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MarkeZine Day 2023 Autumn

ニーズの奥に潜む「欲望」を捉えマーケティングを進化させる、電通流「欲望マーケティング」

11の欲望グループから見えてくるインサイト

 根源的欲求が価値観と出合い、掛け合わさることで11の欲望グループが生まれた。

 たとえば、3つ目の「健康&平穏・心身平常運転の欲望」では、安全(健康)と適合(平穏)という異なる欲求が共存する欲求因子が抽出された。重回帰分析による価値観の考察を行うと極端なプラスな状態、つまりものすごく健康になりたいわけでもなく、病気など極端なマイナスの状態を避けたい、つまりプラスマイナスゼロの状態を望んでいることが見えてきた。

 そこで、この欲望は「ストレスが多い日常では、心も身体も上機嫌な状態を維持するのはなかなか難しい。だからこそ、心身にも問題がない状態は十分に上出来」という形で整理したという。

 11の欲望の発見は、難しいとされてきた心の攻略にあたって5合目からのスタートを可能にできることが強みだと高見氏はいう。インサイト発見プロセスのショートカットになることはもちろん、5合目という高い位置から見ることでその景色の広がりから、これまで気づけなかったものが見えてくる可能性も高まる。講演では具体的な例として、まったく異なる商品を購入した2名のケースが紹介された。

 このケースはAさんがスマートウォッチを買い、Bさんはオーディオコンポを買った際の話だ。行動データ(購買データ)を見ると、Aさんは健康意識が高い人、Bさんはオーディオマニアとそれぞれ異なる層に分類されることになる。しかし、「欲望」観点で見ると「2自由&安楽 無理のない自由への欲望」と「3健康&平穏 心身平常運転の欲望」という2つの欲望が共通していることがわかった。

 「さらに深掘りすると、Aさんは若く健康な体を求めており、Bさんは若い頃の心を取り戻したい思いがあることが明らかになりました。つまり、AさんBさんも『若さ』を求めている点では共通の層であることが発見でき、視野が広がります。これが『欲望』視点を持たず、商品単体で考察をしていった場合、この発見にたどり着くには非常に時間がかかるでしょう」(高見氏)

心が動くと消費が連鎖する

 人々の消費活動は単一の商品だけを延々と購入しているわけではない。様々なジャンルの様々な商品を購入する複合形態である。つまり単一商品の消費行動に目を向けるだけでは消費の全体像はつかめない。

 「私たちが行った調査では、心が動いた消費体験をした人のうち63%が単発の消費で終わらず、消費の連鎖、好循環が起こる傾向があることもわかってきました。中でも注目すべきは派生消費で、ジャンルや関連性を問わず次に買いたい気持ちが起こり消費につながったグループで、これが22.2%います」(高見氏)

 具体例として70代女性が靴のかかとを修理に出したケースを高見氏は紹介する。

 靴を修理屋に持っていった所、つま先の部分がこすれて色がはげていることもわかった。彼女は店員の勧めに応じて、つま先の修理も依頼した。修理後、新品のようになった我が靴に感動した彼女は、つま先の修理の提案に対して店舗に対してお礼を伝えた。

 話はこれで終わらない。実は、コロナで外出を控えていた彼女は、気持ちが内側に向いていた。コロナが収束し、さらに、靴がきれいになったことで出掛けることにためらいがなくなり、気持ちよく友だちと天ぷら料理を食べに出掛けたという。

 このエピソードからは次の3つのことが見えてくると高見氏は解説する。

  1. 自分の予想を上回るサービスを受けられた時の感動
  2. 納得しながらのコロナ自粛ではあったが、それを解放するきっかけが生まれた
  3. 自分の予想や考えの枠を飛び出して、楽しいことを体験してみたいという派生消費の喚起

 「まさに、フランスの諺にある“素敵な靴は、あなたを素敵な場所へと連れて行ってくれる”を体現したようなケースではないでしょうか。一つの消費が次の消費につながっていく。欲望をキャッチすることで、商品開発に反映したり、ターゲットへのアプローチに応用したりできると考えます」(高見氏)

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欲望を用いた広告配信のチャレンジ

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この記事の著者

中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)

 株式会社エヌプラス代表取締役 デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/43593

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