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ビデオストリーミング文化を牽引する“ミレニアル世代”/マネタイズに成功したパブリッシャーが実践する戦略とは?

 生活者の動画コンテンツ利用が一般化する中、その文化をマネタイズにつなげるべく、動画事業への参入を検討するパブリッシャーが増えてきている。だが、コンテンツの拡充や制作のステップ、コスト面など課題は多い。動画クラウドサービスの世界的なプロバイダーであるブライトコーブのセールス担当VPであるPaul Goetz氏に、海外の最新動向と日本市場で成功を掴むためのアドバイスを聞いた。(バックナンバーはこちら)

「ミレニアル世代」がビデオストリーミング文化の拡大を牽引

――近年、ビデオストリーミングによる動画コンテンツの利用が急速に広がり、今ではごく一般の生活者にとっても身近なものとなっています。まずは、この状況についてどのようにお考えか、お聞かせください。

Brightcove SVP Worldwide Field Operations Paul Goetz氏

Paul氏:ビデオストリーミングは局所的なものではなく、グローバルなトレンドであることが最も重要なポイントだと考えています。すでに成功を手にしているプレーヤーは、これを認識しているのがまず大きな特徴です。

 テキストや静止画だけでのコミュニケーションと違って、情緒にも訴えられる豊かな表現をもってストーリーを伝えられる映像の“ストーリーテリング”の力は、多くの人の心をつかむのも自然なことだと思います。映像に映し出されている人の表現を介せば、文脈をより捉えやすくなりますから。当然、デバイスの発展によって「いつでも」「どこでも」ビデオを利用できるようになったことも、この傾向の大きな後押しになっています。

 同時に、「ミレニアル世代」のユーザーが主役となって、ビデオストリーミングを一過性ではない潮流にしています。ミレニアル世代とは、主にアメリカで80年代から00年代初頭に生まれた、現在10~20代の若い層を指します。子供時代からデジタル機器やインターネットの世界に接し、SNSも当たり前に使いこなす世代です。

――いわゆる“デジタルネイティブ”だから、ビデオストリーミングのような新しいデジタル文化をすぐに受け入れている、ということですか?

Paul氏:それもありますが、より注目すべきは、彼らが真にグローバル化された世代だからという点でしょう。これまでは同じ世代の若者でも、アメリカやイギリス、あるいは日本と各国固有の文化やそのときどきの時代の影響がそれなりに色濃く反映されていました。それが、ここへきて地域文化的な影響よりもグローバルなデジタライゼーションと、SNSに代表されるような垣根のないコミュニケーションの広がりのほうが圧倒的になり、国境を越えた若者の均質化、共通化が見られています。これが、ビデオストリーミングの広がりと定着に大きくかかわっています。

――昨年、Brightcove CEOz Jeff Whatcott氏にお話を伺った際、特にライブストリーミングが注目だと聞きましたが、現時点での状況を教えていただけますか?(関連記事はこちら

Paul氏:ライブストリーミングは、今も引き続きホットなトピックです。例えば世界最大のオンラインポーカーゲーム「PokerStars.net」や、eスポーツ(対戦型ビデオゲーム/スポーツ競技としての電子ゲーム)を提供する「Azubu」では、ゲームの模様をライブストリーミングして広告収入によるマネタイズを促進しています。先日、Azubuの競合にあたるゲーム・ストリーミングの人気サイト「Twitch」をグーグルが買収するかと報道されたことからも、このテーマの注目度が伺えます。

フラグメンテーション化するオーディエンスを捉える

――では、ライブストリーミングのトレンドが継続する中で、パブリッシャー側はそれを勝機とするためには何をすべきでしょうか?

Paul氏:分散化、複雑化(fragmentation/フラグメンテーション)するオーディエンスをしっかり捉えることが、まず大切です。これまでは、自分たちのオーディエンスの特性を把握するのはさほど難しいことではありませんでした。それが今は、スマートフォンやゲーム機、スマートTVなどを使っていつでもどこでも好きな時間帯にコンテンツを楽しめるようになっています。デバイスと配信方法の多様化によって、さまざまなシーンに自社のオーディエンスが存在するようになっているのです。

 ですから、その人たちへのリーチを高めてマネタイズの最大化を図るなら、まずはその姿を正しく把握し、いつでもどこでもどのデバイスでも楽しめるようなコンテンツ提供を考えることが大事です。

マネタイズに成功したパブリッシャーが実践する戦略

――最近の傾向としては、10分以上の長いビデオコンテンツもよく視聴されるようになってきていると聞きました。これについてのビジネスチャンスをどう考えられていますか?

