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広告費用換算で約1億円の成果!
サッポロビールのFacebook活用事例

 Facebookページの効果の最適化に企業のマーケティング担当者の関心が集まっている。サッポロビール 営業本部 サッポロブランド戦略部 宣伝室 森勇一氏と、同社の分析をサポートするユーザーローカル コーポレートセールス ディレクター 渡邊和行氏による講演「サッポロビールのエンゲージメントを高めるソーシャル分析手法」では、同社のFacebookの運用体制や緻密な施策の積み上げが明かされた。

重視すべきはファン数より「エンゲージメント率」

サッポロビール株式会社 営業本部 サッポロブランド戦略部 宣伝室 森勇一氏(左)
株式会社ユーザーローカル コーポレートセールス ディレクター 渡邊和行氏(右)

 今や多くの企業が公式アカウントを開設しているFacebook。維持費がかからず、「いいね!」数やコメント数で簡単にユーザーの関心度合いを測ることができることなどから、開始する障壁は低いといえるだろう。しかし、企業が伝えたいことだけを投稿しても興味を持ち続けてもらうことは難しく、ユーザーのニュースフィードに表示されて邪魔だと判断されてしまえば離脱されることも多い。

 ファンをいくら増やしても、個人のニュースフィードに企業の投稿が表示されているのは一部のユーザーのみ。「エンゲージメント率を高めないと、メッセージは伝わりません」と、アクセス解析ツールのUser Insight(ユーザーインサイト)やソーシャルメディア解析ツールのSocial Insight(ソーシャルインサイト)などを手がけるユーザーローカルのコーポレートセールス ディレクター 渡邊和行氏は話す。

 Facebookの運用担当者にも意外と注視されていないのが現状だが、エンゲージメント率とは、1件あたりの投稿の反応率(「いいね!」が押された割合+コメントされた割合)。「実際にFacebook本社は、『いいね!』を押してくれたファン数よりもエンゲージメント率を重視することを提案していますし、当社も同じ考えです」。

ロイヤルティが高いユーザーに注目することもポイント

 では、一般的なエンゲージメント率とはどのくらいなのだろうか? Facebookに関するさまざまな情報を提供するメディア「facenavi」調査によると、ファン数が500~999のアカウントで1.55%、5,000~9,999のアカウントで0.99%、50,000~99,999のアカウントで0.34%(参照)。ファン数が増えれば、それだけライトユーザーが多く熱心なユーザーの割合が相対的に減り、エンゲージメント率は低下する傾向にある。

 一方で、エンゲージメント率は前述のように投稿ごとの反応率なので、どちらかというと長期的なファン育成を目的とするソーシャルメディアマーケティングの場合、「蓄積していく感がなく、スポット的に見えてしまうかもしれない」と渡邊氏は話す。

 また、エンゲージメント率が同じでも、企業に高い親近感を持つ人ばかりが反応している場合とそうでない場合なら、前者の方が企業にとっては価値をもたらす投稿だと捉えることもできる。「エンゲージメント率と同様に、例えばキャンペーン参加数や製品に関する発言数が多い、ロイヤルティの高いファンがどの程度いるのかを把握することも、Facebook運用では重要なポイントになると考えています」(渡邊氏)。

エンゲージメント率、ロイヤルユーザー率ともに高いサッポロビール

 そこで、ロイヤルティの高さを測る指標としてSocial Insightを用いて分析できる手法が複数回反応しているファンの割合だ。ユーザーローカルではこれをロイヤルユーザー比率と定義している。「例えば月平均で2回以上リアクション(「いいね!」またはコメント)を取ったユーザーの割合や、リアクションの回数が多いユーザーを把握することで、自社のロイヤルユーザーがどう推移しているのかを追うことができます」(渡邊氏)。

 だが、前述のエンゲージメント率と同様に、ロイヤルユーザーの比率もファン数が多ければ多いほど低くなる。ファンの層が広がるほど、関与度の高いユーザーばかりではなくなるのが現実だ。

 そんな中、昨年12月末時点で8万人以上のファンを擁していたサッポロビールのエンゲージメント率は、前述のようにファン数が50,000~99,999のアカウントの平均が0.34%のところ、5.81%と非常に高い。

 また、今年1月中に2回以上反応したロイヤルユーザーの比率は6.7%となり、こちらも平均を大幅に上回っている。ユーザーローカル調査による主要ブランドのロイヤルユーザー比率では、ファン数が1万以下なら10%を超えるケースもあるが、3万以上になるとほとんどが2%以下。それと比較すると、サッポロビールのFacebook運用がいかに好調かがわかるだろう。その秘訣は、戦略的な施策の積み重ねと、緻密な分析にありそうだ。

