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成果につながるリサーチ

無駄なリサーチをどう防ぐ?元P&G消費者市場戦略本部・米田氏に聞く、失敗知らずになる「すり合わせ」

 経営判断を行う時、マーケティング施策を企画する時、必須とも言えるのがリサーチ。一方で、「必要なリサーチが実施されていない」「何のために実施しているのかわからないリサーチがある」「リサーチ会社があるのに事業会社にリサーチ部門がある意味がわからない」など、リサーチを実施する側と活用する側の間でギャップが発生しがちという課題もある。こうしたハードルにリサーチ担当者や組織はどう立ち向かえば良いのか。あるいは「意味のあるリサーチ」が生まれるにはどのようなステップが必要なのか。P&Gリサーチ関連部門のリードを経験し、現在インサイト・ピークスの代表取締役社長である米田恵美子氏が語った。

P&Gで学んだ「事業会社のリサーチ部門の存在意義」

━━米田さんはリサーチ・分析からブランディング、マーケティングの専門家として2019年にインサイト・ピークスを設立されて以来、アサヒビールやアサヒ飲料、雪印メグミルク、サンスターなど大手企業のコンサルティング、マクロミル顧問など、様々な分野でリサーチやマーケティング業務を支援なさっています。どのような形でキャリアをスタートされたのでしょうか。

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株式会社インサイト・ピークス 代表取締役社長 米田恵美子氏

 元々はP&Gジャパン(P&G)のCMKという部署で仕事をしていました。この部署名はConsumer(消費者)、Market(市場)、Knowledge(ナレッジ)の頭文字を取ったもので、「消費者市場戦略本部」とも呼ばれていました。

 私がP&Gに入社した時はMRD(Market Research Department)という部署名だったのですが、会社が意図を持ってCMKという名称に変更したんです。その部門での仕事がリサーチに関するキャリアのスタートであり、現在の私を形作っています。

━━CMKとはどのような部門なのでしょう?

 旧名のMRDを直訳すると市場調査部となります。しかし「リサーチを実施する」ということで言えば、それを専門にするリサーチ会社がありますよね。では、何のために事業会社側にリサーチ部門が存在するのか。P&Gでは社内に存在すべき部を「リサーチを活用する部」と考え、CMKとして再定義したんです。

 リサーチをリサーチ会社に委託する時、どうしても「こういうリサーチをしてください」という依頼になりがちです。リサーチ会社としても、クライアントのビジネスの内情がわからないとビジネスに活用できるリサーチを提供するのは難しいので、結局言われた通りのリサーチを提供することに終始してしまう。リサーチを最大限ビジネスに活用できるよう、この「ビジネス課題」と「リサーチ」の乖離を埋める役割を担ったのがCMKでした。

 CMKは事業会社の社内に存在するので、ビジネス上の問題や課題をすべてわかっています。その上で「どんな情報があればこの局面を乗り越えることができるか」を考え、リサーチをデザインし、リサーチ会社と連携して最適なリサーチ・分析を提供していました。

 P&GにCMKという組織ができた時からこうした業務に携わり、最終的には日本のCMKのリーダーとしてP&Gジャパンのビジネス課題に向き合った経験が、私のキャリアを支えてくれていると思います。

「都合の良いデータ」か、「正しい判断をするためのデータ」か

 あと一つ、CMKのユニークな点があります。それはレポートラインが社長だったこと。社長直轄であり、研究開発やマーケティング部門から独立していたんです。

 それは客観性を持ち、高い視座で調査をするため。研究開発を進めていたり、大々的な新製品マーケティングを展開したいという思いがあったりすると、無意識のうちに「それに都合の良いデータが欲しい」と思ってしまいますし、リサーチ部門もその影響を受けてしまう可能性があります。そうではなく、「本当に正しい判断をしていくために客観的なデータが必要」と考えるのがP&Gの経営層でした

 たとえば、元P&Gで現アサヒビール社長の松山一雄さんもまさにそういう方ですね。「P&GでCMKが担ってくれていたような消費者理解の仕組み作りを手伝って欲しい」とお声がけいただき、アサヒビールさんとは5年以上ご一緒させていただいています。

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現在米田氏が代表取締役社長を務めるインサイト・ピークスの「事例一覧」より

━━そもそもの話ですが、リサーチは企業経営、事業推進においてどのような役割を担っているのでしょうか。

 難しく考え過ぎるとややこしくなるのですが、端的に言うと調べ物はすべてリサーチだと思います。わからないことや知らないことを調べること、これがリサーチです。

 相手は社長でも事業部長でも良いのですが、「これを調べて欲しい」と言われた時、「この人は何がわからないんだろう、何を知りたいんだろう」と考え、それを調べれば良いんです。自分の手が足りなければリサーチ会社さんにお願いしてもいいですし、インターネットにも情報はたくさんありますからそれで調べてもいいと思います。

━━本当はシンプルなんですね。

 これが難しく見えるのは「リサーチをしなければならない」という気持ちの中で、目的と手段が混在しているケースです。このケースを「水」の新製品を出す場合で考えてみましょうか。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/10/21 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47054

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