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エージェンシーに聞く、広告運用現場の改革最前線(AD)

使い手も驚くテクノロジーで54%の工数削減!電通デジタル×Shirofuneの業務改革の裏側

 デジタル広告予算が増加し、キャンペーンに起用する媒体についても拡大する中、運用にかかる労力は常にひっ迫している。そもそも社会全体が長時間労働の是正に取り組む現代において、品質とスピードを両立するためにはどのような方策が必要となるのだろうか。電通デジタルでは、広告運用自動化ツール「Shirofune」の導入により業務を大幅に削減。品質とスピードを両立する業務効率化に取り組んでいる。担当者に詳しい話を聞いた。

業務効率化は広告領域における急務

MarkeZine編集部(以下、MZ):初めに自己紹介をお願いします。

岩崎:電通デジタルでは、広告領域のプランナーとしてクライアント様に向き合ってきました。3年程前に異動があり、現在はワークデザイングループ、業務フローを整える部署でグループマネージャーをしています。

 効率的なフローの構築によって仕事を円滑化し、現場の業務時間を削減することが我々のミッションです。

岩崎氏
株式会社電通デジタル メディア&コミュニケーション領域 プラットフォーム部門 ビジネスプロセスマネジメント部 ワークデザイングループ グループマネージャー 岩崎真氏

菊池:Shirofuneの菊池です。業務内容の7割はアルゴリズムなどの開発に費やし、あとはセールスやその他業務まで幅広く行っています。今回お話しする電通デジタル様社内での「Shirofune」導入については、セールスとして提案やフォローをさせていただいています。

MZ:デジタル広告の予算が増加する中、電通デジタルではどのような課題を抱えているのでしょうか。

岩崎:当社では事業規模の拡大のため、急速に増員を進めております。ただ、増員だけだと不十分で、求められる業務量に対して、限られた時間内で対応しきれない、ということが起こり得るかなと思っています。未経験の場合、どんなにポテンシャルがあっても、数か月~半年程度の育成期間が必要ですし。

 また、業界の特性上、業務にスピード感が求められます。たとえば「すぐにレポートが欲しい」などのご要望にお応えする体制を用意するには、増員だけでなく、生産性向上もセットで進めないと限界があるな、という課題感があります。

MZ:スピード感と品質の両立によって、働く側の負担が増えている、ということでしょうか。

岩崎:そうですね。一方で、全社として残業時間の削減にはかなり本腰を入れています。労働時間の制限がある中で、目標数字も達成しなければならない。そうなると、必然的に業務を効率化するしかない、というのが現状です。

媒体の分散化でデジタルエージェンシーの負担が増えている

MZ:業務効率化を支援するShirifuneの立場から見て、企業はどのような課題を抱えているのでしょうか。

菊池:副業化など、働き方の幅が広がったこと、広告運用の自動化が進んだことで、かつての人海戦術による広告運用が成立しなくなっています。熟練した人材の確保も難しいため、個人技に頼るのではなく、業務フローを整えたり、品質基準を設けたりと、業務を標準化しなければばらない、と考える企業が増えた印象です。

菊池氏
株式会社Shirofune 代表取締役 菊池満長氏

菊池:また、GoogleとFacebookの二大広告プラットフォームにだけ注力すればいいという風潮が終わり、プラットフォームの分散化が進んでいます。今後もこの流れが加速することを考えると、広告業務の運用工数は益々増え、デジタルエージェンシーの負担増が予想されます。

MZ:電通デジタルでは、2021年11月に広告運用自動化ツール「Shirofune」をテスト導入、2022年からは本格的に活用されていると伺いました。どのような狙いがあったのでしょうか?

