3月23日にNHK千代田放送会館(東京都千代田区)で催された「第4回ICPFシンポジウム『参加型メディアの可能性』」に来日中のウィキペディア(Wikipedia)の創立者、ジンボ・ウェールズ(Jimmy Wales)氏が登場した。ウィキペディアは、「信頼される質も量も史上最大の百科事典を、共同作業で創り上げるプロジェクト」として立ち上げられ、インターネット上で誰もが編集できるのが特徴で、米国NPO(非営利組織)のウィキメディア財団によって、主に寄付とボランティアによって運営されている。
そのウィキペディアの創立者であり、現プロジェクトリーダーのウェールズ氏は、現在125言語で展開しているウィキペディアについて「将来的には347カ国で展開する」と全世界の全ての国の言語で、ウィキメディアが利用できるようにすると今後の展望を語った。
ウィキペディアは匿名によって一般ユーザーが投稿し、共同作業で作成していく百科事典なので、専門家の監修の元に作成される百科事典と比べると信頼性が低いとも指摘されているが、この点についてウェールズ氏は、
「百科事典として記事数がある程度の量に達するまでは、確かに質はそれほど高いとはいえないだろう。だが、参加するユーザが増え、記事の量が増えれば増えるほど、その質も高まっていく。事実、記事数が多い英語版では専門家による記事と比べても劣らないような記事が増えている」
と今後時間に比例して、記事の質も高まっていくと答えた。
ウィキペディアのような、Web2.0と呼ばれるユーザー参加型のメディアは、匿名であることを逆手にとって、サイト内で誹謗中傷を繰り返するなど、サイトの妨げになるようなユーザの存在が問題となっている。ウィキペディアも当然こうした問題を抱えているが、ウェールズ氏は、
「人々を信頼することが重要だ。もちろんサイトにとって不利益な行為をとるユーザも存在するが、その他大勢は、私たちの中立性や節度といったポリシーに共感し、参加してくれている。またウィキペディアは即座に編集可能なので、誤った記事やエラーをすぐに訂正できる」
と答えた。
また「GoogleやYahoo!に対抗する検索エンジンを作る」と発表され、話題になっているウィキメディア財団が準備中の検索エンジン「Search Wikia」」については、
「サービス開始時期は今年の12月ぐらいになるかもしれないし、はっきりしていないが、2~3年かけてコミュニティの力を生かして主要な検索エンジンにしたい。ウィキペディアは非営利だが、検索エンジンサービスは営利目的。検索エンジンは広告収益を得るのに非常に優れたビジネスだ」
と語った。「Search Wikia」」は、Wikipediaの成功体験をもとに、コミュニティの力を使ってオープンソースで構築されると報じられている。