ベネッセコーポレーションのシンクタンク「Benesse教育研究開発センター」は、全国の公立小・中学校の教員3,981名と公立小・中学校の校長1,087名を対象に、「第4回学習指導基本調査」を実施。学習指導の実態と教員の意識を調査した。
業者テストの利用率が上昇、コンピュータは教科によって使い分ける傾向
発表された資料によると、教員の教育観はこの10年で大きく変化しており、「得意な教科や領域の学力を伸ばすこと」より「不得意な教科や領域の学力をつけさせること」を重視する教員が増えるなど、子どもの個性や自主性を尊重する意識よりも、教員が中心になって学力を底上げしようという意識が高まっているという。
「表現活動を取り入れた授業」「自分で調べることを取り入れた授業」といった、体験的な活動を行う授業を心がける教員の割合が2002年に比べて減少。小学校教員の94.0%が宿題を「毎日出す」と回答するなど、宿題を出す頻度や分量が増加している。また、家庭学習の時間を指導している教員の割合も増加している。
授業で用いている学習方法を、国語・社会・算数・理科すべてを担当している小学3~6年生の教員にたずねたところ、「市販プリントを用いての学習」「市販テストの利用」がいずれの教科でも増加。市販テスト(業者テスト)の利用率は、国語・算数・理科で9割を超え、自作プリントを使った授業を心がけているという小学校教員の割合は10.6%にとどまっている。また、「コンピュータを使った学習」は、2002年の調査結果と比較すると、コンピュータを使った学習は、社会で58.1%から67.3%、理科で39.1%から48.3%と増える一方、国語で33.2%から30.4%、算数で26.3%から22.9%と減少。コンピュータの利用が効果的な教科について、試行錯誤の中から教員側がつかんだ答えがこのデータに反映されているようだ。
多忙な先生たちは1日をどう過ごしているのか?
教員側の悩みとしては、「教材準備の時間が十分にとれない」「作成しなければならない事務書類が多い」「休日出勤や残業が多い」など、小・中学校ともに7割を超える教員が、忙しいことに悩んでいる。先生たちの日常生活の平均的な時間の過ごし方は以下のとおり。
教員が直接的な指導にあてる時間が限られている中、自宅で効果的な学習を行えるよう、宿題を出す頻度や家庭学習時間の指導を行う割合は高まっている。小学校の宿題を出す頻度は、98年調査では「毎日出す」は84.8%だったが、07年調査では94.0%に増加。中学校では「授業のたびに出す」が97年の15.5%から07年に25.6%に増加している。
「確かな学力」を向上させるための政策が進められるなか、教員の教育観も大きく変化しており、授業や生活指導で大切にしていることとして教員があげたのは「どの子どもにも、できるだけ学力をつけさせること」が最も多く、小学校では91.8%、中学校では85.6%となっている。その一方で、学習指導要領改訂に向け、活用や探究など体験的な授業を心がける教員は減少、教員は多忙感を感じていると問題がある。教員配置や研修の充実、条件整備や資源配分など、学校環境の改善の重要性が今度はさらに増していきそうだ。
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