岩崎:我々のグループでは、各案件と一つずつ向き合い、担当者の抱える課題を解決するような業務を行っています。2021年の秋頃、ある案件のメンバーから「レポート業務に大変負荷がかかっている」という課題を聞きました。

 解決方法を考えているときにたまたまShirofuneさんと話す機会があり、テスト導入したのが始まりです。2~3ヵ月テスト運用した結果、現場の反応も良く手ごたえを感じたため、徐々に他案件にも波及させ、社内での横展開と本格的な導入に至りました。

データ統合やレポート作成の効率化で54%の業務削減を実現

MZ:改めて、Shirofuneの概要についてお教えください。

菊池:アルゴリズムをベースにした、広告の運用自動化プラットフォームです。

 広告運用において人がやらなければいけない作業、たとえばレポート作成や分析、予算や目標の管理、調整などを、自動で行うツールです。

Shirofuneができること
Shirofuneが支援する領域を示した図。配信設計と改善施策の検討に労力を割けられる状態を作る

MZ:従来の広告運用の業務工数が大きく変わるのはどのような部分でしょうか。

菊池:一つ目はデータの統合です。

 複数のプラットフォームを活用する場合、プラットフォーム毎にそれぞれの計測データが発生します。クライアントによっては、GoogleAnalyticsなどのプラットフォームを横断した3rdParty計測データや、さらに自社独自の計測データを持っており、すべてを統合して正しい成果を可視化し、施策の最適化に活用しようとすると、膨大な工数がかかります。

 そこで、プラットフォームの配信データと成果のデータを統合し、丸ごと見られるように自動でパラメータの設定状況を解析し、成果データと紐付けるアルゴリズムを開発しました

 二つ目は、統合したデータを活用して自動分析を行う「変化分析レポート」です。

 自動分析では、まず二期間の間に起きた変化を分析します。たとえば今月の成果が先月より悪かった場合、マイナスの貢献をした要因が媒体なのかキャンペーンなのか、可能性をドリルダウンしていき、影響度の判定を行います。

 次に、影響度の高かった要因を深掘りしていくことで、変化が起きたタイミングや変更点などを特定し、仮説を立てた上でレポートとして自動でアウトプットを行います

レポート例
【クリックすると拡大します】
変化分析レポートのイメージ。主要因分析を示すレポートには変化時期と推定要因の説明テキストが自動で記載される

菊池:従来であれば人が時間をかけて行っていた分析を自動化することで、大幅な工数削減が可能です。

MZ:電通デジタルでは、Shirofune導入によってどのような効果が得られたのでしょうか。

岩崎:Shirofuneでカバーできる、データ統合やレポート作業について、いくつかのテスト案件で検証した際に、Shirofuneでカバーできる業務に関して54%の工数を削減できた、という数字が得られています。

 使用した機能別で削減の度合いに振り幅はありますが、レポート作成においてはShirofuneのレポート生成機能を活用して62%削減、分析/考察では変化分析レポートを活用して41%削減。さらに運用オペレーションでも自動入札機能を活用し、45%削減しています。

工数・心理的負担の両面を削減

MZ:定性的にはどのようなメリットがありましたか。

岩崎: 大きなメリットとして、第三者への依頼を挟まず、担当者自身で業務を完結できることが挙げられます。たとえばアウトソースですと必然的に外注先とのやりとりが発生しますが、Shirofuneを活用することで依頼せずに担当者自身で対応できる案件も増えています。コミュニケーションコストを大幅に削減できるので、圧倒的にスピード感が上がります。

 特にダイレクト案件では、毎日レポーティングを求められるケースも多く、かつ外部データの突合業務も要求されるため、誰かに依頼しているとスピード感が追いつかないことがほとんどです。人がやると1~2営業日かかる作業を2分でできてしまうので、徒歩と新幹線くらいの差がありますね

 クライアント様から追加提案を求められるプレッシャーの中、分析にかける工数を削減してクライアント様への向き合いに注力できるのは、心理的な負担を軽減する効果もあると思います。

MZ:実際によく使用される機能や、使用感についてお教えください。

岩崎:API連携していない、マイナーなメディアでも連携可能な「メディアコネクター」は重宝しました。当社の案件では複数媒体をクライアント様にご提案させていただくケースも多く、一つでも非対応のメディアがあると手作業の業務が発生するため、ツールとして使いにくくなってしまいます。

菊池:電通デジタル様のような大手の会社ですと、その分クライアント様の規模も大きく、やりたいことも多い。広告プラットフォームは、小さなものも合わせると100個以上存在しているので、そのすべてを統合してマネジメントするようなニーズはより強いと感じました。

