ファミマ足立光氏が語る、小売業界の事業サイクルとTikTokの親和性
コンビニエンスストアに代表される小売業界は、日常的な来店頻度が高く、誰もが参加しやすいという特徴を持つ。TikTok上でも「#コンビニ」や「#コンビニスイーツ」といったハッシュタグを伴う関連動画の年間視聴数は17.2億回に上り、さらに海外でも「konbini」という言葉で日本のコンビニ文化が語られるなど、特有の盛り上がりを見せている。
セッションに登壇したファミリーマートのCMOである足立光氏は、自社にとってのTikTokの立ち位置を「トレンドが生まれる場所であり、今の時代の旬のメディアだ」と評価する。同社が身を置くのは、数週間単位でキャンペーンや新商品が次々と入れ替わる、非常にサイクルの速い業界だ。足立氏は「投稿されて、それが拡散されて一気に広がっていくというスピード感の必要性が高く、また相性がいいメディアだ」と語り、短期集中的に認知を獲得し、社会的な話題化を狙う上で、TikTokの拡散力が強力な武器になっていることを示唆している。
(写真左)TikTok for Business Japan Global Business Solutions 執行役員 セールスディレクター 相原 留衣氏
この拡散力が国境を越えた事例として挙げられるのが、ラインソックスのシリーズでファミリーマートの象徴的なデザインをあしらった通称「ファミマソックス」だ。日本全国のどこでも買える手軽な日用品が、ユーザーが実際に着用した姿をTikTokに投稿したことを発端にファッションアイテムとして再評価され、海外からの観光客がこぞって買い求める日本土産として定着した。店舗の棚にある商品が、ソーシャルメディア上の共感を通じて予期せぬ需要を創出する。これこそが、現代のマーケティングにおいて見逃せない波及効果だ。
最適化動画とUGCが実店舗への来店を後押し
それでは、具体的にどのような施策が消費者の行動を促すのだろうか。ファミリーマートが8月に実施した「お値段そのまま45%増量作戦」などのキャンペーンでは、テレビCMなどの既存素材をそのまま流用するのではなく、TikTokの視聴態度に最適化して作り込んだ専用のクリエイティブを配信した。また、視聴者が真似しやすい構成を意識し、UGC(ユーザー生成コンテンツ:消費者が自ら発信した動画などのこと)の創出を促す工夫を取り入れた。
その結果、同じ出稿規模の平均的な広告認知率が4.8パーセントであるのに対し、本キャンペーンでは9.1パーセントという高い認知を獲得した。さらに注目すべきは、単なる認知にとどまらず、動画の完全視聴やコメントといった「高いエンゲージメントを示す興味関心層」が配信前の2倍に増加したことだ。これはTikTokが提供するブランドリフト調査(広告接触後のユーザーの態度変容を測る分析ツール)によって裏付けられている。
全国に店舗を展開する小売業にとって、デジタル上の「興味関心」が実店舗への「来店」に転換されるかが最大の関心事だ。足立氏はこの成果のビジネス的価値について、「ファミリーマートの店舗は皆様の会社や家の近くにある。広告を見ただけでは行動につながらないが、興味関心層が倍になるということはポジティブな感情が増えていることを意味しており、具体的な行動につながる指標として非常に価値がある」と説明している。
また、キャンペーンを通じて多数のUGCが生まれた点についても、企業発信のメッセージだけでは伝わらない生の声がSNS上で循環し、結果として商品の認知を押し上げる重要な要素だと位置づけている。
この記事は参考になりましたか?
- この記事の著者
-
安原 直登(編集部)(ヤスハラ ナオト)
大学卒業後、編集プロダクションに入社。サブカルチャー、趣味系を中心に、デザイン、トレーニング、ビジネスなどの広いジャンルで、実用書の企画と編集を経験。2019年、翔泳社に入社し、MarkeZine編集部に所属。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
