いつまでに何が起こるのか?12〜24ヵ月のロードマップを解説
企業はこれからどのような時間軸でエージェンティックコマースへの対応を進めるべきなのか。中尾氏は、今後想定される変化を3つのフェーズに分けてロードマップを示した。
フェーズ1
まず着手すべきは、汎用エージェントへの情報提供。いわゆるAEOやGEOに取り組んで、自社ECに掲載している商品情報を、AIが理解・推薦しやすい形に整える作業を進めることだ。
並行して重要になるのが、バックエンド業務のAI化に向けたPoC(概念実証)だ。商品登録や商品詳細データ生成、多言語カスタマーサポートへのAI実装など、「ゼロタッチオペレーション」の検証を積み重ねる時期となる。
フェーズ2
1〜2年先の未来の話として「重要なのは決済統合」と中尾氏は語る。どんなにAEOやGEOに注力しても、その先で在庫が確認できない、配送条件が合わない、決済が完了できないといった不備があれば、購買は止まってしまう。
在庫・配送・決済を横断して不備なく完結させる、全社的な仕組みの構築がポイントとなる。
フェーズ3
最後に、2年後に見据えるのは「完全自律型購買」の世界だ。日本ではまだ盛んではないものの、海外では「いつも買う商品なら自動でいいのでは」と、既に前向きな取り組みが見られている。また、特にBtoBの世界ではAIエージェント同士の購買(A2A=Agent-to-Agent)も盛んになると予測される。
同時に、ネイティブアプリからコールセンター、実店舗まで顧客接点全体にAIが組み込まれ、横串で連携する「店舗・デジタル統合型パーソナライゼーション」も現実のものとなるだろう。
では、このロードマップにおいて特に鍵となる「汎用エージェント対応」と「オウンドエージェント構築」について、それぞれ具体的に解説していこう。
スペック情報では不足?汎用エージェント対応には、「文脈で選ばれる」データを
汎用エージェント対応を進める上でのファーストステップは、「AIに正しい情報を的確に読み込ませること」。ただし、ここでいう「情報」は、従来のECサイトにあるような「商品スペック」だけでは不十分だと中尾氏は指摘する。

「生活者はAIエージェントに『これが欲しい』と直接的なオーダーをするわけではありません。たとえば、『キャンプに行くとき持っていきやすい飲み物や食べ物って何?』といった、漠然とした質問を投げかけるでしょう。その際、単なるスペックの情報だけでリコメンドされることはほとんどありません。必要とされるのは『500mlの飲料』というスペックだけでなく、『キャンプやアウトドアに適している』『暑い日に屋外で飲むのにぴったり』といった『文脈』でしょう」(中尾氏)
つまり、AIに選ばれるためのデータとは、商品スペックに加えて、どのようなシーンに向いているのか、どのような生活者に適しているのかを文脈で示した「エンリッチメント・データ」である。
その先のステップに、「在庫があるのか」「配送できるのか」「決済できるのか」といった購買プロセス全体の整備がある。アクセンチュアのグローバルレポートでは、「購買プロセスに何か問題が生じた場合、AIエージェントが仲介する取引の最大86%が、購入放棄または競合への切り替えのリスクにさらされる」と示されているほどだ。AIエージェントも同様に、不備を検知すればその先には進めない。
「見つけてもらう」ための文脈データと「安心して購入まで進められる」オペレーション、両方の整備が汎用エージェント対応の具体例だ。