岩崎:使用感については、かゆいところに手が届くというか、実際に現場で使う人の目線で作られているな、という印象です。現場からUIに関する質問がほぼ来ないですね。

菊池:我々の場合、使う人間と開発する人間が一緒なので、普通のシステム開発とは違うかもしれません。使い手として使いにくいものは作らないという力学が働くので、たとえばユーザー側への説明や注釈が結構必要になってしまいそうな部分は、予め裏側のアルゴリズムを複雑かつ優れた状態にすることで、ユーザー側への説明を極力減らせるようにしたりしています。

副次的に得られたプランナー育成効果

岩崎:現場での反響が大きかった機能は「変化分析レポート」ですね。

 最初に変化分析レポートを見たメンバーはそのアウトプットの精度にかなり驚いていましたね。「ツールでここまでのことができるようになったのか……」というような反応が印象的でした。

 変化分析の意外な活用法として育成効果も得られています。経験の浅いプランナーが自身の分析と変化分析レポートを比較して、仮説の答え合わせに使用しているケースがありました。

レポート例2
【クリックすると拡大します】
変化分析レポートのイメージ。変化箇所を示すと同時に推定要因の説明テキスト(下部の囲み内)が自動で記載される

菊池:想定していなかった副次効果ですね。元々、人が手をかける作業を軽減し、かつ品質も上げることを目標に作ったため、仮説のチェックや育成ツールとしての利用は、なるほど、という感じです。

岩崎:もう一つ、2022年の9月頃から使い始めた機能として「自動入札機能」が挙げられます。まだ実績は少ないですが、広告運用のパフォーマンスを落とすことなく45%ほどの業務削減を実現できています。

菊池:自動入札機能は、予算管理と入札が一体化した機能です。

 たとえば、今月1,000万円の予算で成果を最大化する場合、毎日の予算のバランスを自動で調整したり、より成果の高い媒体に切り替えたり、自動で最適化しながら運用していきます。最終的にその月が終わったタイミングで予算を使い切り、クライアントが伸ばしたい指標を最大化するのが基本的な機能です。

 ただし、クライアントの要望には二種類あります。一定額の予算で最大の成果を取って欲しいパターンと、決められた成果の範囲、たとえばCPA10,000円を超えなければいくらでも使っていいし、超えるなら使わないで欲しい、というパターンです。

 当初、後者のパターンでは手動で少し調整が必要、という要望があったため、現在は設定した成果の通りに調整しながら運用できるような機能も追加しています。

 これによって、GoogleAnalyticsやその他独自の計測指標に対して、CPAやROASに上限を設けて自動運用することも可能になっており、他の方法では自動化できない業務が自動化できるようになっています。

自動入札機能の設定画面
【クリックすると拡大します】
自動入札機能の上限獲得単価/下限ROAS 設定画面

岩崎:管理画面での予算管理に時間がかかりがちな案件、予算変更が多かったり、入札調整の作業が頻繁にあったりする案件とは、特に相性がいいですね。

広告業界のベーシックインフラを目指す

MZ:今後の展望についてお聞かせください。

岩崎: クライアント支援を考える上で、今後、機械に任せられる部分はどんどん自動化すべきである、というのが大前提です。自動化を進められるツールは積極的に使っていきたいなと。その一つの例がShirofuneの活用だと思っています。

菊池:どんどん新しい機能を作り、その活用法を一緒に探っていきたいなと考えています。新しい機能について必ずしも私が開発に関わっているわけではありませんが、一つはもうすぐβ版としての提供を予定している、入稿系の機能です。

 クリエィティブやキーワードの構成を変えるのは、現時点では皆さんがそれぞれの媒体で行っていると思いますが、Shirofuneが総合管理することで編集作業を簡略化し、今までタッチできていなかった部分の工数を削減していけたらいいなと。

 もう一つは、クリエィティブのPDCAです。ターゲティングや配信の調整などは、AIによる自動化がかなり進みまして、広告の運用者は次の段階としてクリエィティブのPDCAをどう回していくかに注力していると思います。現時点ではクリエィティブに関して提供できているベネフィットが少ないため、拡充していく予定です。

 最終的に、ベーシックな業務についてはすべてShirofuneが提供でき、広告業のインフラとしてさらに多くの日々の業務で活用いただけるようにしたいと思っています。業務負担の軽減を当たり前にした上で、電通デジタル様や他代理店様のオリジナリティを載せていただくような世界観を目指したいですね。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/20 10:00 https://markezine.jp/article/detail/41105