SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめのセミナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第112号(2025年4月号)
特集『いま選ばれる「ブランド」の作り方』

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

今知っておきたいマーケティング基礎知識

ダイナミックプライシングとは?仕組みや導入のポイント、事例を紹介

 マーケティング活動において「ダイナミックプライシング」という言葉を聞いたことはないでしょうか。ダイナミックプライシングを活用すると、需要期と閑散期の売上高を一定に保つことが可能になります。「ダイナミックプライシングを自社で導入できないか」「ダイナミックプライシングの仕組みを知りたい」と考える人もいるでしょう。本記事では、ダイナミックプライシングの仕組みや導入する際のポイント、成功事例を紹介します。ぜひ、最後までお読みいただきダイナミックプライシング活用の参考にしてみてください。

ダイナミックプライシングとはなにか

 ダイナミックプライシングとは、商品・サービスの需要の変動に基づいて価格を調整する戦略を意味します。「変動価格制」や「動的価格設定」とも呼ばれます。

 最近使われるようになった価格戦略のように思われますが、実際には一部の業界では昔から活用されている戦略です。ホテルや鉄道会社、テーマパークなどで導入されています。需要期と閑散期がわかりやすい業界では、昔から事前にダイナミックプライシングを活用して時期ごとの価格設定を行い、売り上げの低迷を抑制してきました。

 たとえば、ゴールデンウィークやシルバーウィークなどの行楽シーズンに、ホテルの宿泊料金や新幹線や飛行機のチケット代が値上げされていることはイメージがつきやすいと思います。この値上げはダイナミックプライシングによる価格戦略です。

 近年では、AIによってビッグデータを活用した需要予測が普及しました。背景として、価格調整を行う負荷や手間の軽減の必要性が挙げられます。主に人手不足対策として導入する企業が増えています。

ダイナミックプライシングの仕組み

 ダイナミックプライシングの仕組みは大きく分けて2つあります。

  1. ルールベース
  2. AIによる予測

 ルールベースは従来行われていた仕組みで、需要期と閑散期がわかりやすい業界では価格設定のルールをあらかじめ設定できる手法です。以前は人によって月別の売り上げデータや顧客の行動データ、季節や天気などの外的要因を鑑みて適正な価格を設定していました。特徴は、導入・運用が比較的容易なことです。

 AIによる予測では、過去に実施したダイナミックプライシングの実績データをAIに学習させ、精度の高い需要予測を行い価格を設定します。基になるデータは、季節や天候、コンサートやスポーツ大会など様々です。

 たとえばホテルがAIによる予測を活用する場合、宿泊需要に関するビッグデータを基に分析・需要予測・価格設定を行います。これにより、現場の負担を軽減しながら需要期・閑散期それぞれに最適な価格設定が可能になります。

ダイナミックプライシングを導入するメリット

 ダイナミックプライシングを導入することは企業と消費者の双方にメリットがあります。それぞれのメリットは以下の通りです。

(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)

 各メリットについて詳しく紹介します。

企業のメリット(1):収益の拡大

 ダイナミックプライシングの導入は企業にとって、収益の拡大が期待できます。商品・サービス需要が高まる時期には価格設定を高くし、収益拡大につなげます。商品・サービス需要が落ち着く時期には価格設定を下げ、売れ残りや余剰在庫の回避が可能です。

 このようにダイナミックプライシングの導入は、収益を拡大し最大化することの他に在庫を抱えるリスクを抑えるメリットがあります。

企業のメリット(2):人的リソースの最適化

 ダイナミックプライシングは、需要期と閑散期に合わせた価格設定を行うため一定の需要を見込めるようになります。これにより人的リソースを持て余すことなく最適化を図れるでしょう。

 またAIを活用すると、分析・需要予測・価格設定を自動化できるため人件費を抑えることもできます。

消費者のメリット:時期によってお得に商品・サービスが得られる

 ダイナミックプライシングを導入することで、消費者は時期によってお得に商品・サービスを得られるようになります。

 商品・サービスの需要が落ち着く時期であれば、通常価格よりも安価に購入ができます。年末年始やゴールデンウィークなどの時期はホテルの宿泊料金が高くなりますが、梅雨の時期は宿泊料金が半額以下になり、お得に旅行を楽しめたという経験をした人もいるでしょう。

