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MarkeZine Day 2020 Spring(AD)

1年半で流入7倍、CV4倍に伸長!『Woman.CHINTAI』が実践したオウンドメディア成長戦略

 「内製化、ペルソナ設定、CV設計という王道を実施」「SEO記事は“役立つもの”、SNS向けの記事は“楽しいもの”」……オウンドメディア運用の体制づくりと数々の工夫により、『Woman.CHINTAI』は短期間で流入・コンバージョン(CV)とも大きく改善したという。3月10日、11日に開催したMarkeZine Day 2020 Springに、『Woman.CHINTAI』編集部に並走したFaber Companyの前田絵理氏が登壇。ユーザーに寄り添い成果を上げるオウンドメディアの考え方と手法を余すところなく公開した。

「オウンドメディアを強化する」という原点回帰

 自社の顧客に受け入れられる情報を提供してファンを増やしていく1つの手法としてあるオウンドメディア施策。コンテンツマーケティング手法としてすっかり定着したが、いま改めてその重要性にスポットが当たっている。

 背景のひとつは言わずもがな、Cookie利用が段階的に制限されることだ。多くのユーザーを自社サイト、コンテンツで惹きつけファンを増やしていくことが急務になっている

 「この状況におけるベストプラクティスがの1つが、オウンドコンテンツの増強だと考えています」と話すのは、Faber Companyの前田絵理氏だ。同社はコンテンツマーケティングツールの「MIERUCA(以下、ミエルカ)」を提供。ツールだけではなく、担当者がWebマーケティングを学べるコンテンツ提供、カスタマーサクセス担当による伴走サポートという三位一体のソリューションが特徴だ。前田氏は自身の編集者経験も踏まえて、現職ではカスタマーサクセスとして多くのオウンドメディアの成長を支援している。

Faber Company IMC部 マーケティングチーム 前田絵理氏

 ユーザーに支持される魅力的なコンテンツと、それを継続して発信できる基盤となる運営体制を構築、改善していくことは、さながら原点回帰ともいえる。

 また、今の時代だからこそ考慮すべき点もある。それは、複数チャネルからの流入を獲得できるように設計すること、つまりマルチチャネル活用だ。ひとつのチャネルに頼りすぎると、そのチャネルのアルゴリズムやロジック変更に集客が大きく左右されるため、安定的な運用は困難だ。複数チャネルからバランスよく流入を獲得できるようにして、リスクを分散する必要がある。

 「加えて、マルチチャネル活用には、チャネル間の相乗効果も見込めるメリットがあります。たとえばSNSで話題になるなどして良いサイテーション(引用、言及)が多く生まれると、SEOでは会社名やサービスの指名検索が増える可能性があります」と前田氏。

一人暮らしの女性向けサイト「Woman.CHINTAI」の取り組み

 こうしたWebを取り巻く環境を解説した後、前田氏がオウンドメディア強化の軌跡をつぶさに明かしてくれたのは、CHINTAIが運営する女性向け賃貸物件サイト『Woman.CHINTAI』。同サイトでは、住みたいエリアと自分のライフスタイルや志向性から簡単に物件検索ができる他、“一人暮らしの女性のために”様々なコンテンツを提供している。

 コンテンツマーケティングに取り組み始めてからしばらく経った2018年7月に「ミエルカ」を導入し、カスタマーサクセスが伴走してコンテンツ制作を支援した結果、1年半後の現在では流入7倍、コンバージョン4倍にもの成長を遂げた

 前田氏は、これほど成長した秘訣として、次の3点を挙げる。王道のように思えるが、意外とやり切れていない企業が多いという。この3点について、具体的なエピソードも含めて詳細を解説した。

1.内製化
2.ペルソナ設定
3.コンバージョン設計

ビッグワードでも検索上位表示! 成功体験で内製化に弾み

 まず「1.内製化」については、外部制作会社への完全アウトソースによる運用状況を改め、社内の『Woman.CHINTAI』編集部が主導権を持って運用できるように体制を整えたことを挙げた。ポイントは、Webマーケティング初心者だった編集部がミエルカの伴走支援を受けながら成功体験をつくったことだ。

 当初、編集部では既存記事の検索順位は上位を獲得できていてSEOは順調との認識だったが、「ミエルカ」を用いてキーワードを分析したところ、モニタリングしていたキーワードの約74%が月間検索数1,000以下のスモールワードだったという。

 「オウンドメディアのローンチ時期にスモールワードから狙うのはよくある話ですが、そのようなキーワードにだけ対応していては流入数が伸びません。そこで、月間検索数5,000~1万以上のミドル~ビッグワードを狙うことを提案しました」(前田氏)

 ミドル~ビッグワードで検索上位表示を獲得するのは容易ではないが、ユーザーのニーズをしっかりと分析して期待に応えるコンテンツを制作できれば、狙いどおりの結果を得られる可能性は高くなる。ここで編集部と前田氏が選んだのは、月間検索数6,000ほどの「8畳」というキーワードだ。コンテンツ制作前に「ミエルカ」でユーザーニーズを分析したところ、以下のようなニーズが浮かび上がった。

