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リアル店舗にあった“偶発的消費体験”をECで再現!台湾発のAIソリューション「nununi」とは

 コロナ禍で需要が急拡大している、Eコマース事業。Eコマースは欲しい品物にアクセスしやすい反面、商品との偶然の出会いや衝動買いといった「偶発的消費」を生みづらいという課題があった。こうした課題を解決し、Eコマース上でもリアル店舗のような“ワクワクする買い物体験”を再現するのが、台湾発のIT企業・awoo Japanが提供するAIソリューション「nununi(ヌヌニ)」だ。2021年3月2日に開催された「MarkeZine Day 2021 Spring」にて、同社事業開発責任者の吉澤和之氏がnununiの仕組みと効果について語った。

人工知能大国・台湾で生まれたnununiとは

 awoo Incは2015年に台湾で設立されたスタートアップ企業だ。同国ではSEO市場でシェアトップの企業として知られており、その後は高い技術力でソリューションの幅を広げ、メール配信ツールの提供やAI研究所の設立を経て、2020年夏に日本でも本格的に事業を開始。核となる商品は、今回のMarkeZine Day 2021 Springで紹介したリテール専門人工知能「nununi(ヌヌニ)」だ。

 awoo Japan 日本市場 事業開発責任者の吉澤和之氏は、nununiについて次のように説明する。

 「Eコマースでも、リアル店舗と同じ購買体験を実現する。それが、私の考えるnununiのビジョンです」(吉澤氏)

awoo Japan株式会社 執行役員 日本事業開発責任者 吉澤和之氏
awoo Japan株式会社 執行役員 日本事業開発責任者 吉澤和之氏

 リアル店舗と同じ購買体験とは何か。吉澤氏は、実店舗には「欲しい商品を効率的に買いたい」という体験と、「多くの選択肢から偶然『これだ』というものを発見する、そのワクワク/ドキドキする過程に価値を感じる」という2つの体験があるという。これを同社では、それぞれ「他律的消費」「偶発的消費」と呼んでいる。

リアル店舗における購買体験(当日の投影資料より。以下同)
リアル店舗における購買体験(当日の投影資料より。以下同)

 他律的消費は、EC店舗はもちろん、リアル店舗でも行われている店づくりで、端的にいえば、同じカテゴリーごとに商品を並べて、比較検討を容易にし、購買を促すというスタイルだ。これに対して偶発的消費とは、ひとことでいえば「衝動買い」のこと。購入者自身も予想していなかった商品との偶然の出会いや、そのワクワク感に大きな価値がある。

 「Eコマースが強いのは、効率的かつ利便性高く買い物ができる他律的消費です。私はEコマースの構造的な問題として、この他律的消費に偏りすぎていると感じています。たとえばファッションサイトで消費を購入する時には、『カテゴリー』『サイズ』『色』でフィルタリングしていく構造になっており、探しやすいのは確かですが、一方で偶発的消費のようなワクワク体験が欠けています」(吉澤氏)

 これに対しnununiは、AIによってEコマースでも偶発的消費=衝動買いを再現するソリューションだ。実は台湾はAIの研究開発で世界トップクラスとされており、2020年のデジタル競争力ランキングでも、世界11位に入っている(2019年は13位。日本は24位から2020年は27位に後退)。2021年にはさらにランキングを上げ、トップ10に入ることは確実視されている。

 そして政府も、新しいテクノロジーを持つスタートアップの創業を後押ししており、awooも市場からの資金調達によって、優秀なAI研究者、技術者を積極的に採用してきた。そのテクノロジーを生かし、Eコマースでも、リアル店舗と同じワクワク感をもたらす偶発的消費を実装するという。

 「コロナ禍において、小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は、いまや必要投資となっています。デジタル上でも、リアルと同じ購買体験を提供する、これこそ真の小売業のDXだと我々は考えています」(吉澤氏)

消費者の行動ではなく「商品理解」に焦点を

 では、AIでどのように“衝動買い”を再現するのか。この点について、吉澤氏はこれまでのパーソナライゼーションに基づくアプローチから、次のように説明する。

 「従来は、消費者行動を元にパーソナライズを展開していました。具体的には、どのページ、どんな商品を閲覧して、最終的に何を購入したかという『閲覧行動』と『購買行動』を基にターゲティングしていく、これが従来のマーケティングの考え方だったのです」(吉澤氏)

 このやり方は確かに重要だが、2021年現在では1つ大きな問題がある。その問題とは、消費者行動データの扱い方だ。

 2018年から欧州で施行されたEU一般データ保護規則(GDPR:General Data Protection Regulation)、米カリフォルニア州でも消費者プライバシー法案(California Consumer Privacy Act:CCPA)が成立し、個人のプライバシーに関するデータの扱いには、一定の規制がかけられるようになった。テクノロジー分野でも、Webブラウザの識別やセッション管理のために使われるCookieの規制が始まり、主要WebブラウザでCookieの提供を廃止していく流れが加速している。

 こうしたなかで、消費者行動だけを基にパーソナライズをしているのは、「逆にリスクになる」と吉澤氏はいう。

 そこでnununiが実装しているのは、消費者行動に基づく消費者理解だけでなく、商品そのものに目を向け、その特性を理解する「商品理解」という考え方だ。そして、それを実装するコアテクノロジーが、FLoC(Federated Learning of Cohorts)だという。

次のページ
「なぜその商品を買ったのか」という購買動機でグルーピング

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/17 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35730

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