 同じ商品・サービスを通常よりも安価に購入できる点が、消費者側のメリットになります。

ダイナミックプライシングを導入するデメリット

 メリットと同様にダイナミックプライシングを導入することで企業と消費者の双方にデメリットが生じます。それぞれのデメリットは以下の通りです。

(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)

企業のデメリット(1):導入コストが掛かる

 ダイナミックプライシングを導入するには、実施するためのシステム構築費のほかに運用・保守のランニングコストが掛かります。

 システムは自社で開発することも可能です。使いやすいようにカスタムもできますが、初期投資だけでも大きなコストが掛かります。

 ダイナミックプライシングの導入に成功し収益の拡大・最大化ができれば、導入の際に掛かったシステム構築費や運用・保守のランニングコストを回収できますが、必ずしもうまくいく保証はありません。ダイナミックプライシングの導入を検討する際には、何ヵ月で導入コストを回収できるのか試算してみましょう。

企業のデメリット(2):消費者が不満を抱く可能性がある

 ダイナミックプライシングによる過度な価格設定の変動には消費者が不満を抱く可能性があります。安価な価格設定で商品・サービスの購入を促しても、価格の変動幅が大きければ長期的な商品・サービスの利用を控えてしまうでしょう。

 また、消費者が「金額が下がった時に買えばよい」と判断し来店や購入を控えてしまうと、企業としては来店率や売り上げが下がってしまうリスクがあります。

消費者のデメリット:時期によっては高額で商品・サービスを購入することになる

 ダイナミックプライシングの導入により、消費者は時期によっては通常よりも高い価格で商品・サービスを購入することになります。

 商品・サービスを必要だと感じた時には、他の消費者のニーズも高まり価格が上がることが考えられます。価格が下がるまで購入を控えれば、商品・サービスの在庫がなくなる可能性もあります。必要不可欠で購入せざるを得ない場合、消費者としては損をしたと感じることもあります。

 時期により商品・サービスの価格が変動するため、購入に至るまでの最終的な意思決定に時間が掛かるでしょう。

ダイナミックプライシングを活用した価格最適化

 価格の最適化においてダイナミックプライシングは非常に重要です。ビッグデータを活用した分析による需要予測から、魅力的な価格での商品・サービスの継続的な提供が可能になります。これにより利益率の維持と売上の最大化を図れるでしょう。

 ダイナミックプライシングを活用した価格戦略は、消費者の価格への感度や購買行動などの顧客属性の理解と組み合わせることで効果を高めます。消費者の購買行動データを基に価格最適化を行うため、人気の高い商品・サービスの利益率を伸長させるだけでなく、効率的な値下げにより落ち込んだ売り上げを回復させるきっかけになります。

ダイナミックプライシングの価格設定方法

 ダイナミックプライシングを用いた価格の設定は以下の順で進めます。

  1. データの収集
  2. 需要の予測
  3. 価格の決定

 それぞれの工程で、どのような作業を行うのか紹介します。

1.データの収集

 まずはデータ収集です。商品・サービスの最適な価格を設定するには参考になるデータが必要になります。データはできるだけ幅広く集めることが重要です。

 たとえば、以下のようなデータが挙げられます。

  • 顧客属性(性別・年代)
  • 月別の売り上げ
  • 曜日別の売り上げ
  • 商品・サービス別の売り上げ
  • 月別の来客数
  • 曜日別の来客数
  • 時間帯別の来客数
  • 天候
  • イベント
  • 在庫数
  • 競合の価格設定

 参考になるデータが多ければ、分析の精度も上がります。どのようなデータを収集すべきか社内で検討して進めましょう。

2.需要の予測

 次に需要の予測を行います。AIが搭載されたシステムを使用する場合には、収集したデータを基に分析・需要予測・価格設定を自動で行いますが、システムの導入にはコストが掛かるため使用できないこともあるでしょう。