Paul氏:長尺コンテンツの視聴については、当社の配信システムを利用するユーザーの動向からも、確かにその傾向が現れています。これに対応し、マネタイズに成功しているパブリッシャーが実践していることを明かすと、「オーディエンスが求めているものを提供する」ということに尽きると思います。長尺が好まれるなら、それを用意して広告をロールの途中や後に入れたりできますし、サブスクリプションモデル(定額課金制)を取ることもできるでしょう。

 その好例として、アメリカでYouTube以上のネットトラフィックを占めている企業「ネットフリックス」を挙げたいと思います。彼らは元々展開しているオンラインDVDレンタル事業に加えて、ビデオストリーミング視聴も提供しています。比較的手ごろな月額制で、いつでもどこでも見られるという利便性をもってオーディエンスを増やしながら、月額制で見るのにお得感のあるプレミアム作品をシーズンごとに投入しています。

 「いつでも、どこでも、さまざまなデバイスでコンテンツを楽しみたい」という生活者のニーズを捉えて、その環境をいち早く整えてオーディエンスを獲得して収益を上げました。それからコンテンツの拡充など、さらなる付加価値の提供と収益化を図る工夫をして、より高いレベルの市場を開拓している点は学ぶところが大きいと思います。

――日本ではまだ、サブスクリプションモデル自体が広がっていませんが、日本のプレーヤーの状況はどのようにご覧になっていますか?

Paul氏:実例という点ではこれからかもしれませんが、日本企業でもこういったトレンドを十分認識してはいると思います。日本のブライトコーブでも、さまざまな日本のブランドやメディア企業からストリーミング配信を提供したいという相談を受けている状況です。私たちとしても、YouTubeをはじめとする動画サービスの広がりには注目しているので、日本市場へ向けた独自の商品開発への投資を行っています。

主導権を持っているのはオーディエンス

――日本でも、例えば放送局によるネット配信事業者の買収や、紙媒体ベースのメディア企業が動画コンテンツ事業へ参入するなど、いくつか目立った動きが出始めています。ただ、コストの面や、特に後者の例だとコンテンツ制作に課題があると聞きます。海外では、そうした課題をどう乗り越えているのでしょうか?

Paul氏:まずは、単純にカメラの価格を見ても、コンテンツ制作のコストはどんどん下がっています。自社内にスタジオを設けてコンテンツを内製するハードルも、以前よりずっと低いと思います。ただ、すべて内製することを勧めているわけではなく、内製と外部への発注、すでにあるコンテンツの調達をうまく組み合わせて、まずはコンテンツ数を増やすことを目指すといいと思います。実際に私たちのデータでも、ビデオ数が1,000本を越えてくると閲覧数も飛躍的に増加します。外部から動画のジャーナリストを採用したり、コンテンツに強い事業者とパートナーシップを組むのも有効でしょう。

 また、成功しているパブリッシャーは、オーディエンスが分散化していることを理解しています。当然、それぞれはニッチな市場になるのですが、無理に統合したりせずに、オーディエンスに選択権がある形で豊富なコンテンツを用意しています。

 それも、海外では例えばテレビなどからキラーコンテンツやスターをアレンジするのではなく、デジタルの世界で独自にスターを発掘したりすることに力を入れる傾向があります。先日ディズニーがYouTube向けの映像制作会社、メイカーズ・スタジオを買収しましたが、“YouTuber”と呼ばれるスターを発掘し契約するためだといわれています。(関連記事はこちら

――確かに、そのニュースは日本でも話題になりました。

Paul氏:この買収は大規模でしたが、小規模なパブリッシャーでも、自分たちのオーディエンスに合ったタレントを発掘してコンテンツ制作に活かす例が続々と出てきています。例えば世界的に人気を集めているカードゲーム「MAGIC The Gathering」において、カードを販売する事業者が、その世界で非常に強いプレーヤーを見つけてプロモーションビデオに出てもらったりしています。ニッチなオーディエンスの関心を活かしている好例です。

――なるほど。今後、日本でも新しいマネタイズの手段としての動画プラットフォームづくりが加速していくと思われます。オーディエンスのニーズからアプローチを考えると同時に、例えば今年だとサッカーのワールドカップのように、映像で視聴しうる世界的なイベントも、参入を後押ししそうですね。

Paul氏:確かにそうですね。今回のワールドカップでいうと、当社は数多くの企業と約1年半も前からストリーミング配信の準備を進めていました。ただ、そんな世界的なイベントであっても、やはり自社が接触できるオーディエンスの姿や変化を無視してはうまくいきません。主導権を持っているのはオーディエンスだとよく認識して、コンテンツの切り口や配信を検討することが重要だと思います。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2014/07/28 14:00 https://markezine.jp/article/detail/20364