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今知っておきたいマーケティング基礎知識

SDGsへの企業の取り組みを紹介!導入する理由や方法・事例を解説


 SDGsとは、2015年に国連サミットで採択された国際的な課題解決への目標群です。国内でもSDGsへの関心度は年々高まっており、SDGsへの取り組みが企業の評価や信頼性を左右する場面も格段に増えてきました。今回はSDGsの基本的な仕組みや導入方法を解説したうえで、企業がどのように取り組んでいるのかについて、具体例を踏まえながら解説します。

SDGsとは

 「SDGs」について正しく認識するためには、具体的な定義はもちろん、その他の概念との違いも踏まえて理解することが大切です。ここではまず、SDGsの基本的な意味と、CSRやESGとの違いについて解説します。

SDGsの定義

 SDGs(Sustainable Development Goals)とは、「持続可能な開発目標」という意味で、2015年9月に国連サミットにおいて採択された目標です。

 2030年までに「誰一人取り残さない」持続可能かつ「多様性」と「包摂性(特殊な事例さえも排除されないこと)」のある社会を実現するために、世界規模で取り組まれています。

 SDGsは貧困や教育、ジェンダー、環境・エネルギー、平和といった幅広いテーマに応じた17の国際目標に分かれており、さらにその下に169のターゲット、232の指標が決められています。

SDGsの17の国際目標
SDGsの17の国際目標

 これらの目標や指標は、先進国、発展途上国がともに課題の解決を目指し、世界全体で取り組める「普遍性」を持っているのが特徴です。

 また、すべてのステークホルダーが役割を持つ「参画型」の仕組みと、定期的にフォローアップする「透明性」を前提とすることで、社会・経済・環境への取り組みの「統合性」実現を目指しています。

CSRやESGとの違い

 「CSR(Corporate Social Responsibility)」とは、企業の社会的責任を意味する言葉です。消費者や投資家といった直接的なステークホルダーはもちろん、従業員や環境、そして広く社会まで含めて企業が負うべき責任のことを指します。

 企業は単に利潤を追求するだけでなく、社会への影響についても責任を持って行動すべきであるという考えに基づいて生まれた概念です。社会的責任を具体的に表現すると、消費者、投資家といった直接的なステークホルダーはもちろん、従業員、環境、そして広く社会まで含めて企業が負うべき責任のことです。

 一方「ESG」とは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」のそれぞれの頭文字をとった表現であり、投資家の目線から企業を評価する際の重要な基準です。

 CSRもESGも企業だけでなく社会や環境の持続性を向上させるという目的があるので、SDGsとは非常に強い結びつきを持っています。そのため基本的なイメージとしては、いずれも持続可能性を目指す概念である点に違いはありません。

 ただし、SDGsが国際社会を視点とした、より大きなビジョンで考えられるのに対し、CSRは企業からの視点、ESGは投資家からの視点というところに差異があります。

企業がSDGsに取り組む理由

 2015年にSDGsが採択されて以降、国内でも政府を中心にSDGsの実施に関する様々な取り組みが行われてきました。そうしたなかで、民間のレベルにも広く概念や目標が浸透していき、現在ではSDGsに取り組む企業が増えています。

 ここでは、SDGsへの取り組みを重視する企業がなぜ増えているのか、主な理由を3つの観点に分けて見ていきましょう。

ブランドイメージの向上

 SDGsへの積極的な取り組みは、企業が持つブランドイメージの向上につながります。2020年代に入って以来、SDGsに対する社会的な関心はますます高まりを見せており、個人レベルでも商品やサービスを選定する一つの基準になることさえあります。

 たとえば、同じ価格帯で同じような性能の製品が2つあれば、より環境への負荷が軽減されたもののほうが顧客の信頼を得やすくなるということです。

 このように、SDGsに取り組んでいることが顧客から選ばれる要因になったり、取引先の信頼を得るポイントになったりするケースは決して珍しくありません。

新商品や新サービスの開発につながる

 SDGsには世界規模の様々な課題が含まれているため、自社の風土や強みと結びつけることによって、それまで検討してこなかった新たなビジネスチャンスに気づくケースもあります。

 また、積極的な取り組みのなかで、これまでは接点のなかった行政や支援組織とのつながりが生まれることも少なくありません。それにより、新商品や新サービスの開発につながる可能性も十分にあります。

