ファンとブランドのエンゲージメント(絆)形成を脳科学で探る
調査は、30代から50代のガンバ大阪ファンクラブ会員14名と、ハーレーダビッドソン・オーナー14名を対象に行われ、データの解析・分析は博報堂とアドバイザー契約を結んでいる英国のニューロセンス社が担当した。
今回の調査では、ブランドに関わる数タイプの画像素材を提示し、「fMRI(核磁気共鳴画像法)」によって脳活動をスキャンしている。その結果、それぞれのファンがブランド関連画像を見ているときには、「記憶」(Hippocampus)と「意志決定」(DLFPC)に関わる脳部位の活性化が認められた。これは、彼らが画像を見ている間、なじみがあり、自分にとって強い意味を持ち、心地よさを感じていることを示しており、これらの部位の活性化は強いブランドロイヤルティを示すひとつの反応類型となっている。
ガンバファン単独の分析では「記憶」(海馬)に加えて「嗜好」に関わる部位(感覚野)でも活性化が認められ、ガンバをシンボライズするロゴ、ユニフォー ム、ガンバ選手を見て「自分のチーム」であると反応している。この部位は文化的なブランドの処理に重要な役割を演じており、この部位が活性化していることは「自分がガンバファンである」という強い社会的帰属意識を示している可能性がある。
しかし、「ハーレーダビッドソン」ファンのこれらの部位はガンバファンほど活性化せず、「共感」機能に関わる脳部位が活性化した。これは、それぞれのファンのブランドとのエンゲージメント(絆)形成メカニズムが異なることを示している。
ハーレーダビッドソン・オーナー単独の分析では、「イベント画像」を見たときに、前運動野と呼ばれる部分に特徴的な反応があった。この部分の細胞は他者がある行為をするのを見ているときに、あたかも自分も同様の行為をしているかのように他者に「共感」する場合に活性化するもので、ハーレーブランド画像が強い共感を生み出していることを示している。彼らとハーレーの強い絆はシンボル的な結びつきというより も、自ら体を動かし体験することで得られる共感が大きなベースとなっているようだ。
ガンバは「敵対」、ハーレーは「共感」
今回の実験調査によって、「ガンバ大阪」は他ブランドとの競争(敵対)関係が強い強力ブランドであり、「ハーレーダビッドソン」は、他ブランドとの競争関係ではなく独立した強いポジションを持つ強力ブランドであると考えることができる。
つまり、ガンバ大阪は、ブランドマーク、ユニフォーム、ブランドイメージなどで違いを際だたせることでファンの強いロイヤルティを維持しているのに対し、ハーレーダビッドソンでは実際にそのバイクに乗ること、ハーレーイベントへの参加のような個々人のハーレー体験に対する共感の強さがロイヤルティの根源となっている。
博報堂は、最新の脳科学・認知科学・心理学・社会学などの理論や技術を活用して、生活者の本音に迫り、マーケティングに活用するため社内プロジェクト「ブレイン・ブリッジ・プログラム」の一環として、今回の実験調査を行った。これまでに強力なブランド以外で今回のような脳の活性化を検証した例はないことから、今回の実験結果は非常に有意義なものだとしている。
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