アラート連動で売上約12%増。天候や「揚げたて」を逃さないコンテキスト配信
──先行事例として評価された取り組みがあれば教えてください。
大塚製薬様と行った、熱中症対策の啓発施策です。環境省の「熱中症警戒アラート」と連動し、セブン‐イレブンのデジタルサイネージで、水分補給などを呼びかける動画を配信しました。
熱中症の危険性は、地域や日によって異なります。そこで、全国一律の情報を流すのではなく、アラートの発令状況に加え、都道府県や時間帯に合わせて動画を切り替え、その場のお客様に必要な情報を届けることを目指しました。
この取り組みは、2023年に京都府でアプリバナーの試験運用を始め、徐々に対象エリアを広げてきたものです。デジタルサイネージでは32本の動画を制作・配信しました。地域に即した情報を、買い物の場で音と映像を通じて伝えられる点は、加盟店や行政からも評価いただきました。
──購買面ではどのような成果がありましたか。また、こうした施策を広げるうえでの課題を教えてください。
動画を放映した店舗の関連商品売上が、その他の店舗と比べて速報値で112%、つまり約12%高かったという結果が出ています。熱中症への注意を呼びかけるだけでなく、関連商品を手に取っていただく行動にもつながった事例です。
一方で、運用には大きな手間がかかりました。地域ごとのアラートの発令状況を確認し、対応する動画を、適切なタイミングで配信する必要があります。この施策では、そうした切り替えを手作業で行っていました。
十分に準備すれば実現できますが、同様の施策を複数同時に走らせるのは難しい。今後、様々な商品や場面に広げるために、AIによるクリエイティブ制作や、気温などの外部情報と連動した配信の仕組みを作ろうと考えています。
──カウンターファストフードの「揚げたてアナウンス」も、サイネージを活用しているそうですね。
「ななチキ」や「揚げ鶏」では、店舗側がフライヤーで揚げた仕込みのデータを入力すると、それと連動してサイネージに「ただ今、揚げたてです」と告知するシステムを実験的に導入しました。商品をしっかり仕込んだうえで呼び込みができるため、売上効果が出やすいことがわかっています。
今は、在庫と広告配信を連携させる仕組みも構築しています。商品を多く仕入れた店舗には多く広告を出し、在庫が少ない店舗には出さない。メーカー様と店舗の双方にとって、より効率的で効果的な販促につながると考えています。さらに、将来的には配信のタイミングをAIなどで判断することも考えています。
効果測定の課題は?売上リフト以外の価値をどう測るか
──売り場と連動した配信では、どの程度の効果が見られますか。ROI(投資利益率)を検証する際の課題はいかがでしょうか。
揚げたてのように「今、買うことに意味がある」情報は効果が出やすく、売上が10~20%上がることもあります。ただ、広告全般が、出した直後に売上につながるとは限りません。
リテールメディアはデータを持っているがゆえに、すぐに効果を検証できるはずだと期待されやすい面があります。しかし、セブン‐イレブンで広告を見て別のお店で買う方も、1週間後に思い出して買う方もいます。配信期間中の自社店舗の売上だけでは、十分に捉えられない効果があるでしょう。認知や、その後徐々に効いてくる効果も含め、長期的に見る必要があります。今後、他社様も含め複数のコンビニエンスストアでの買い回りなども検証できれば、数字はもっとクリアになると思います。
一方、ID-POSでは、広告を見たであろう方が購入した、その方は以前そのブランドを買っていなかった、といった分析ができます。新規購入者の割合など、様々な視点から効果を説明しています。
──広告主には、どのようなデータを提供していますか。
AIカメラ(※プライバシーに配慮し、個人を特定しない仕組み)による視聴の指標、ID-POSによる購買行動、店舗のPOSの変化などを検証し提供しています。直近はデータプランニング部という部署ができたため、何を提供するべきか整理しているところです。分析項目は必要最低限に絞りつつ、広告主のリクエストに応じて個別対応しようと考えています。
以前は、良かれと思って様々なデータをお出ししていたのですが、実は必要とされていない部分もありました。逆に必要とされるような感情・好意度の変化を捉えられていない課題もあったのです。この点は提供すべきだと考えており、現在はアンケート会社に依頼し、テスト的に調査を実施しているところです。
直近4週間の調査では、広告を見た人と見ていない人で好意度に差が出るといった傾向も捉えられることがわかってきました。提供するデータの量より、広告主が本当に知りたいことを伝えられているかが大切だと考えています。
──広告主とのプランニングは、どの段階からスタートするのですか。
解決したい課題をお伝えいただければ、データを基に提案したいと考えています。我々から「こういうことが課題ではないですか」と提案することもあります。
これまではセブン‐イレブン内の売れ方が中心で、日本全体のマーケットを見る視点が欠けていました。ただ、マーケターが気にされるのは、売れたかどうかだけでなく、商品が消費者にどう受け取られているか、誰をターゲットにすべきか、といったことです。
現在は、営業部門がメーカー様の声を聞き、分析部門がデータから整理して、プランニングにつなげるノウハウを学んでいます。外部へ分析を依頼する形から、同じチームで「どんな提案が必要か」を考えられるようになったことも、新会社の大事なポイントです。
目的は、我々のリテールメディアが売れることだけではありません。既存のテレビ・デジタル広告にリテールメディアを組み込むと何が良くなるのか、予算配分をどう変えると最適になるのかまで提案したい。3つ目の選択肢として、組み合わせによる効果を目指すのが我々の考え方です。
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- この記事の著者
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島田 涼平(シマダ リョウヘイ)
食品専門紙の記者としてキャリアをスタートし、同時に農林水産省に拠点を置く記者クラブにも所属。時事ネタからスポンサードコンテンツまで担当し、官庁・民間企業問わず取材を行ってきた。その後、紙媒体からWeb媒体への転身を決意。比較系Webメディアのコンテンツ制作を経験後、2022年からマーケティングを中心とした経済メディ...
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