それでもECを始めることにした理由
そんなアルビオンがECを始めた理由、それはお客様のためでした。
ブランドに興味を持ってくださっても、生活圏に店舗がない。昼間はお仕事で来店できない。そうした「触れたくても触れられない」お客様が、たしかに存在していたのです。事業の1つとしてファッションブランドのライセンスコスメを手掛けておりますが、ライセンスブランドの本国からは「なぜ日本ではオンラインで販売しないのか」と繰り返し聞かれていました。欧米の買い物習慣からすれば、当然の問いです。
実店舗での体験を守りたい。でも、店舗に来られないお客様にもブランドに触れる機会をつくりたい。その両方を諦めずに済む方法はないか。考えた末に、ECを始めるという結論になりました。
最初に手掛けるのはアナ スイ。社内はざわつきました。「いよいようちもECをやるのか」と。当時アナ スイの担当だった私は、正直おののきました。なにしろ店舗での実感体験だけでやってきた会社です。私自身、ECの知見もノウハウも一片もありません。唯一の取柄といえば、「とにかく当たって砕ける」精神くらいでした。
では、誰に担当してもらうのか。社内に経験者はいません。知見もありません。部下に担当を割り振ってよいものかも悩みました。そして悩んだ末に、「これは私がやるしかない」と決心し、「これは私がやります」と社内に宣言したのです。
返ってきたのは「え? あの人、できるの?」という声と、「自分が担当にならなくてよかった」という声でした。まあ、そうですよね。私もそう思います。
早速見積もりするも、増えていく疑問
まず動いたのは、当時お付き合いのあったツールベンダーさんを含めた数社に相談することでした。ECサイトを開設・運営するにはどんな準備が必要で、何に費用がかかるのか。当時の私は、まったくわかっていませんでした。
そして、最初の会社が出してきたのは8桁の見積もり。「ひえっ」と思っているところに、9桁のものも出てきました。正直、何が正しいのか、当時の私にはまったくわかりません。
これが、いま振り返っても一番怖かったことです。百貨店や化粧品専門店にカウンターをつくるとしたら、私はその中身を概ね理解できます。内装にいくら、什器にいくら、教育にいくら。だから金額が高くても、納得して判断できる。
ところがECサイトの見積もりは、違いました。並んでいる項目の一つひとつが何を意味するのか、私のなかで像を結ばない。「?」が消えないまま、金額だけが大きくなっていく。この「?」への恐怖が、いちばん厄介でした。
