米マルケトは自社主催のイベント「The Marketing Nation Summit 2017」を開催中だ。同社はマーケティングプラットフォームを提供する会社として2006年に創業。2014年には日本法人も設立し、日本市場でのビジネスも拡大させている。今回のイベントには、世界中から約6,500名のマーケティング関係者が参加し、そのうちCMOは500名にのぼった。年々参加者数を伸ばしている中、今年は来場者の68%が初めての参加者となり、新しい試みとしても米広告業界最大級のイベントであるAdweekとのコラボレーションを実現している。
展示コーナーへの出展社数も増加。プレディクティブ・アナリティクス、ABM(アカウントベースドマーケティング)などのサービスを提供するサードパーティーベンダーが数多く出展しており、日本からも多数のパートナーやユーザー企業がイベントへ参加している。
オープンニングのキーノートを務めたのは、2016年11月1日から新CEOに就任したスティーブ・ルーカス氏。今回がCEOとして初めての登壇となった。
冒頭、ルーカス氏これまでのマーケティングの歴史を振り返りつつ、デジタルの浸透を背景にマスからパーソナライズへとマーケティング環境自体が急速なスピードで変化をしていると強調。「何十億人が一つのネットワークでつながる時代を誰が予想したでしょうか。これまでは数世紀かかって起きていた変化と同程度の変化が数年単位で起こっている状況です。テクノロジーが驚くべきスピードでマーケティングのルール変更を加速させる中、企業は変革が求められています」
一方でルーカス氏は、こうしたテクノロジーが急速に人々の生活に浸透する状況に対して警鐘も鳴らした。「テクノロジーの浸透は人々に様々な恩恵をもたらしている一方で、人と人との関係性を希薄にしている面もあるのではないでしょうか。デジタル上での行動はデータ取得と表裏一体の関係ですが、人を数字としてのみ扱うのではなく、人を人として捉え、向き合い、関係性を構築することが重要になっています」
消費者は朝起きればスマートフォンを触り、ソーシャルメディアに囲まれ、毎日大量の情報と日々接触している。こうした大量の情報にさらされる中で、企業が消費者に自分たちの商品を認知してもらうことは困難になっている。その打開策として大量の広告を投下したとしても、消費者側からすればノイズにしかならず、結果的にブランドを毀損する事態につながってしまう恐れがある。
情報過多の中で企業が取るべき戦略は的確に消費者とエンゲージし、長期的な関係を構築していくことだとルーカス氏は主張。このように長期的な視点で顧客とより良い関係を構築していくことが、企業に求められている状況を「エンゲージメントエコノミー」とルーカス氏は表現した。「エンゲージメントは流行り言葉ではありません。これこそがマーケティングの新しいスタンダードです。エンゲージメントエコノミーでの戦いは既に始まっているのです」
では、エンゲージメントに基づいたマーケティングを実行するためにはどうすればよいのだろうか。ルーカス氏は「Listen(傾聴する)」[Learn(学習する)」「Inspire(影響を与える)」という三つのポイントを挙げた。
「まずは、顧客の声に耳を傾けることが大切です。すべてのチャネルにおいて、きちんと顧客の声に耳を傾けましょう。次に学習をしていきましょう。顧客が何を望んているのか、学習し改善を続けることで顧客は企業を信頼し、より良いエンゲージメントにつながります。最後に顧客に対して刺激的なアプローチをしましょう。今それができていないとすれば大きな改善の余地があり、それはビジネスを拡大できるチャンスとも言えます」とし、パワフルなプレゼンテーションの最後をルーカス氏は次の言葉で締めくくった。
「エンゲージメントエコノミーで勝利をするためには、顧客を中心に据えすべてのチャネル、すべてのプロセスにおいてより良い体験を顧客へ提供していくことが必要です。その実現をマルケトが支援していきます」
キーノートの後は、ゲストにCMOを招いたパネルディスカッションが行われた。パネラーとして登壇したのは、ソーシャルメディア管理システムのHootsuite、図面作成 (CAD) ソフトウェアを開発するAutodesk、グローバルでレストランやナイトクラブなどの事業を展開するHakkasan、Amazon Web Servicesといった企業でバイス・プレジデントやCMOを務めるエグゼクティブたちだ。
マルケトを導入しビジネスを拡大させている彼らも、エンゲージメントエコノミーの時代になり顧客とより良い関係を構築することの必要性を強調。ルーカス氏が挙げた「Listen」[Learn」「Inspire」というエンゲージメントを向上させるための三つのポイントにも触れ、顧客にユニークで特別な体験を提供し続けることが、エンゲージエコノミーで勝つための法則だとした。
また、エンゲージメントエコノミーで勝つためには、マーケティング部門だけではなく、セールスやカスタマーサポートの部隊などと連携し、全チャネルでより良い体験を提供する意識を持つことが大切と語られた。エンゲージメントの評価については企業によって様々だが、数字だけを追うことだけがすべてではないとし、様々な軸で評価する視点を持つことが必要だとした。
【関連記事】
・マルケト、電通デジタルなど10社以上のパートナーと協業 「Marketo ABM」を本格提供へ
・マルケト、Marketo ABMの提供開始を発表~営業とマーケティング部門の密接な連携可能に
・マルケト、ユーザーコミュニティの活性化と国際的な交流促進を目指した新取り組みをスタート
・マルケト、パートナー企業の支援施策を強化~専門施策の日本向けプログラム強化を実施
・マルケト、未来のマーケターを支援する社会貢献プログラムを発表