社員のモチベーションを高められる

 SDGsへの取り組みには、「自社と社会の結びつきを強く意識できる」という側面もあります。世界規模の大きな目標に対して、日々の業務や生み出す製品、取り扱うサービスが確かな貢献を果たしていると認識できれば、自社で働く社員自身にも前向きな意識が芽生えていきます。

 また、SDGsのなかにはジェンダー差別や不平等の解消、成長・雇用といった社員に直接関わりの深い項目もあります。SDGsが浸透する現代の社会においては、給与や勤務環境、福利厚生といった従来の基本的な待遇だけでなく、社会貢献の度合いや方法についても仕事のモチベーションにつながる重要なポイントになり得るのです。

 つまり、SDGsへの取り組みが、社員の定着率の向上や優秀な人材の確保にもつながるということです。

SDGsを企業において導入するステップ

 自社でSDGsへの取り組みをスタートするためには、いくつかの段階を踏みながら、丁寧に導入していくことが大切です。ここでは、4つのステップに分けて、具体的な導入のポイントを解説します。

メンバーの選定・知識の習得

 まずは、SDGs推進を担う中心メンバーを選定する必要があります。現場の社員はもちろん、経営層も含めたメンバーの選定を行い、対等かつスムーズに意見交換できるように意識することが大切です。

 なぜなら、SDGsに取り組むうえでは、会議での幅広い意見とともに「透明性」が重要となるためです。早い段階から開かれたやりとりを意識することで、幅広いステークホルダーを巻き込んだ取り組みが自然と行えるようになります。

 メンバーの選定ができたら、続いてSDGsに対する見識を深める段階に入ります。17の目標と169のターゲットを丁寧に読み解くとともに、他の企業がどのように取り組んでいるのか、具体的な事例を研究することも大切です。

 また、国際的な動向にも注目して情報収集を行い、広い視野で課題と向き合えるように準備することも重要となります。

課題や目標を設定する

 SDGsで定められている17の目標には、様々なテーマが包括されているため、すべての項目に対応しようとするのは現実的ではありません。課題や目標の設定は、あくまで自社の実情に合わせて行うことが大切です。

 自社の強みを活かせる目標を選んで、集中的に取り組んでいくことで、その企業ならではの持続可能性の追求が行えるのです。そのためには、当然ながらSDGsに対する深く多面的な理解が求められるため、準備の段階にしっかりと時間をかける必要があります。

自社のビジネスに落とし込む

 自社の課題を洗い出したら、より具体的な数字を通してビジネスに落とし込む必要があります。具体的な取り組みが行える段階まで課題を分析し、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)を設定して目標を定めましょう。

 明確な目標が設定できたら、この段階で社内・社外に公開するのも有効です。

取り組みに関する報告を行う

 SDGsへの取り組みは、社内のすべての組織や人員を巻き込み、全社的に進めることが大切です。なぜなら、立てた目標と企業活動の間で矛盾が生じると、課題解決ができないばかりか、かえってステークホルダーの信頼を損なってしまうリスクがあるためです。

 そのため、単に決めた社内目標を通達するだけではなく、目標に取り組む根拠や価値についても社員に浸透させる必要があります。また、活動開始後はこまめに現状把握をしながら、必要に応じて軌道修正も行わなければなりません。

 定期的に報告会などを行い、課題への取り組みや進捗状況をチェックする仕組みを設けるとよいでしょう。そのうえで、WEBサイトやSNSなどを通じて、社外に向けた情報発信を行うことも重要です。

 情報を届ける方法には、「自社サイトなどにビジョンを明記する」「商品やサービスに紐付けて伝える」「取り組みへの参画につながるキャンペーンを実施する」「認証ラベルを活用する」といった様々な選択肢があります。

 他社の事例研究を行う際は、情報発信がどのように行われているのかにも着目するとよいでしょう。

SDGsに取り組む企業の事例を紹介

 SDGsを自社でどのように実践していくかを検討するには、実際に成功した取り組みを行っている企業から学ぶことが大切です。ここでは、6社の事例を紹介します。

チェリオ

 飲料メーカーのチェリオコーポレーションでは、飲料事業を通じてLGBTQへの理解や多様な価値観を広める取り組みを実施し、社内外で変化を起こすことに成功しています。国内に約3万台ある自動販売機をメディアとして活用し、「のんでCHANGE!」というプロジェクトを実施しました。

