」を生むために意識している動線設計はありますか。
ZOZOTOWNは現在、1,700以上のショップ、1万1,000以上のブランド、常時138万点以上の商品を扱うプラットフォームです(2026年3月末時点)。この中で出会いを生むために、「最適化」と「発見」のバランスを重視しています。ユーザーの行動データを基に「買いたい傾向」を捉え、その方と相性の良いアイテムを見せつつ、新しいブランドとの出会いを促すコンテンツも設けることで、出会いが生まれる動線を設定しています。
「ソウゾウのナナメウエ」を形に。デザイナーとペアで仕掛ける遊び心と数値の両立
――七夕の「77円セール」や、ブラックフライデーでの少数決でポイントを山分けする「100万円山分けキャンペーン」など、非常にユニークで遊び心のある企画が印象的です。こうしたアイデアは、どのようなプロセスで生まれるのでしょうか。
私たちの部では、ZOZOらしい視点や遊び心を入れた企画を通じて、ユーザー様に魅力的な買い物体験を提供することを意識しています。
たとえば「77円セール」の場合、七夕のタイミングでは毎年キャンペーンを検討していますが、7月7日、77という文脈から「77円セールをやったらおもしろいんじゃないか」というアイデアが生まれ、形にしていきました。
通常ではあり得ない思い切った価格設定にしたことで、企画としてのインパクトと話題性を作ることができ、結果として2025年度の上半期において、サイト訪問者数が2番目に多い日となりました。

――もう一つの事例である「100万円山分けキャンペーン」について詳細を教えてください。
「ブラックフライデー」のティザーページで実施した企画です。「こんな勝負服は嫌だ」という大喜利のようなお題に対して、100個の選択肢からユーザーに1つを選んでもらい、「最も選んだ人が少なかった回答」に投票したユーザー全員で100万円分のZOZOポイントを山分けする、という内容です。
よくある多数決ではなく、逆転の発想で「少数決」にし、かつ「山分け」にすることで、ユーザーの好奇心や参加意欲を強く喚起できると考えました。狙いどおり、ユーザー自身が思わず拡散したくなる仕掛けとなり、SNSでも膨大な数の投稿が見られるなど自然拡散が促進されました。ティザー段階から、非常に高いエンゲージメントを獲得して訪問のきっかけを作ることができた事例です。
――こうしたエッジの効いた「遊び心」のある企画と、売上やCVRといったシビアな「数値目標」は、社内でどのようにバランスをとって着地させているのですか。
遊び心のある企画も、単なる話題作り(認知拡大)で終わらせるのではなく、きちんとユーザーがサイトに来訪し、購買につながるきっかけになるかという動線まで、企画段階から綿密に計算して設計しています。
また、ZOZOでは「ソウゾウのナナメウエ」「日々進歩」「愛」の3つを「ZOZOらしさ」として掲げています。販促の企画を考える際にも、そうした全社的なカルチャーが自然と落とし込まれています。
そして、このおもしろい企画を生み出すプロセスにおいて、最大の強みとなっているのが、企画をデザインに落とし込む「デザイナーとペア」で動いているという点です。企画側は目的に最短距離で届く堅実なアイデアを出しがちですが、違う視点を持つデザイナーと協業することで、自分たちでは思いつかないようなユーモアのあるアイデアを形にできています。
