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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2026 Autumn(2026.09.08-09)

小売のAI活用 ~業務効率化からエージェンティックコマースまで~

約1,300店舗に「店長AI」導入で現場力解放 アンドエスティHDに聞くAIと店舗業務改革

650店舗へのスピード展開と、現場のリアルな反響

――店長AIエージェントの導入スケジュールと、現在の進捗状況について教えてください。

 2025年の夏季に、まずはパイロット版として数店舗でトライアルを実施しました。そこで現場からのフィードバックを得て見直しを行い、2026年6月からは当社の主要ブランドである「GLOBAL WORK(グローバルワーク)」など約650店舗へ一気にトライアル導入を拡大しました。

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 当社はマルチブランドで展開しており、40以上のブランドがあります。トライアルの店舗選定にあたっては、アパレルメインのブランド、生活雑貨も含めたブランド、そして店舗の規模から4つのカテゴリーに分けて選定を行いました。

 この約2ヵ月間のトライアルでいただいたフィードバックを反映させた上で、年内には国内のリアル店舗約1,300店すべてに導入していく予定です。前後の業務まで一気通貫で行えるエージェントに進化させた上での展開を予定しています。ブランド側の責任者からも「非常に良いものだから、少しずつ広げるより全店に出してしまっていいのではないか」という意見をいただき、かなりのスピード感を持って展開しています。

――現場の店長やスタッフの皆様が実際にトライしてみて、反応はいかがでしたか。

 650店舗へ広げたフェーズでいうと、現場の店長が最初に使ってみたときの感触は非常に良かったです。今まで手間がかかっていた在庫検索などの作業が、チャットに打ち込むだけでほぼ一瞬で終わる感覚ですので、「これは便利だ」と非常に良好なリアクションを得られました。

 ただその反面、最初の印象が良すぎたために「AIが何でも完璧にやってくれる」というイメージを作ってしまい、現場の期待値のハードルが上がりすぎてしまったところがあります。特に売上分析エージェントのほうは、質問の仕方によっては少し精度の問題があったり、期待外れの回答が出てくることもあり、「思っていたのと違う」という戸惑いの声が出てきたのも事実です。

――そうした現場でのつまずきや運用上のハードルには、どのように対応されたのでしょうか。

 想定外の使い方については、今回は対象とする業務を明確に絞り込んだ上で導入しているので大きな混乱はありませんでした。しかし、細かい運用面での周知徹底は必要でした。

 たとえば、我々としては売上分析は「毎週新しいチャットを立ち上げて行う」ことを想定していたのですが、現場では「先週使ったチャットの続き」で今週の分析をしてしまうケースがありました。AIは過去の文脈を引きずるため、それをしてしまうと精度が著しく落ちてしまいます。「新しい週の分析をするときは、必ず新規チャットでやりましょう」というルールの周知徹底は、地道に行っていく必要がありました。

 また、去年トライアルしたときは特定のブランドの分析手法に合わせたエージェントにしていたのですが、他のブランドに横展開しようとしたときに「見ている観点が違う」という課題に直面しました。そのため、どのブランドでも共通で使えるような標準的な形にブラッシュアップして作り直しました。結果的に、AI導入がきっかけとなって社内の業務整理が進んだというポジティブな側面もありました。

PoCの壁を突破できた理由は「ビジネス部門主導の業務改革」

――多くの企業がAIの導入を一部の実証実験(PoC)だけで終わらせてしまう中、なぜ貴社は大規模な現場での実運用まで踏み込めたのでしょうか。

 一番大きな理由は、「プロジェクト全体を『AI導入プロジェクト』として進めなかったこと」です。我々の最上段にある目的は、あくまで「店舗の業務改革」です。店舗業務のフローを整理して標準化することが主目的であり、その中の解決策やツールの1つとして店長AIエージェントを位置づけています。

 「AIを導入すること」を目的にするのではなく、「この業務はAIに任せるのが最適だ」と判断したものについてAIを使っている。この「目的の置き方」が、プロジェクトが途中で頓挫せず、実運用まで突き進めた最大のポイントです。

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――システム部門だけでなく、現場を統括するビジネス部門と連携できたことも大きかったのでしょうか。

 おっしゃるとおりです。業務フローを見直すプロジェクトですので、我々DX部門の主導ではなく、ブランドや営業などのビジネス部門が主体となって進めていることが非常に大きいです。

 「バックヤードでの作業時間を何%削減し、接客に充てる時間を増やす」といった明確なKPIの設定や意味付けはビジネス側が行っています。我々DX部門は、あくまでITの観点からそれをサポートする位置づけです。ビジネス側が本気で「店舗の運営をどうにかしたい」という目的を持っているからこそ、展開するスピード感も担保できています。

――本部と店舗のコミュニケーションのあり方についても、見直しが進んでいますか?

 はい、店舗業務改革プロジェクト全体として、そこも見直しのスコープに入っています。売上分析エージェントともつながる話ですが、「そもそも何のために分析をしているのか」となったとき、本来は実績を振り返って次のアクションを立てるためにあるはずです。しかし実態としてはその目的が抜け落ちてしまい、本部への「報告フォーマットを埋めるため」だけに膨大な時間がかかっているケースがありました。

 今はまだ本格的に手はつけられていませんが、AIの導入を前提として、本部と店舗の情報流通が「どうあるべきか」を再定義し、標準化した上で進めていく予定です。

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開発は1ヵ月でリリース/アジャイルアプローチが生む現場志向のAI

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この記事の著者

安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)

大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/09/17 07:00 https://markezine.jp/article/detail/77410

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