 チェリオの飲料を販売した収益の一部を全国のLGBTQイベント実施団体への応援金として役立てています。自動販売機を利用するだけで活動の応援ができるという手軽さから、支援の輪が広がっています。

ゴールドウイン

 スポーツウェアやスポーツ用品を取り扱っているゴールドウインでは、同社が展開する一部ブランドのキッズ製品買い取りを実施し、買い取り品をリペアしたり、パーツを再利用したりして新たな製品を作る取り組みを行っています。

 子どもの成長によって着られなくなったキッズ製品を回収し、リペアして販売することによって廃棄を減らし、ファッションロス・ゼロを目指しているのが特徴です。

 リペアされた製品は、リセール事業のサステナブル・レーベル「GREEN BATON(グリーン・バトン)」で取り扱われています。

リアコネ

 リアコネは、余剰在庫品の廃棄問題をサステナブルに解消することを目指しているスタートアップ企業です。メーカーの余剰在庫品を購入するたびにポイントが貯まるサービスを実施しています。

 サービスの仕組みとしては、ユーザーが普段からよく利用する店舗でリアコネのサイト上で紹介されている各メーカーの余剰在庫品を購入し、スマートフォンで撮影したレシートをLINEで送信することでポイント還元を受けられるというものです。

 メーカーの廃棄ロスを削減しつつ、ユーザーにとってもメリットがある仕組みといえます。

 また、未出荷品をクローズドなBtoBマーケットで販売する「リアコネBOX」という法人向けのサービスも2022年3月から展開しています。コストダウンに有効で、SDGsにも貢献できるというメリットを提供している点が特徴です。

SHIBUYA109 lab.

 SHIBUYA109エンタテイメントが運営する「SHIBUYA109 lab.」では、マーケティング活動を行うためのデータを収集・分析するとともに、外部企業と連携することで様々な課題の解決につなげています。施設内でアンケートを定期的に実施しており、直接ヒアリングを行うことでリアルな声を収集し、Z世代の意見などを施策に反映させている点が特徴です。

 また、「SHIBUYA109 lab. EYEZ」という活動では、Z世代と一緒になって社会課題を考えていく取り組みを実施しています。メンバー間で認識を共有するだけでなく、同じ世代に向けてSNSなどを通じて情報発信を続けているのです。

無印良品

 無印良品では東日本大震災をきっかけとして、「いつものもしも」という活動を実施しています。普段の暮らしのなかで使っているものを防災時に使うことを勧める活動を展開したり、防災グッズを販売したりする取り組みです。

 「いつものもしも CARAVAN」という防災イベントを開催し、ファミリー層を中心に1日7,000人が来場するイベントとして成功させています。

ドール

 ドールは2021年9月に、廃棄バナナを削減するSDGs活動として「もったいないバナナ」プロジェクトを始動しました。流通過程において途中で廃棄されるバナナを「もったいないバナナ」と命名し、プロジェクトに賛同するバナナジューススタンドの店舗に提供する取り組みです。

 これまで廃棄するだけだったバナナをジュースにすることで、フードロス問題の解決に結びつけるだけでなく、購入者への啓蒙活動にもつなげています。2025年までにフルーツの廃棄ゼロを目指す取り組みを掲げており、継続的なプロジェクトを実施しているのが特徴です。

まとめ

 SDGsへの取り組みは、社会貢献という側面で重要であるのはもちろん、企業から見ればブランドイメージの向上や新規顧客の獲得にも影響のある分野です。企業活動において、SDGsへの理解を深めて実践する重要度は、ますます高まっているといえるでしょう。

 企業としてSDGsへの取り組みを開始する際は、しっかりとした準備を行い、自社ならではの内容や目標を設定することが肝心です。他社の事例もリサーチしながら、自社に合った方向性を見つけましょう。

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この記事の著者

マーケ研究所(マーケケンキュウジョ)

 マーケティングに関する情報を調べ、まとめて届けています。

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/22 03:09 https://markezine.jp/article/detail/40990

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