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MarkeZine Day 2019 Autumn(AD)

データで成果を挙げられるマーケターはいない?調査でわかった、データマーケティングで伸びる企業の条件

 2019年9月12日に開催された「MarkeZine Day 2019 Autumn」。本記事では、b→dashを開発・提供するフロムスクラッチの三浦氏によるセッション「なぜあの会社はデータマーケティングで伸びるのか~先進企業150社への調査が明らかにした『伸びる事業と伸びない事業を分かつ“不都合な真実”』と『データ活用の秘密』」の模様をレポート。施策の成否を分けていたのはデータ量でも予算規模でもなく、予想外の要因だった。

データマーケティングの成否を分ける要因は?

株式会社フロムスクラッチ  執行役員 CMO 三浦將太氏
株式会社フロムスクラッチ 執行役員 CMO 三浦將太氏

 データマーケティングプラットフォーム「b→dash」を提供するフロムスクラッチは、堤真一さんとおぎやはぎさんをキャスティングしたテレビCMの放映をスタートした。放映後には問い合わせが数千件も殺到したという。

 同社に連絡した企業の多くは、過去にデータマーケティングの挫折を経験していた。同社がこれまでに展開してきた「データマーケティングで起こりがちな失敗」を描いたCMは、企業が抱えている問題そのものだったようだ。

 「データマーケティング」と検索すれば、無数の成功事例がヒットする。しかし、同社に寄せられた数多くの相談からわかったのは、表に出ていないだけで、失敗している企業も多数存在するという事実だ。成功企業も失敗企業も同じようにツールを導入し、データを活用したマーケティングに取り組んでいるはずなのに、なぜ明暗が分かれてしまうのか。同社はこの要因を探るべく、ある調査を実施。本セッションではその結果を基に、データマーケティングの本質が明かされた。

成否を分けた要因は、マーケターの○○の使い方

 同社はまず、様々な規模・業界の企業から、1年以上データマーケティング関連のツールを運用した経験のある150社を抽出し、匿名を条件にツール導入後の業績変動率を調査。すると業績が2倍に伸びた企業もあれば、逆にマイナスに転じた企業もあり、二極化していたことがわかった

 この「差」を生んでいる要因を突き止めるべく、業績を伸ばした企業15社と、逆に伸び悩んでしまった企業15社に対して、インタビューを実施。様々な角度から質問を重ね、データを蓄積した上で、仮説を立てて検証を進めた。そこで見えてきたのは「当初まったく予想していなかった結果」だった。

 同社が最初に立てた仮説は、「扱えるデータ量が多ければ多いほど、データマーケティングは成功しやすいのではないか」というもの。データが豊富であれば施策のバリエーションを増やすことができるため、結果的に成功しやすいのではないかというロジックだ。しかし、データ量と業績推移に有意な相関関係は見られなかった。

 次に軸としたのは予算だった。「ツールにかけられる予算が多ければ多いほど、うまくいくはず」と考えたが、こちらも相関関係は存在せず。スタッフの多さやリテラシーの有無など、一般的にデータマーケティングの成功を左右するとされる要因を次々に洗い出し、検証してみたが、どれにも相関関係は見られなかった。

 その後も様々な角度から検証を繰り返した末に、ようやくある仮説が当たったという。

 「1つだけ、強い相関関係が見られる項目がありました。マーケターの時間の使い方です。具体的には、データの“活用”、つまり戦略を描き、企画・実行することに十分な時間をかけることができているか、それともデータの“準備”の作業に時間を割いてしまっているのか。これが大きなポイントでした」(三浦氏)

 より詳しく見てみると、業績が伸びなかった15社のマーケターが、データ活用に費やした時間は3割前後。一方、業績を伸ばした15社は7割程度の時間をデータ活用に充てていた。三浦氏は、「端的に言えば、マーケターが作業員になっているか、戦略家になっているかの違いです」と検証結果を表現した。

 とはいえ、多くの企業は当然、マーケターは戦略家であるべきだと認識しているはずだ。それにも関わらず、なぜマーケターは作業に忙殺されてしまうのか。続いて三浦氏は、データマーケティングを実現するステップを紐解くことで、そのからくりを解説した。

1つの施策に必要なデータの準備時間は、約380時間!

 多くの企業がデータを活用して成果を上げたいと思っているが、データを施策に活用できる状態にするためには、次の4つのステップを踏む必要がある。

1. データ取得
2. データ取り込み
3. データ統合
4. データ変換

 具体的には、自社の顧客に関するあらゆる情報をデータ化した上で、CDPやプライベートDMPに取り込み、統合作業を行う。そこから活用可能な状態にデータを変換することで、ようやくデータ活用の準備が整う。一連の作業にどれだけの時間が必要になるのか、計算してみたことはあるだろうか。

 三浦氏はまず、「2. データ取り込み」から「3. データ統合」のステップに要する作業工程時間は、平均で約300時間であると明かした。しかも、事業全体ではなく「1つの施策」に対して、これだけの時間が必要だという。

 その理由は、Webサイトのアクセスログデータや売上データ、顧客データなど、社内には様々なデータがバラバラに蓄積されているためだ。バラバラのシステム内にあるデータの取り込みや統合は、基本的には手作業で行う必要がある

 具体的には、取り込みたいデータを選別し、不要なデータを削除する。さらに表記揺れを統一し、顧客データテーブルを作成して統合作業を進め、IDを付与する。この作業を経て、ようやく1つのID(1人の顧客)が過去にどのような行動を起こし、今後どのような行動をしていくのかを追えるようになる。

 さらに、「4. データ変換」にも、約80時間が費やされている。CDPなどのデータ基盤から、マーケティングオートメーション(以下、MA)やWeb接客などのデータ活用ツールへ出力するための設定を行い、SQLを操作してセグメントデータを抽出。データマートを作成してMAツールやWeb接客ツールにセットする作業だ。

 つまりデータマーケティングを行う際は、施策1回につき約380時間もの工数が、本質的ではないデータの準備に費やされてしまう。こうした煩雑なステップこそが、マーケターが作業員になってしまう最大の要因だと三浦氏は強調した。

社内エンジニアや外部に依頼すれば解決できるのか?

 マーケターのデータ活用の時間を確保するため、社内エンジニアやSIerにデータ準備を依頼する企業も多い。しかし三浦氏は、そのどちらにもデメリットがあるという。

 まず、技術力の高いエンジニアは、このような単調な作業は嫌がる傾向にある。データ準備ばかりを任せてしまうとモチベーションの低下につながり、優秀なエンジニアほど離職する可能性が高くなってしまう。

 また、外部委託する場合は莫大なコストがかかる。とあるアパレル企業では、データマーケティングを実施するのに、データの統合や変換工程をSIerへ外注することで、年間約3,000万円以上ものコストが発生していた。外部へデータ活用に必要な作業を依頼するものの、コストがかさんでほとんど利益が出ず、撤退してしまう企業は多い。

 データファーストなマーケティングを実施したいのに、そのデータを活用するための準備にリソースをとられてばかりで思うように取り組めない。このようなジレンマを解消するためにはどうすればいいのか。同社は「データ準備そのものを不要にするテクノロジーがあれば、ボトルネックを解消できるのではないか」と考えた。その結果生まれたのが、データマーケティングプラットフォーム「b→dash」の新技術である「Data Palette(データパレット)」だ。

新技術「Data Palette」により、データサイエンスの民主化を目指す

 「b→dash」は、先述したデータを活用するまでのステップである、データの取得から取り込み、統合、変換をAll in Oneで実現できるマーケティングプラットフォームだ。

 今回発表された「Data Palette(データパレット)」は、一言で言えば「プログラミング不要で、データの取り込みや統合、変換を可能にする」新技術だ。b→dashのデータアナリストが25万時間以上の解析作業で蓄積してきた110業種・13万テーブル分のデータ処理ナレッジをGUI上に昇華させて生まれた。

 このData Paletteにより、画面に表示されるボタンをクリックしていくだけで、これまで380時間かかっていたデータの統合や変換などの「データ準備」の作業を、エンジニアやSIerなどへの外注をせずとも、たった数時間で完了させることができる。

 また、作業を自動化することで、データマーケティングにありがちな属人性の問題も解消できる。SQLなどのプログラミングの専門知識をもつ社員に、データ準備にかかる作業の大半を一任している企業は少なくない。ところがこの場合、社員の異動や退職によって、取り組みが頓挫してしまう。リテラシーに依存せず、誰でも簡単にデータを取り扱える環境作りは欠かせない

 「『b→dash』および『Data Palette』を使えば、データ活用のプロセスをエンジニアやデータサイエンティストに頼ったり、外部に依頼したりする必要はありません。私たちはこのプラットフォームを通じて、データサイエンスの民主化を実現したいと考えています」(三浦氏)

 また、「b→dash」はデータマーケティングに必要な機能も網羅している。CDP(プライベートDMP)、MAツール、BI、Web接客など、様々な機能から選んで利用することもできるので、複数のツールを導入する必要はない。

 三浦氏は最後に、「データマーケティングツールの導入を検討する際は、押さえなければならないポイントがある。わからない場合は、気軽に問い合わせてどんどんヒアリングしたほうがいい」と助言した。自社サービスに合うツールを選定する際には、ツールベンダーから直接情報・事例を引き出し、わからないことがあれば積極的に質問することを勧め、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32067