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事例&データで深掘り!Instagramマーケティングの現在地(AD)

縦型動画起点で効果的な反響を ――花王の事例に学ぶ、リール動画のクリエイティブ成功事例

 花王のヘアケアブランド「エッセンシャル」では、インフルエンサーを起用し、Instagramのリールに最適化した広告配信をしたところ高い効果を上げたという。そのプランニングを手がけたのが、SNSでの広告クリエイティブの最適化に力を入れる博報堂だ。同施策では、Instagramのサービス提供元であるMetaやインフルエンサーらとタッグを組み、特にターゲットであるZ世代から大きな反響を得られた。本記事では、施策の詳細について博報堂の横山昴氏、Metaの鈴木陽子氏に話を伺った。

ブランディングに活用されるInstagram

――今回は花王様のInstagramの取り組みで、どういった支援を行ったのかを伺っていきます。まず、お二人の業務内容について教えてください。

横山:博報堂のHAKUHODO DX_UNITEDに所属する横山昴です。複数のSNSを横断しながらフルファネルでプランニング&実行することを得意としており、ユーザーとクライアントとのより良い接点と体験を“手の中で”どう作るかに取り組んでいます。

 4年前の入社と同時にデジタルプラットフォームに特化した動画クリエイティブチーム「QuickMovie」を発足。花王様の取り組みでは、エッセンシャルなどの商品PRのためにInstagramのリールやストーリーズで「好き」を生み出すクリエイティブを開発しています。

鈴木:InstagramやFacebookを運営するMeta日本法人の鈴木陽子です。私はエージェンシーパートナーマネージャーとして広告代理店様のビジネスをサポートさせていただいております。

 特に博報堂DYグループの皆様と、新しい広告商品やソリューションの活用促進や、より多くのクライアント様にMetaのソリューションを活用していただけるように新しい取り組み事例・広告パッケージを作ることが私の主な役割になります。最近では、Instagramのリールへの広告配信やインフルエンサー、我々は「クリエイター」と呼んでおりますが、彼らとの共創に力を入れています。

――Instagramにおける最近の潮流を伺えますか。

鈴木:Instagramは元々写真投稿メディアとして始まっていますが、最近は動画をアップする人も増えています。特にストーリーズで気軽に動画を上げるというのが、ユーザーの中にも根付いてきました。また2020年にリリースしたリールは、縦型の短尺動画の投稿が非常に多くなっていて、Instagramユーザーは利用時間の20%以上をリールに費やしているほど、益々利用が伸びています。

Facebook Japan株式会社 Agency Partner Manager 鈴木陽子氏
Facebook Japan株式会社 Agency Partner Manager 鈴木陽子氏

横山:そうですよね。昨今、ユーザーがプラットフォームごとの違いや仕様の変化にすごく敏感になっています。リールを活用する「クリエイター」たちは投稿をしながら無意識にPDCAを回し「見られる」クリエイティブを即座にチューニング&ドロップしていますよね。

 UGCクリエイティブを楽しむ場という意味ではTikTokと似ていますが、TikTokは情報の受け取り方が「受動的」でフロー型です。視聴態度は旧来のマスメディアに近い感覚です。

 一方Instagramでは、企業やブランドを表現するアカウントが比較的多いですよね。ユーザーの使い方も能動的・積極的に好きなものを探し、ためていくストック型と言えます。同じ興味関心のコミュニティでつながるInstagramは、ブランドやプロダクトと強いエンゲージメントを作り出せることが強みだと解釈しています。

クリエイターを巻き込んだ、花王の先進的な取り組み

――花王様のエッセンシャルでは、どのような取り組みをされましたか。

横山:エッセンシャルflatというシリーズから2022年3月に発売された「くせ・うねり集中ケアマスク」というジャータイプのトリートメントの施策を行いました。髪のくせやうねりに悩む人に向けた商品で、ドライヤー乾燥の時から、くせ・うねりが伸ばせてまとまるというのが商品のコンセプトです。特にくせ毛は梅雨に顕在化しやすいため、時期に合わせてリールでの動画広告配信を実施しました。

 内容は、クリエイターに商品を使ってもらい、ノーアイロンでまとまるかどうかを試してもらうものです。実証する動画は近年一番はやっていて、受け入れられやすい手法だと言えます。エッセンシャルでも過去にそうしたトライをする動画を公開していましたが、今回はよりクリエイターの生の声によって実証したところが好評を得たのではないかと思います。

エッセンシャルflatのクリエイティブ

――Metaではどのようなサポートを行っていたのですか。

鈴木:クリエイターの方はInstagramには写真メインで投稿していて、あまりリールを使われたことがなかったので、リールで効果の出やすいクリエイティブ例をご紹介しました。それらを参考に実際のクリエイティブを作っていただきました。

横山:そうしたMetaからのサポートがあることによって、クリエイターにも広告の趣旨をしっかりと理解してもらいつつ、リールに適した動画を発信していけたと思います。インスタグラマーと呼ばれる人はいますけど、リールクリエイターというのは、またちょっと違ったタイプになりますので。