 「レイアウトや家具サイズを知りたいとなると、図解やイラストがわかりやすそう」との「ミエルカ」からのアドバイスも踏まえて、編集部でコンテンツ構成案を作成。アイキャッチ画像に部屋のレイアウトを図解したものをオリジナルで作成することにし、見出しと内容もおおまかに決めた。

 「タイトルには、“【図解】”と入れて検索結果画面でも違いを明確にしたりするなどして、検索結果画面でのクリック率の向上を意識しました。ユーザーに選んでもらえる工夫も重要です」(前田氏)

オリジナルのアイキャッチ画像で離脱を徹底防止

 そうしてできあがったコンテンツは、「ミエルカ」で分析したユーザーの検索ニーズを捉え、さらにコンテンツ冒頭で図解を盛り込むことで理解を促進する。ポイントは、ファーストビューでユーザーの心をつかんでコンテンツを最後まで読んでもらうこと。こうした様々な工夫を凝らしたことによってユーザーに評価され、公開2ヵ月後には「8畳」のキーワードで検索1位を獲得した。

 現在のSEOでは、ユーザー行動の良しあしも影響する可能性があるといわれているため、サイトに訪問してくれたユーザーを検索結果に戻さないことも重要だ。そのための工夫のひとつが、オリジナルのアイキャッチ画像。「今のユーザーは膨大なコンテンツと情報があふれる中で情報収集をしています。読みづらそう、よくわからないなと思うとすぐ離脱してしまいます。テーマと関連度の低い画像やフリー画像は使わないようにすべきです」と前田氏。

 Webマーケティング初心者でも、客観的な分析に基づいて構成案を固めればビッグワードで検索上位を獲得できると証明されたことで、内製化に弾みがついた。現在ではライティングだけ、特定ジャンルに詳しい人やSNSフォロワーの多い人など外部のライターに発注し、他は内部リソースで主導できるようになったという。

 「内製でメディア運営が回せれば、社内にノウハウが蓄積していきます。他のコンテンツとの差別化のためにも“中の人”がつくることで、コンテンツに“想い”をこめることが欠かせません」(前田氏)

マルチチャネル展開につながったペルソナ設定

 次に「2.ペルソナ設定」について、「あまり細かいものは不要ですが、関係者全員で意思統一して全体の軸を決め、その上でチャネル別のコンセプトを定めるのに役立ちます」と前田氏は振り返る。

 『Woman.CHINTAI』で取り込みたい顧客像として設定した、年齢や収入、好きな芸能人など8つほどの項目のうち、前田氏がポイントとして挙げるのは「年齢」「月収」「性格」の3つだ。コンテンツのタイトルや構成を練る際、少なくともこの3つは外さないことを共有しておくと、担当編集者やライター、イラストレーターによる内容のブレや表現の差が出にくくなる。前出の「【図解】8畳の広さはこんな感じ……」のコンテンツも、あまり見られない“こんな感じ”というラフなタイトルづけは、このペルソナがあってこそだという。

 全体の軸が決まったら、チャネル別にコンセプトを定めることもできる。『Woman.CHINTAI』では、SEOは「役に立つこと」を主題に実用的なコンテンツを、SNSでは「楽しんでもらうこと」を主題にインフルエンサーによるコラムやイラストを活用したコンテンツを重点的に制作・配信した結果、各チャネルのユーザーニーズにも合致して多くのアクセスや反響を得ることができた。イラスト中心の記事はInstagramと相性がよく、自然検索からのリピーターも着実に増加していった。

ユーザーのフェーズを考慮したコンバージョン設計

 最後に「3.コンバージョン設計」については、認知から成約までのユーザー状況を整理し、各フェーズに合わせたコンテンツをバランスよく配置できたことが大きいという。部屋を探し始めたばかりの人は、今の住まいに不満があると仮定し、住居トラブル解決のコンテンツを。部屋を決める直前の人には、敷金や前家賃など関心が高いお金関係のコンテンツを、といった具合だ。

 「さらに、直接コンバージョンに寄与するコンテンツも用意しています。これらはSEOやSNSからの流入は多く見込めませんが、部屋を決める直前の人向けのコンテンツからも誘導をかけていて、コンバージョンを継続的に生んでいます」(前田氏)

 また、スムーズなコンテンツ遷移のためにはCTA(Call to Action)も重要だ。コンテンツの文脈に合わせてCTAバナーの文言やデザインを熟考し、自然な誘導を心がけた。リンク先のページもユーザーの期待を汲んで吟味するなど、工夫を凝らしていった。

 以上の改善の結果、『Woman.CHINTAI』は流入7倍、コンバージョン4倍という大きな成果が得られた。『Woman.CHINTAI』編集部のご担当者からは、「ユーザーと向き合い寄り添うことで、オウンドメディアを成功へ導くことができました。ぜひ皆さまも自社のユーザーを見直してみては」とコメントが寄せられた。編集部員は現在、社内でマーケターとして評価されているそうで、「支援をした当社としても誇りに感じています」と前田氏。

 「ミエルカ」という強力な分析ツールだけでなく、企業とともにユーザーに寄り添ってくれるカスタマーサクセスの存在も、成功の要因だろう。これからの時代に欠かせないオウンドメディア強化に悩みがある企業は、まずはFaber Companyが開催している各種無料セミナーを受講してみてはいかがだろうか。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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MarkeZine(マーケジン)
2020/04/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/33032