 この記事では、システムを使用せずに手動で需要の予測を行う方法を紹介します。

  • 移動平均法:特定の期間の過去実績の平均値を需要予測値とするもので取り入れやすい手法です。たとえば、過去の実績を四半期(3ヵ月)ごとに分けて需要を予測できます。該当の月の予測を行う場合は、直近3ヵ月の平均値を参考にしましょう。
  • 指数平滑法:実際の需要と予測した需要の差分を基に次の需要を予測する手法です。算出するための公式は【予測値=a×実績値+(1-a)×予測値(見込み)】になります。指数のaには実績÷見込み売り上げで算出した数値を入れます。この時指数のaが、0に近ければ前回予測値を重視した値で、1に近ければ前回実績値を重視した値です。

 指数平滑法の例を挙げます。今月の商品・サービスの売り上げ見込み100万円に対して実績が90万円だったとします。実績を売り上げ見込みで割って出た数値0.9を指数aに当てはめて公式を活用します。

  • 0.9×90万円+(1-0.9)×100万円=91万円(予測値)

 指数平滑法は、公式がややこしいので初めのうちは移動平均法を活用するのがよいでしょう。

3.価格の決定

 最後に商品・サービスの価格を決定します。AIを搭載したシステムを導入している場合は、数分ごと、1円単位で価格設定の変更が可能です。

 ダイナミックプライシングの適用前後で、売り上げ・利益にどれほどの差が出るのか見てみましょう。

 たとえば、ランチタイムに800円のセットを提供している飲食店があるとします。ダイナミックプライシングを導入し、平日の雨の日には200円値引き、土日祝日には200円値上げを行いました。通常価格の800円でセットを提供するよりも、価格変動させた場合の方が利益が多いことがわかります。

(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)

 上記の表では1日あたりの利益を算出しているため、ダイナミックプライシングを導入前後の差は小さく見えます。しかし、この差が月単位・年単位となった場合はどうでしょうか。あくまで例になるので、実際にはダイナミックプライシング導入前の方が利益が確保できたということもあるかもしれません。

 しっかりと利益を確保するためにも、データを活用した需要予測と価格の最適化が大事です。

ダイナミックプライシングを導入する際のポイント

 ダイナミックプライシングを導入する際のポイントを紹介します。ポイントは以下の5つです。

  1. ブランドイメージやレピュテーション管理の意識
  2. 専門人材や専門技術の整備
  3. 市場や競合他社の分析
  4. カニバリゼーションへの配慮と意識
  5. 販売価格と購買量の相関把握

 それぞれについて、詳しく紹介します。

1.ブランドイメージやレピュテーション管理の意識

 ダイナミックプライシングにより需要期と閑散期それぞれで適正な価格を設定し利益を確保できますが、消費者に対して「不公平さ」や「不信感」を与えてしまった時に企業のレピュテーション(評判)に悪影響を及ぼす可能性があります。

 消費者へ不信感を与えないためにも、事前に商品・サービスの価格が不定期に変動することを告知し関係性を維持するように努めましょう。ブランドイメージや消費者からの信頼性を意識した価格戦略が重要です。

2.専門人材や専門技術の整備

 ダイナミックプライシングを導入するにあたり、専門的な知識や技術を有する人材の整備が必要です。

 データ分析に詳しい人材や、システムを導入する場合にはシステムを扱える人材が求められます。業界によっては、他にも専門的な知識が必要になることもあります。どのような人材がいればダイナミックプライシングの取り組みがスムーズに進むか整理しましょう。

3.市場や競合他社の分析

 ダイナミックプライシングを導入する際には、事前に市場や競合他社の動向を調査・分析しましょう。

 価格調整は、あくまで戦略の一つです。市場や競合他社の調査・分析の結果によっては価格調整以外の最適な戦略が見つかるケースもあります。

 競合他社の動向を調査する際には、ダイナミックプライシングを導入しているかを確認しましょう。価格変動の施策によって競合他社の売り上げが伸びているようであれば、自社での導入の検討材料になります。