25~35歳の若年ビジネスマンとの接触を増やしたい

 サッポロビールのFacebookは、2011年8月に開設。いくつかの施策によって段階的にファン数が伸び、現在では8万6千を超えている。同社営業本部 サッポロブランド戦略部 宣伝室の森勇一氏は、Facebook運用の目的について次のように話す。

サッポロビール公式Facebookページ

 「まずは、当社のファンとコミュニケーションを図り、絆を深めること。自社サイトへの流入増も狙っています。それから、ソーシャルメディアマネジメントのノウハウを蓄積すること。加えて、もしも自社のサーバーにアクシデントがあった場合の代わりの窓口になれば、とも考えています」。

 マネジメントノウハウの蓄積のために、運営体制は宣伝室が担当し、危機管理室とお客様センター、CSR部門と連携している。運用を代理店に任せず内部で行っているのは、「投稿内容のリアリティや、ファンの嗜好性を分かっているかどうかは、ユーザーにはすぐに分かってしまうから」(森氏)という理由もある。

 ターゲットは、普段からサッポロ製品を愛飲している人を中心に据えており、中でもFacebook全体のユーザー傾向とも合致する25~34歳の若年ビジネスマンを注視しているという。「現在のファン構成比は25~34歳が28%、35~44歳が39%、45~55歳が22%です。当社が以前から運営しているWeb会員だと、25~34歳の割合は18%なので、それに比べればFacebookの方が若年層にリーチしています。今後も引き続きこの層を引き上げたいと考えています」と森氏は話す。

投稿記事が広告になる「ページポストアド」の考え方

 ファン数の推移は、その時期に注力していた施策と見事に対応しており、同社が長期的な視点で、かつ戦略的にユーザーとのつながりを構築してきたことがよく分かる。例えば開設から約4か月は、Facebook内の企業Web担当者が集まるグループにサッポロビールのFacebookページが開設したことを紹介。初期段階で数千人のいいね!を集めることに成功した。

 ファン数1万人を突破した2011年12月からの約半年は“投稿研究”時期とした。「どのような投稿だとファンが反応するかを注意深く見ていきました。テキストの量、写真の有無、また同じ写真でも宣伝用のものがいいのか、それとも我々がちょっとした瞬間を撮ったような素人写真がいいのかなどの試行錯誤を重ね、データを蓄積していきました」と森氏は振り返る。

 「投稿研究に徹した時期があったから、高いエンゲージメント率やロイヤルユーザー率を誇る現在の状況があると思う」と渡邊氏。当然、その時期は大幅なファン数の増加はなかったが、焦らずにじっくりと研究したからこそ、今に活かせるノウハウが蓄積できたといえる。

 その後、企業コンテンツの拡散ツールや一般モニターを募れる「モニプラ」、また投稿した記事をFacebook内広告として出稿する「ページポストアド(PPA)」を段階的に採用し、ファン数を拡大。とりわけPPAの効果が高く、約5週間の出稿で4万から8万まで伸張した。

 短期で切り上げたのは、「投稿記事が表示されるだけに、鮮度の点から限界だったのがひとつ。加えて、毎週のインプレッションと獲得単価を割り出し、単価が高くなってきたタイミングも見逃さないようにしました」と森氏。

ビジネスインパクトを数値で表す努力を

 本講演にあたり、渡邊氏は森氏に「ソーシャルメディア運用のゴール」をたずねたという。森氏はそれに対し、「最終的には売上に貢献すること。ただ、当社にはECサイトもありませんし、厳密にそれを測ることはできません。そのため現実的な目標としては、そのメディアの価値を上げることを見据えています」と答える。

 例えば同社ではFacebookのメディア価値を測る指標として、広告費用換算を行っている。「仮に去年の9~11月の3か月間だと、Facebookでのクリック数198,348に、ウェブ広告の『プレミアムアド』の平均CPC500円をかけると約99,174,000円。このくらいの広告費に相当する宣伝効果は見込めるのではないかと、パフォーマンスの指標として捉えています」(森氏)。

具体的な数字もセッションでは公開され、熱心に耳を傾ける参加者も目立った
具体的な数字もセッションでは公開され、熱心に耳を傾ける参加者も目立った

 渡邊氏はこれについて、「マス広告を展開している企業の広告費を考えると数%かもしれないが、多くのWeb担当者が数字で説明することを求められている状況では、このような考え方でビジネスインパクトを表すのも重要だ」と解説する。

 最後に森氏は、自身が実感している運用のポイントとして「実施した施策を社内外へ発信すること、自分がユーザーになって体験すること、そして古い常識に捉われずチャレンジを続けること」の3点を挙げ、講演を締め括った。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/04/18 12:29 https://markezine.jp/article/detail/17418