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AJA×Momentumが語る、 広告主とメディアが行うべきアドベリフィケーション問題への対策とは

 昨今、広告枠における透明性や自社ブランドとの親和性などを重要視する声が大きくなっている。本記事では、この声に応えるため、業界の抱える課題解決に取り組むAJAとMomentumの2社のキーマンにインタビュー。その中で、現在の広告取引における課題、そして広告主とメディアが取り組むべきことが明らかになった。

ネット広告の歴史に紐解く、アドベリのトレンド

MarkeZine編集部(以下、MZ):2017年はアドベリフィケーションに関する話題がMarkeZineの中でも多く挙がりました。まず、同キーワード周辺のトレンドについて、Momentumの高頭さんにお話しいただきます。

高頭:インターネットの黎明期までさかのぼると、その頃からクリックのアドフラウド(不正広告)をはじめ、アドベリフィケーションにまつわる様々な問題が顕在化してきていました。その後、2014年頃からDSPをはじめとしたプログラマティックの広告が登場し、インプレッション課金型の広告が注目を集めました。それに合わせてアドフラウドの手法も高度になり、インプレッションを偽造するようなものも出始めました。

Momentum株式会社 代表取締役社長 高頭 博志氏

 アドベリフィケーションツールを提供するMomentumの代表取締役。同領域には、日本企業がほとんど取り組んでいない中いち早く参入しており、2017年7月にはKDDIグループにジョインしている。

 クリックはアクションがともなうので、検知するのも容易な一方、インプレッションは出稿側としても取得できる情報が少なく、解析が難しい世界でした。

 その後、問題が大きくなってきて2016年頃にかけて、アドベリフィケーション関連のソリューションが増えてきたり、海外の消費財メーカーを中心に広告枠の透明性、親和性を問題視するようになったりと、機運が高まってきた。そのため米国では、2016年がピークで、2017年にはアドベリフィケーション関連の話は落ち着きました。

MZ:日本はいかがですか。

高頭:日本はやはり海外から数年遅れてトレンドが来るという傾向があり、2017年、2018年でアドベリフィケーションやブランドセーフティ、ビューアビリティ、アドフラウド関連のニュースがピークに達すると思っています。

SSP、ちゃんと見てますか?

MZ:AJAのお2人にお伺いします。高頭さんがお話しした潮流において、広告主が現状抱えている課題はなんだと思いますか。

野屋敷:課題のひとつとして、広告主側で把握できていないことが多すぎる点が挙げられるかと思います。テクノロジーの発達によって、DSPといったプログラマティック広告を通じて数多くのメディアで広告を配信することが可能になった一方で、自社の広告が配信されているすべてのメディアを把握することが難しい状況です。その結果、本来出したくないメディアに出てしまっていたという事故が起きてしまう。

株式会社AJA 代表取締役社長 野屋敷 健太氏

 サイバーエージェントのメディア事業の中で培われたノウハウ、技術を活用したソリューションを提供するAJAの代表取締役社長。具体的なソリューションとしては、PMP、SSP、レコメンドエンジンを提供している。

小越:昨今のアドベリフィケーションに関連した話題があがる際に不思議に思っていたこととして、なぜ皆さんSSPの話題を出さないのかなと。メディアをリクルーティングし束ねているSSP事業者やアドネットワーク事業者こそ、1番の当事者ではないでしょうか。メディアリクルーティングのポリシーがしっかりしているSSPの配信であれば、アドベリフィケーションにひっかかるようなメディアに掲載されるリスクを下げられると思います。

株式会社AJA 取締役 小越 崇広氏

 AJAにおける全商品のプロダクトマネージャーとして開発を指揮。元々はサイバーエージェントのメディアのマネタイズを担当しており、そこで感じた課題をプロダクトの開発に反映している。

 どのDSPを通じてどこの掲載面に出たかを認識している広告主は多いかと思いますが、どこのSSPを経由して配信されたのか、というところまで見ている広告主は少ないのではないでしょうか。今のアドベリフィケーションの問題は、SSPを精査すれば半分ぐらいは解決すると思います。

高頭:小越さんのおっしゃる通りですね。外資系の企業の中には、SSPのスコアリングを行うところもあります。トラッキングツールをSSPごとに切り分けてスコアを計ることで、バイイングの調整も可能です。このような、メディアをリクルーティングしている側を精査する手法は世界的なトレンドになりつつあります。

野屋敷:また、前提としてアドベリフィケーションに関することを意識しているクライアントはまだまだ限定的だと感じています。徐々にブランディングを目的としたデジタルの活用が進んでいますが、CPAをプロモーションのKPIとする企業はまだ多い状況です。

MZ:アドベリフィケーションやアドフラウドなどの問題を解決していけば、CPAをKPIに置く企業にとってもプラスになる可能性はありますよね?

小越:突き詰めればより費用対効果を良くできる可能性はあると思います。

一般的な指標だけで、もうデジタルは計れない

MZ:ここまでに上がってきた課題を解決するために、広告主が理解しておくべきポイントはなんだと思いますか。

野屋敷:広告主から見た時に、どこのDSPを使うかということを先に考えるのでSSPを意識することはほぼないでしょうが、DSPの先にいるSSPこそ、まず目を向けていただきたいと思います。また、それにあわせてデジタル広告を出稿する際のポリシーも定めると良いと思います。

 どういった掲載面には出したくないのか、どのような形での掲載を望んでいないのかといったことをモニタリングできるようにすると、望まない掲載面への出稿リスクを減らせると思います。

高頭:どういった面に出ているかということに、より目を向けるべきだと思います。たとえば、DSPの選び方一つとっても、現在はどのSSP経由か、どの掲載面に出たかといった情報を開示するDSP事業者も多いので、最低限そういった事業者を選ぶべきだと思います。

 その開示された情報を一部でもいいので確認し、各企業が持つポリシーに反する掲載面があれば、どうしてそこに出稿されているのか、広告代理店さんなどと会話するべきだと思います。

小越:それだけではなく、Momentumさんをはじめとしたアドベリフィケーションツールの活用も非常に有効です。広告主がSSPやメディアを選定しても、どうしても商品やサービスのイメージに不適切な配信先が含まれてしまう場合があります。外資系の広告主はアドベリフィケーションツールを使用した配信が当たり前になってきています。

 またDSP事業者やメディアからレポートが上がってきますが、配信に関わる当事者同士で、サードパーティーツールのレポートをチェックすると中立性も増します。

MZ:サードパーティーのツールを入れることで、客観性が生まれるということでしょうか。

高頭:客観性もあると思いますが、問題の本質は送客数やCTR、CPAだけを見たマーケティングから一歩進むべきというところだと思います。それとは別の一面に目を向けさせてくれるのが、サードパーティーツールだと思います。弊社のツール以外にも様々なツールがありますが、そういったものを通じて、別の切り口からマーケティングを活性化したほうがいいと思いますね。

AJAが目指す、広告主が出稿したくなるメディアとは

MZ:現在両社がAJAさんの提供するSSPに関する調査を行ったと聞いています。どういった内容なのでしょうか。

小越:まず、弊社のSSPではメディアリクルーティングポリシーを持っています。このポリシーのもと、アダルトサイトや違法サイトをリクルーティングしないようにしています。また、個人運営のメディアも審査工数の関係でお断りしています。

 そして、このポリシーのもとリクルーティングしたサイトのブランド毀損リスクについて、Momentumさんのツールを通じて弊社の広告在庫を調査しています。その結果が下の図です。

 ブランドリスクについては、平均と比べると3割近く低く、健全であるという結果が出ています。インセンティブが発生するようなポイントサイトや著作権の侵害コンテンツは0%。性的表現やR指定コンテンツ、ネガティブコンテンツに関しては、ニュースサイトやQ&Aサイトのようなコミュニケーションサイトなどに多少含まれてしまうことがあるため、ゼロにはできませんが、かなり低い数値だったかと思います。

高頭:補足すると、匿名掲示板やインセンティブサイトなどへの出稿を懸念されるお客様も多いので、その数値が極小であるのは、AJAさんが丁寧にメディアをリクルーティングされていることの証だと思います。

 ブランドネガティブと呼ばれるものは、誰かの死亡記事などのニュースに多く、新聞の社会面などをイメージするとわかりやすいと思います。そういったところのレートが多少高くなっているというのは、意義のあるコンテンツが多いからこその結果でしょうね。

MZ:著作権侵害コンテンツがまったくないというのも、ここ最近の海賊版サイトの問題などを踏まえると、広告主も安心なのではないでしょうか。

野屋敷:メディアのポジションから話をすると、著作侵害コンテンツを掲載するメディアに流れていた広告の収益は減っていくと事が望ましいと思っています。オリジナルのコンテンツを懸命に作るメディアを運営されている企業に、より収益が還元されていくようになると良いと思っています。

健全にマネタイズ、費用対効果の上がる世界に

MZ:最後に両社から今後の展望、アドベリフィケーションのあるべき姿について教えてください。

野屋敷:弊社は「Ameba」など自社のメディア事業を通じて得られたノウハウをテクノロジーに反映しています。そのため、アドベリフィケーション、アドフラウド、ビューアビリティ、ブランドセーフティといった課題に常に向き合ってきました。

 そのため、良質なコンテンツを提供しているメディアが収益を得られる状態にしたいという思いがあります。そうでないと、コンテンツに投資もできなくなってしまうし、メディア全体の衰退にもつながってしまう。広告主のブランドセーフティを実現しながらもメディアが健全にマネタイズできる世界を作っていきたいです。

小越:メディアの審査はもちろん、掲載されている広告クリエイティブについても目を向けていきたいと思っています。露出度が高い画像や法に抵触する恐れのある表現など広告として不適切なクリエイティブの掲載をたまに目にしますが、それらがなくならないのは広告効果が高いからです。なぜ問題かというと、効果が良いがために、これらの広告の存在によってオークション単価が不当に釣り上げられてしまうのです。

 法を順守しながらまっとうにマーケティングに取り組んでいる広告主は、そういった広告の存在のせいで余計な広告費を支出している可能性があるのです。

 メディアの立場でみても、一見効果の良いこれらのクリエイティブは、利用者からのクレームにつながりかねないので、長期的に見るとマイナスのほうが大きいと考えています。ですので、クリエイティブの審査強化は取り組むべきテーマのひとつであると考えています。

MZ:高頭さんはいかがですか?

高頭:アドベリフィケーションツールというと、ネガティブ、守りというイメージが強いと思います。ただ、弊社のビジョンとしては、不純物を無くすことで広告取引を効率的にし、広告価値を上げるための攻めのツールでありたいと思っています。

 AJAさんとの取り組みは、不正で儲けていたメディアの収益を減らし、本当に良いメディアの収益を上げ、広告主の費用対効果を高めることもできるので、三方良しの施策だと思っています。

 運用型広告の最終的な目的は、今までメディアさんが手売りしていた純広告の時代より、広告単価を上げていくということです。それを実現するためには、我々のようなツールベンダーとメディア企業のコラボレーションが必要だと考えています。

 今回は調査という形でしたが、AJAさんとは今後も継続的に取り組みを行うことが決まっていますので、広告在庫を健全に保ち続けるためにお互い知恵を絞っていきたいです。

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28544