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第106号(2024年10月号)
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統括編集長インタビュー

「ブランドは企業がつくるものではなく、消費者の中に生まれるもの」 無添加石けんの“真の価値”を伝えるマーケティング施策


 「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念のもと、約40年もの間、無添加石けんをつくり続けている「シャボン玉石けん」。最近でこそ一般的になった無添加石けんだが、環境問題への意識が低かった高度成長期には、その価値を伝えるのも一苦労だったという。最近ではヨガを愛する「ヨギー」をターゲットにしたプロモーションを行うなど、常に「攻め」のマーケティング戦略を行う松永康志部長に、そのポリシーとマーケティングに対する思いを伺った。

外資系メーカーから一転、マーケティング部のない地方メーカーへ

 ── 販売開始から40年になるシャボン玉石けんですが、ヤフードームに手洗い石けんを置いたり、洗面ガラスに広告を展開するなど、マーケティング施策には「攻め」の姿勢が感じられます。

 ありがとうございます。シャボン玉石けんは、福岡県北九州市にある無添加石けんのメーカーです。最近でこそ一般的になった「無添加石けん」ですが、我が社で販売を開始したのは40年も前のこと。私が入社したのは09年末ですが、約40年間、世相に合わせたマーケティングを行ってきたと聞いています。

 ── 松永さんは、外資系メーカーでマーケティングを担当されていたと伺いました。なぜいま、地方メーカーであるシャボン玉石けんを選んだのですか。

シャボン玉石けん株式会社 マーケティング部 部長 兼 通信販売部 部長 松永康志氏
シャボン玉石けん株式会社 
マーケティング部 部長 兼 通信販売部部長 
松永康志氏

 私は福岡県出身です。今後の家族の生活拠点も考慮しつつ、いつかは福岡に戻りたいと思っていました。また、複数社でキャリアを積み、心から人に勧められる商材を扱う楽しさや喜びを経験する中で、自分はマーケティング職が好きということを実感していました。そのため、マーケターとして仕事を続けたいと思っていました。

 実家に帰省した際に、妻と娘と一緒にシャボン玉石けんの工場を見学させてもらったのですが、突然のアポにも関わらず、快く受け入れてもらいました。その時はシャボン玉石けんで自分が働くとは全く想像すらしていませんでしたが、「健康な体ときれいな水を守る」という企業理念と、実際の商品がしっかりつながっている点が非常に心に残りました。その2年後ぐらいにシャボン玉石けんに入社することになります。

 ── 松永さんから「入社したい」とアプローチしたのですか。

 そうです。約10年間、外資系メーカーでマーケティングを担当していましたから、その経験を使って頂きたい、と。履歴書に手紙を添えて送ったのですが、その後、当時のシャボン玉石けんにはマーケティング部がなかったことが分かりました(笑)。

 ── ほほう…。でも、やりがいを感じられたのですか。

 シャボン玉石けんって、知名度は9割近くもあるんです。でも他の石鹸よりも高いから、実際に利用している人は当時数%に過ぎませんでした。つまり商品の魅力が伝わりきれていないのです。にも関わらず、伝えるコンテンツは豊富にありました。「シャボン玉粉石けん」を発売したのは75年。高度経済成長期の始まりで、合成洗剤全盛期だった頃です。92年までの17年間は赤字続きで、100人いた社員は5人にまで減ったというエピソードもあります。商品の魅力を伝えるためのストーリーがあることは、マーケティング上の大きな強みだと思いました。何より、自分自身がシャボン玉石けんの商品を世に広げたいと強く思えた点が大きかったです。

 ── 「青いお空がほしいのね~♪」というCMは有名ですね。

 ありがとうございます。私が入社する前は、宣伝費の多くをCMに投じていたのですが、いまはその比率を減らしています。シャボン玉石けんの魅力は、15秒では伝わりづらいからです。テレビCMの比率を下げ、新聞や雑誌、Webやイベントなど、コンテンツをじっくりと伝えられる媒体に予算を投じました。また過去には、前会長が自ら執筆した『自然流「せっけん」読本』という書籍も出版するなど、コンテンツの質によって媒体や伝え方を変えています。

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この記事の著者

押久保 剛(編集部)(オシクボ タケシ)

メディア編集部門 執行役員 / 統括編集長立教大学社会学部社会学科を卒業後、2002年に翔泳社へ入社。広告営業、書籍編集・制作を経て、2006年スタートの『MarkeZine(マーケジン)』立ち上げに参画。2011年4月にMarkeZineの3代目編集長、2019年4月よりメディア部門 メディア編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

齋藤 麻紀子(サイトウ マキコ)

フリーランスライター・エディター74年生まれ、福岡県出身、早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。 コンサルティング会社にて企業再建に従事したのち、独立。ビジネス誌や週刊誌等を通じて、新たなビジネストレンドや働き方を発信すると同時に、企業の情報発信支援等も行う。震災後は東北で起こるイノベーションにも注目、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2013/06/20 13:57 https://markezine.jp/article/detail/17753

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