4.カニバリゼーションへの配慮と意識

 カニバリゼーションとは「共食い」を意味し「カニバリ」とも言われ、ビジネス面では「自社の商品・サービス同士で売り上げのシェアを奪い合っている」ことを表します。ダイナミックプライシングにおいては、「商品Aの価格を変動させたことで、商品Bの売り上げが鈍くなる」という意味で使われます。

 自社の収益の柱となる商品・サービスが複数ある場合は、ダイナミックプライシングを導入した際のカニバリゼーションが生じないかを意識しましょう。

5.販売価格と購買量の相関把握

 商品・サービスの販売価格と消費者の購買量は、直線的になるとは限りません。販売価格と購買量の相関は、商品・サービスにより異なります。

 たとえば、2,000円の商品・サービスを1,500円に価格変動させても需要は大きく変わらないことがあります。さらに500円値引き、1,000円に変動させた際に需要が増加するケースもあります。

 ダイナミックプライシングを導入する際に、商品・サービスの販売価格と購買量の相関についてもデータを取得して分析できるようにしましょう。

ダイナミックプライシングの効果計測

 効果計測を行いダイナミックプライシングの効果を最大化させるためにPDCAを繰り返しましょう。ダイナミックプライシングの目的は価格変動ではなく、価格を変えたことによる収益の拡大と消費者の満足度向上です。

 特にPDCAを回す上で重要視する箇所はC(チェック)です。一般的には、前年比で売上高を比較し効果計測を行いますが、単純な前年比ではダイナミックプライシングの効果計測には不十分と言えます。

 売上高は、天候やイベントや景気などの外的要因の影響を受けます。効果計測を行う際には、必ず外的要因を加味して評価しましょう。また顧客満足度も定期的にチェックし、満足度の変化にも注目することを推奨します。定期的に効果計測と改善を繰り返し、効果の最大化を図りましょう。

BtoBにおけるダイナミックプライシングの課題

 ダイナミックプライシングはBtoCのマーケティングで取り入れられるケースが多い取り組みです。BtoBマーケティングの場合、商品・サービスの販売価格は固定されていることが多くダイナミックプライシングの実現には課題があります。考えられる課題は下記の2つです。

  • 導入ハードルが高い
  • 価格設定が難しい

 それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。

導入ハードルが高い

 BtoBマーケティングでは、一般的な範囲の販売価格で商品・サービスの取引をすることが多い傾向にあります。

 業界によっては決まった販売価格で取引する習慣が根付いているので、新たな価格設定が受け入れられるまで時間を要するでしょう。販売価格が安くなることは受け入れられますが、高くなった際に競合他社の商品・サービスの販売価格と比較・検討されてしまう可能性があります。

 このような導入ハードルの高さが、BtoBマーケティングにおけるダイナミックプライシングの課題の一つです。

価格設定が難しい

 BtoBマーケティングにおいては、クライアントに受け入れられる価格設定を行うことが容易ではありません。理由は市場価格の取得が困難なことにあります。

 BtoBマーケティングの場合、契約の際にカタログ価格から値引きを行うこともあるため実際の市場価格が読みにくくなっています。そのため、正確なデータとして参考にできるものは自社の商品・サービスの平均販売価格の推移のみとなります。ただし、あくまで「自社の商品・サービスにおける売り上げの推移」となるので市場価格とは別物です。

 既存の商品・サービスであれば、平均販売価格の推移を基に価格設定を行うこともできます。しかし、新しい商品・サービスの場合は市場価格が読みにくいため、何をベンチマークとして価格設定を行うかが重要です。

ダイナミックプライシングの成功事例

 ダイナミックプライシングを導入して成功している企業はいくつもあります。今回は5つの成功事例を紹介します。

  1. 東京ディズニーランド・ディズニーシー
  2. マクドナルド
  3. ビックカメラ
  4. JR東日本
  5. オリックス・バファローズ

 それぞれの取り組みについて詳しく見ていきましょう。自社のダイナミックプライシング導入の参考にしてみてください。

東京ディズニーランド・ディズニーシー

 東京ディズニーランド・東京ディズニーシーでは、ダイナミックプライシングを2021年3月20日の入園分から導入しています。入園チケットは、来園者が多くなる土日祝日とオンシーズンは高値の設定になっており、来園者が少ない閑散期や平日は安値に設定されるようになりました。