クリエイターと共創する効果とは

――なぜクリエイターと共に動画クリエイティブを作ることにしたのでしょうか。

横山:今リールでは、クリエイターを起用したUGCに近いクリエイティブが受け入れられやすく、コンバージョンも高く出ています。そういった状況を踏まえて設計しました。また商品のターゲットが、髪のくせうねり悩みを持つ方だったので、実際に同じような悩みを持つクリエイターの方にご協力いただきました。

 その結果、熱量の高い、リアリティのあるクリエイティブにできたと思います。フォロワーの方々も、リールの動画広告を見たらリポストや、いいね!など、より広げるアクションをしてくれる人が多かったです。ブランドとクリエイターとユーザーの新しいつながり方がInstagramで実現できたのではないかと思いました。

株式会社博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 横山昴氏
博報堂デジタルイニシアティブ プロセス&クリエイティブデザイン本部 クリエイティブ推進局 第一Quick Movie推進部マネージャー 兼
株式会社博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 横山昴氏

配信面に最適化したクリエイティブで高い効果を

――制作した動画広告をリールで配信した結果、どのような効果が出ましたか。

横山:SNSで一番重要な指標であるエンゲージメント率が、我々がこれまで手がけた全クライアントの平均と比べ1.5倍以上となるよい成果が得られました。動画再生時間も平均と比べ1.6倍の長さとなり、さらにストーリーズと比べたリールのCPMも23%コスト効率が良くとなりました。総じて、非常によい結果になったと言えます。

――今回の取り組みのポイントを教えてください。

横山:配信面を理解し適したクリエイティブにするよう、こだわったことだと思います。

 同じ縦型プラットフォームでもInstagramのリールは最初からブランド名を明らかにするのが、ユーザーに受け入れられやすいと実感しました。「手の中のOOH」的立ち位置なのがInstagram。冒頭から何の商品の広告かということをきちんと伝えておくことが彼らの能動的な情報取得方法に適しており素直に受け取ってもらいやすいのです。

鈴木:広告する商品をきちんと動画の冒頭で出すというのは、リールに限らずMetaのプラットフォームでは非常に重要なポイントです。最初の2秒までにしっかりとブランドを出すことによって、広告想起や購入意向が上がるということが調査からわかっています。花王様は、まさにそれを実践されていました。

縦型起点でクリエイティブを設計

――エッセンシャルでは、他にどういった取り組みを行いましたか。

横山:2022年9月にエッセンシャル ザ ビューティというシリーズから新発売された、「ウォータートリートメント」と「バリアトリートメント」という2つのトリートメントアイテムについても、Instagramを含むWeb広告の制作を手がけました。こちらもエッセンシャルflatと同様に、Instagramのリールやストーリーズでの配信を意識して、縦型に最適化した動画にしました。また、説明的ではなく直感的に商品を理解できるようなクリエイティブにしています。

エッセンシャル ザ ビューティのクリエイティブ

鈴木:Metaとしても何年も前から、「Instagramでは縦型動画を用意してください」とお伝えしてきましたが、企業様がプロモーションで取り組むにはなかなか難しいのが現状です。どうしても動画広告はテレビCMの流用やついでに撮影するという場合が多いので、横型動画が多くなります。しかし今回は、博報堂様より絵コンテの段階から縦型でご提案いただいたのも、効果が出た一因だと思います。それにしても、よく花王様は縦型動画の撮影を受け入れてくださいましたね。

横山:確かにそうですよね。SNSに特化し、プラットフォームや配信面ごとの特性を理解した上で最適なクリエイティブを制作することに専門的に取り組むのは、なかなか難しいです。ですがプランニング段階からSNS向けに特化しないとユーザーの芯は捉えられないと思っています。

 デジタルでは年々新しいものが出てきて潮流もめまぐるしく変化するので、チャレンジ精神を持って挑戦し続ける必要があります。花王様が、チャレンジングなことにも前向きに取り組んでくださる企業だからできたというのもあります。また提案の段階から、InstagramをはじめTikTokやTwitterなど各プラットフォームの特性とターゲットの向き合い方を、とことんハックし腹落ちをしてもらいました。その上で改めて縦型動画に注力したプランニングと、動画の構成まで作り分けをする必要性を伝え、絵コンテに落とし込んでいきました。

時代・媒体・インサイトに沿ったクリエイティブを

――今後の展望をお聞かせください。

横山:生活者に広告が嫌われていることが当たり前になっている一方で、多くの人が広告から情報を得ているという声もあります。今回のように、時代に合わせ、配信面のUIやUXも考慮し、ユーザーが受け取りやすい語り方にすることで、広告が再び“ラブレター”として機能するのではないかと思います。

 また、現在クライアントとプラットフォーマーとクリエイターと我々という4者がそれぞれの領域のプロとして意思決定を行う「分散型」の制作手法にも力を入れています。そこに参画してもらえるクリエイターもどんどん輩出していきたいと考えています。

鈴木:2016年にストーリーズをリリースした際に、「これはどうなの?」というお声もありましたが、今ではユーザーにも企業やブランドにも受け入れられ、広告配信面としてもたくさん使っていただいています。2020年にリリースしたリールも、今後そうやって活用していただけるようになっていくのではないかと思っています。

 博報堂様とは他にもいろいろな取り組みをしているので、ともに今回のような先進的な事例を作っていき、多くのクライアント様に役立てていただけたらと考えています。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/12/23 10:30 https://markezine.jp/article/detail/40674