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言うは易く行うは難しなCX視点での事業推進 ストライプインターナショナル×KARTE流の進め方

 テクノロジーの発展によって企業が活用できるデータは増えた一方、組織やチャネルの分断が障壁となり、顧客体験(以下、CX)向上にまで上手くデータを活かしきれていない企業は多い。CXのリーディングカンパニーとしてソリューションを提供し続けるプレイドの坂部雅之氏と、同社のCXプラットフォーム「KARTE」のユーザーであり、ストライプインターナショナルでデータドリブンな組織作りを牽引する榎本一樹氏が登壇し、シームレスなデータ活用が可能にする理想的なCXについて事例を中心に語った。

熱い視線が集まり続けるCX領域

プレイド Director 坂部 雅之氏(写真左)ストライプインターナショナル デジタルトランスフォーメーション本部 データプラットフォーム部 部長 榎本 一樹氏(写真右)
プレイド Director 坂部 雅之氏(写真左)
ストライプインターナショナル デジタルトランスフォーメーション本部
データプラットフォーム部 部長 榎本 一樹氏(写真右)

 プレイドの創業メンバーであり、現在は同社でセールスやアライアンスを管轄し、パートナーとの事業開発も担う坂部氏。「CXや顧客体験というキーワードが昨年から日本国内において注目されるようになってきた」と述べた上で、グローバルにおけるCXのトレンドを紹介した。

 これは、アメリカのフォレスター社がCXリーダー企業とそうでない企業の成長率の差をまとめたレポートだ。グリーンがCXリーダー企業、グレーがそうでない企業の数値を示し、伸び率は一目瞭然と言える。

 また、アクセンチュアストラテジー社の調査結果によると、およそ3分の1の消費者が「利用する企業に自分のことをよく知ってもらいたい」と感じているそうだ。この結果から、顧客が高度にパーソナライズされた体験を強く望んでいることがわかる。

 榎本氏はIT企業でWebエンジニアとしてキャリアをスタートさせた後、広告代理店でDMPの構築や顧客の支援に携わり、現在はストライプインターナショナルでデータの基盤構築やテクノロジー活用を進めている。

 「earth music&ecology」を筆頭に、30以上のファッションブランドを展開するストライプインターナショナルグループ。最近はソフトバンクとのジョイントベンチャー事業として、「STRIPE DEPARTMENT」という、ラグジュアリーブランドを中心に800ブランド以上を取り扱うECサイトも立ち上げた。

 顧客のライフスタイルを技術で支援していく「ライフスタイル&テクノロジーカンパニー」という基本姿勢に加え、社会的に正しいことをしていきたいという想いから最近は「エシカル」をキーワードに掲げて企業活動を行っている。

在庫の最適化を実現し、事業部からの期待に応えた

 この図は、ストライプインターナショナルのデータ基盤を表したものだ。「お客様を『人軸』で捉えるためには、あらゆる接点のデータを1ヵ所に集める必要がある」と考える榎本氏。

 ストライプインターナショナルの場合、日本国内に1,000店舗ほどある実店舗が一番大きなチャネルとなる。そのほか自社ECサイトやアプリなど、それぞれの接点から得られたデータをプライベートDMPに集約し、ダッシュボードで見える化を行ってから分析やメディアプランニング、在庫の最適化といったアクションにつなげていく。

 データを統合するにあたり、事業部からまず改善してほしいと頼まれたのは在庫の最適化だったという。

 過去の売上データから将来的な売上予測を行い、店舗に最適な在庫量を送るようにしたところ、ストックルームが整理され、商品在庫が探しやすくなり、接客に最大限の時間を充てることができるようになった。このことは、CXの向上にも間接的につながっていると言える。

 次のステップとして、より本格的なCXの向上を目指すべく導入したのが、プレイドが提供するCXプラットフォームの「KARTE」だ。

 「KARTEのコアバリューは『リアルタイム解析でデータを可視化する』という点にあります。あらゆる事象を顧客目線に変革することにより、ユーザーの解像度を上げ、体験をしっかりと把握した上で最適なアプローチを行うためのソリューションを提供しています」(坂部氏)

エンジニアが少ない体制でもPDCAを回せる

 「ライフスタイル&テクノロジー」を事業領域としているストライプインターナショナルだが、KARTE導入前の社内エンジニア比率はわずか0.2%だった。KARTE導入の背景は、少ないエンジニアで複数施策のPDCAサイクルを回しながらECサイトを運営でき、改善ノウハウの蓄積も可能という点もあったわけだ。

 これは、自社ECサイトであるSTRIPE CLUBからSTRIPE DEPARTMENTのタイムセールへの誘導事例だ。「最近7,000円以上の購入をされているお客様」に対象を絞り、商品一覧ページにタイムセールへの誘導バナーを出した。

 また、対象の条件に「35歳以上の方」「特定のページを閲覧された方」を加えた上で、購入完了ページにも同じバナーを出すように設定した。その結果、後者のバナーのCTRのほうが高く出た。

 「オフラインの消費者行動を想像すると、その理由がわかります。目当ての商品を店舗で購入すると、そこで1度アクションは切れますが、購買意欲は高いまま近くにある他の店舗を巡ろうとしますよね。このように、人が物を『買っていいかな』という気分になっている時に誘導バナーを出した結果、オンラインでも高い数値が表れました。お客様の気持ちを考えた接客をすることで、オンラインでもオフラインと同じようなことができるという点が本事例の収穫です」(榎本氏)

オンラインとオフラインを行き来するユーザーに最適な体験を

 「KARTEを導入することで、オンラインの接客最適化はできるようになった」と榎本氏は語る。その上でストライプインターナショナルは、様々なデータを統合してマーケティングに活用していきたいという更なる課題を抱えていた。その課題に合致したソリューションがKARTE Datahubだ。

 オンラインの接客最適化のためにマーケターがKARTE上で作成したセグメント情報をプライベートDMPに送ることができ、逆に店舗での購買情報などのDMPにあるデータを、Datahubを介してKARTEに送り、オンライン接客の最適化に使うという動きも可能だ。情報をクロスしてオンラインとオフラインのデータをシームレスにつなげ、アクションに活用することができるのがDatahubの特徴だ。

 たとえば、「Aさんが店舗ではあまり買っていない」というDMPのデータと、「AさんがECサイトではたくさん買っている」というKARTEのデータを掛け合わせてユーザーセグメントを作る。そのセグメントに基づいて来店を促すDMを送ってあげると、オンラインのデータを活用しているのでDMの内容に説得力を持たせることができ、Aさんが店頭に足を運びたくなるような仕掛けを作ることができる。

 逆に、店舗でたくさん買ってくれているがECサイトはあまり回遊してくれないBさんのセグメントに基づいて、KARTEから「いつも店舗でたくさん買ってくれてありがとう!」といった内容のクーポンを送ってあげると、ECサイトへの来訪を促せる。

 また、Datahubは商品マスターやコーディネートのデータなどをインプットすることで、レコメンドの実施やコーディネートのパーソナライズ、ランキングの表示、カート落ちのパーソナライズといったアクションをワンストップに実行できる仕組みも備えている。単にデータを溜める箱ではなく、アクショナブルなユーザーデータベースであるという点が特徴だ。

 現在、アプリ向けSDKの導入を検討しているという榎本氏。SDKを入れることで顧客の位置情報が取得でき、顧客が店舗の近くに来たら来店を促すという接客もできるようになる。

 「Datahubを介することでデータを一ヵ所に集めやすくなり、顧客接点を「人軸」で捉えて最適な顧客体験を提供できるようになると捉えています。今まではオンライン接客の最適化に力を入れてきましたが、今後はアプリや店舗のデータも活用して、オンラインとオフラインいずれの接客もKARTEで最適化していけると考えています」(榎本氏)

顧客視点のビジネス推進に立ちはだかる3つの障壁

 顧客視点のビジネスは「1事業部で進めていくには重い課題」と指摘する坂部氏。企業にCXを実装するにあたって突破しなければならない3つの障壁を紹介した。

 まずは「分断された組織に横串を入れること」。組織やデータ、各部署のミッションがサイロ化されている状態に横串を入れていく必要があるという。

 次に「データを統合して顧客接点を最適化すること」。ストライプインターナショナルのDatahub活用事例は、まさにこの点へ取り組んだ好例であると言える。

 最後に「異質なスキルセットを結合すること」。マーケターの業務や職域が拡張している中、CXを実現し続けるためには色んな人のスキルセットをコラボレートする必要があるという。「足りないスキルセットやリテラシーは、我々が提供するようなSaaSのプロダクトで補完していってほしいです」(坂部氏)

「シームレス」「人軸でとらえる」理想的なCX創造に必要な視点

 デジタルトランスフォーメーション本部で、組織に横串を入れる立場にある榎本氏はこう語る。

 「元々『データ活用推進室』という社長直下の部署でやっていたのですが、人が増えてきたタイミングでブランドや事業部を間接的かつ横断的に見るデジタルトランスフォーメーション本部というものができたので、横串を入れる重要性は強く感じています。ただ、組織を作るだけではうまく回りません。弊社でいうところの『エシカル』のように、共通の言語や文化のようなものが必要だと思います」

 ストライプインターナショナルでは、マーケターだけでなくクリエイターやエンジニアなど様々な職種の担当者がKARTEに触っている。そうすることで、戦略立案からクリエイティブ制作、その確認フローも含めて内部で行うことができ、ナレッジ共有や改善策が生まれやすくなったと榎本氏は語る。技術的に高度で複雑な仕組みが動くKARTEだが、「全員が問題なく操作できているのか?」という疑問に、榎本氏はこう答える。

 「ユーザーインターフェースがフレンドリーなので、デジタルに慣れていない人でもまずツールに触ることで少しずつ、そして楽しく理解を進めることができます。その点は、社内の様々な部署やスキルセットを持つ人のハブとなるソリューションとして評価が高いです。KARTEを共有の言語とし、同じ方向を向いてデジタル推進ができると考えます」

 両者は最後に「シームレス」というキーワードを用いて、理想的なCX創造へ向けたそれぞれの姿勢を表明した。

 「KARTEを単なるWeb接客ツールとして捉えるのではなく、オンラインとオフラインのデータをシームレスにつないで見られて、データを人として捉えることのできるツールがKARTEだと思います。オンライン、オフラインを問わずお客様を軸に考えて、一人一人に向けた体験作りを目指していきたいと思っています」(榎本氏)

 「4月17日に行われるCX DIVEというイベントのテーマがまさに「シームレス」です。人と人、部署と部署、データとデータ、オンラインとオフライン、会社間、メーカーとリテールのような業種間もシームレスにしていく存在に我々はなりたいと考えています」(坂部氏)

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/04/14 14:12 https://markezine.jp/article/detail/30672