 ダイナミックプライシングを導入した目的は、曜日や時期による来園者の繁閑差をならし混雑を緩和させ、サービス向上を図ることでした。

 土日祝日やオンシーズンにしか来園できない利用者にとっては、高値になってしまうので以前に比べて来園する頻度は減ってしまう懸念はあります。しかし、閑散期であれば通常価格よりも安価に東京ディズニーランド・東京ディズニーシーを楽しめるというメリットは大きいでしょう。

マクドナルド

 マクドナルドではエリアにより商品の販売価格を変えています。

 東京、大阪、愛知などのエリアで「都心店」と「準都心店」に分け、それぞれで一部の商品で10円から90円の値上げをしました。「都心店」と「準都心店」で商品の販売価格は以下のように変動します。

(タップで画像拡大)
(タップで画像拡大)

 この価格変動により一部店舗では客離れも生じましたが、単価が上がったことで売上は増える形となりました。マクドナルドでは、価格設定を行う際に「デマンドベース・プライシング」という消費者や地域ごとの「プライス・センシティビティ(価格への受容性)」を数値化する手法を用いました。

 デマンドベース・プライシングの活用により、各地域で値上げはしたものの、該当地域の消費者が納得して支払える金額設定になっています。

ビックカメラ

 ビックカメラは他の家電量販店やEC小売店やAmazonなど、競合が多くダイナミックプライシングによる価格戦略を重要視し導入しました。

 ダイナミックプライシング導入前は、各商品に値札をつけていました。価格変更があった場合には毎回人力で値札を取り換えていたため、対応に2~3時間掛かりました。ダイナミックプライシング導入後は、値札から電子棚札に切り替え、価格変更の工数を軽減しています。

 電子棚札への切り替えにより、本部での販売価格一括変更が可能になり効率化に成功しました。また、人力での値札交換の工数が掛からないため、価格変動の頻度も上げることができ、競合との価格競争力も上がりました。

 価格変更における工数軽減により、店舗スタッフはオフライン店舗の強みである接客に集中できるようになり、商品を買わずに退店してしまう来客の数の減少につながりました。

 ダイナミックプライシングの導入により、適正価格での商品提供と人的リソースの適正化による接客の質向上は顧客満足度に結びつく大きな成功といえるでしょう。

JR東日本

 JR東日本では、ダイナミックプライシングを導入し2023年3月18日から「オフピーク定期券」の販売を開始しました。

 オフピーク定期券は、コロナ禍の3密回避の意識や混雑緩和のニーズを踏まえた定期券になります。平日朝の通勤通学のピーク時間帯には使用できませんが、その他の時間帯で使用できる定期券です。

 通勤通学のピーク時間帯に使用できない代わりに、割安で定期券を購入できます。オフピーク定期券の利用を各企業が推進することで、通勤ストレスの緩和や支給交通費の軽減につながる施策です。

オリックス・バファローズ

 プロ野球のオリックス・バファローズも2019年7月16日からダイナミックプライシングを導入しています。観戦チケットの販売価格を試合日程や席種、市況、天候などのデータを基に需要予測を行い変動させる取り組みです。

 ダイナミックプライシングの導入前後で比較し、チケット収入が増加したというデータも公表されています。この成功を皮切りに他球団においてもダイナミックプライシングを導入するようになりました。

まとめ

 ダイナミックプライシングは、需要期と閑散期それぞれに対して適正な販売価格を設定できる戦略です。企業としては売り上げ・収益を最大化でき、消費者としては購入時期によっては安価に商品・サービスを購入できる仕組みです。

 しかし、過度な価格変動は消費者の「不満」や「不信感」につながります。データを基にしっかりと分析を行い、需要を予測し適正価格を設定するように意識しましょう。

 ダイナミックプライシング導入後はPDCAを回し継続的に検証を行い、商品・サービスの売り上げ・収益の最大化を図りましょう。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
今知っておきたいマーケティング基礎知識連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2025/05/25 00:00 https://markezine.jp/article/detail/48589

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング