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【特集:Datorama活用】選ばれる理由、成果に迫る(AD)

ダイキンが「Datorama」導入でCPAを10分の1に削減できたわけ/膨大なデータとどう向き合う?

 年2回のエアコン商戦に、大規模なプロモーション展開を仕掛けるダイキン工業。デジタル広告、テレビCM、交通広告、SNSなどあらゆる広告施策を一気に展開しているため、施策後に広告代理店から送られてくる大量のデータをどう読みこなし、活用していいのか途方に暮れていたという。そこでクラウド型マーケティングインテリジェンス・プラットフォーム「Datorama(デートラマ)」を導入し、トリプルメディアのPDCAを効率的に行うことにチャレンジ。その結果、2019年冬商戦ではCPAが2ヵ月で10分の1に下がったという。多岐にわたる広告施策をいかに統合し、最適化したのかそのプロセスを聞いた。

年2回のエアコン商戦、PDCAに課題

 ダイキン工業では年に2回、夏・冬にエアコン商戦のピークを迎える。夏は「除湿に強いダイキン」、冬は「世界で唯一加湿できるエアコン」という点を訴求し、広告施策を展開してきた。この2回の商戦は同社にとって社運をかけた一大キャンペーンであり、デジタル広告や自社サイト、テレビCM、交通広告、SNSなどあらゆる広告施策が一気に展開される

 エアコンは、買い替え期間が平均して13年に一度と、購入サイクルが長い商材である。そのため、この貴重な買い替えタイミングに、ダイキンブランドを想起してもらう必要があるのだ。ところが同社ではこれまで、「どの広告がどのように効いているかわからず、広告施策全体を振り返り、次年度のプランニングに活かす仕組みがなかった」と、国内のデジタル広告のプランニング、バイイングなどを担当する土井智保子氏は振り返る。

 「広告宣伝グループの中でも、それぞれ違うメンバーが各メディアを担当していたため、それぞれの担当者がどのようなコンセプトで広告を展開し、どのような効果があって次年度はどうしたいと考えているのかまったくわかりませんでした。デジタル広告を担当する私自身も、商戦期が終わってかなりの時間が経ってからレポートをいただいていたので、データを整理してじっくり振り返りをする余裕がなく次の商戦期に突入していました」(土井氏)

ダイキン工業のプロモーションサイクル(タップで拡大)
ダイキン工業のプロモーションサイクル(クリック/タップで拡大)

“データの海”に溺れ、正しく成果を把握できていなかった

 当時は、PDCAでいうPlanとDoを繰り返すばかりで、次年度の同じ商戦期になっても前年度の内容を思い出すところから始めねばならず、反省点や改善ポイントを活かすことができなかったのだという。

 「夏と冬のキャンペーンでは指標や訴求ポイントが異なるのですが、施策の振り返りをする時期と、次のキャンペーンのプランニング時期とが重なっているため、レポートを活かしきれなかったのです。もちろん、レポートを見れば新たな気付きもありましたが、そこで得た反省点を次のキャンペーンに最大限活かしたり、他のメディアの担当者たちと連携してキャンペーン全体をより良くするためにそれぞれが持っているデータを活用することはできず、毎年同じ議論を繰り返して堂々巡りをしていました」(土井氏)

ダイキン工業株式会社 総務部 広告宣伝グループ 土井 智保子氏
ダイキン工業株式会社 総務部 広告宣伝グループ 土井 智保子氏

 中でも苦労していたのが、デジタル広告のデータ量の多さと指標の複雑さ、レポートを理解し解釈することの難しさだった。展開するのは自社サイトやキャンペーンサイトのみならず、Facebook広告、Instagram広告、YouTube広告と出稿先も多岐にわたる。見るべき指標も入り乱れ、多数の広告代理店から送られてくる大量のデータをどう読みこなし、活用していいのか途方に暮れていたという。

 「各広告代理店さんはいつもデータをきれいに整理して、きちんとレポーティングしてくださるのですが、年間売上を左右する一大キャンペーンなのでたくさんのメディアを運営し、あらゆるメディアに出稿していると、データの海に溺れているような感覚になっていました。それだけでなく各広告の施策がどのように影響し合ってキャンペーンの成果が出ているのかを把握しきれていませんでした」(土井氏)

 土井氏は「むしろ広告代理店さんからいただいたレポーティングデータを、自分が社内に報告するために都合よく使って“うまく見せている”ことすらあったように思います」と反省点を口にした。

 たくさんのデータを取得できるがゆえに、KPIやデータを整理する余裕がないというのは日々デジタルマーケティングに取り組む多くの企業が抱える課題の一つだろう。

「Datorama」を導入し、ステークホルダー全員でデータを共有

 そこでダイキン工業が2019年2月に導入を決めたのが「Datorama(デートラマ)」だ。導入する際に重視したのは、データ分析のプロフェッショナルである広告代理店をしっかり巻き込むということだ。

 「私のグループでは、多岐にわたるコミュニケーションについて、餅は餅屋というように、プロの方の知見を最大限発揮して頂くことが大事という考えが大前提としてありました。目的や中身については事前に綿密に打ち合わせますが、方針を伝えたらダッシュボードの作成についてはプロにお任せする。私たちは出来上がったダッシュボードを見て、目的が達成できているか、見たい指標が見ることができるかを確認します。押さえるべきものと、お任せするものを明快に切り分けているのがポイントです」(土井氏)

(タップで拡大)
ステークホルダー全員で「Datorama」のデータを共有(クリック/タップで拡大)

 広告主だけでは問題解決できない時、土井氏は外部パートナーを積極的に巻き込むことが大事だと考えているが、その時パートナー企業に「自分ごと」だと捉えてもらうために心がけていることがあるという。

“メリット”を伝えることでパートナー企業を前向きに巻き込む

 「パートナー企業さんに協力を仰ぐ際には、自社のメリットだけでなく、パートナーの皆さんにも大きなメリットがあることを伝えるようにしています。今回の場合では、Datoramaを活用してデータ分析する知見が得られれば、それをモデルケースとして他の広告主にも横展開できることをお伝えして協力をお願いしました」(土井氏)

 実際、ダイキン工業のパートナーである広告代理店では、これまでYouTube、Facebook、Instagram、Twitterといった複数媒体のレポートをそれぞれの管理画面から抽出し、丸1日がかりで一つのレポートにまとめていた。そしてその後、社内にいる各媒体のスペシャリストにデータを分析してもらい、次の提案内容を考えるというプロセスを取るのにさらに2、3日かかっていたという。

 この作業が、ターゲティング別、クリエイティブ別で発生していたため、膨大な時間と手間がかかってしまい、キャンペーンの振り返りをタイムリーに行うことができなかったのだそうだ。

  Datoramaの導入で大きく変わったのは、こうした複数媒体のデータの抽出・統合作業が自動化できるようになったことだ。手間と時間を大幅に削減でき、人的なミスも減ったという。Datoramaなら一つのダッシュボードであらゆる媒体のデータ管理ができ、クリック一つで統合されたデータを出力できる。広告代理店にとっては、そこで削減できた時間を、提案内容のブラッシュアップに充てられるようになるだろう。

 ダイキン工業では他にも『東洋経済オンライン』に特設サイトを設け、記事広告を出稿しているが、この効果測定レポートについても従来は月に1回、本社のある大阪から東京まで出張して編集会議に参加していた。しかしDatoramaの導入によって、特設サイトのレポートもダッシュボード上でリアルタイムに見られるようになったため、導線を強化するなどの施策を即座に打つことができ、閲覧数の増加につながった。編集部とのやり取りが格段にスムーズになり、お互いにとってメリットのある結果となった。

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東洋経済と共有しているダッシュボード画面(クリック/タップで拡大)

2019年冬商戦ではCPAが2ヵ月で10分の1に

 Datoramaを導入して変わったのはそれだけではない。ダッシュボードの内容を整理していく過程で、データを見る目的や見るべき指標、KPIなどを社内でしっかり議論できたことも大きなメリットだったと土井氏は話す。

 「これまで本当に大事なデータは新規のユーザー数なのか、リピーター数なのか、それともサイトの滞在時間なのか、あまり深く考えずに、とにかくすべてのデータを見ようとしていました。しかしいざ導入するにあたり、そのデータを見てどんなアクションを取るのか、アクションにつながらないならそのデータは本当に必要なのか、という視点で考えるようになりました。「本当に必要なデータ」は何なのか、そしてそれらのデータは「どの優先順位」で必要なのか、ということをあらかじめ議論でき、データの取捨選択をすることができたのがよかったと思います。Datoramaの導入プロセスそのものを経験したことが当社にとっては良い機会でした」(土井氏)

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「Datorama」導入前後の変化(クリック/タップで拡大)

 こうしてこれまで長年の課題を解決していったことで、数字面でも如実に成果が現れている。2019年11月に開始した冬商戦向けのマーケティング施策では、翌12月にCPAが前月の約2分の1になり、2020年1月には11月の約10分の1に下がったのだという。

 「必要なデータを整理し、KPIの仮説を立て検証することで、これほどの効果が上がるとは思っていませんでした。導入するまではただダッシュボードでデータを一元管理できるツールなのかなという浅い認識だったのですが、利用してみると社内の広告運用に関する議論を活性化できた上に、あらゆる広告効果を最適化することができたと感じています」(土井氏)

あらゆるデータを連携し、統合マーケティングの実現を目指す

 各広告代理店とのやり取りがスピーディーになったのも大きな成果の一つだと土井氏は考えている。Datoramaの導入後は、広告主と広告代理店が同じタイミングで同じダッシュボードを見ながら「この媒体は効果が悪いからやめましょう」「こちらのメディアは入札単価を変えてみます」とリアルタイムに電話やDatorama上のメモ機能で話し合うことで解決できるようになり、意思決定のスピードが格段に上がったという。

 「一つのダッシュボードを基点にデータを見られるようになったことで、経営層含む、社内のあらゆる関係者にデジタル広告の効果をわかりやすく伝えられるようになりました。おかげで広告宣伝グループの取り組みに対する社内の理解が深まったように思います。社内でもDatoramaを見る癖がついてきましたね」(土井氏)

 同社は今後、Datoramaを活用してトリプルメディアのみならず、POSデータや気象データなどとも連携した、統合型マーケティングコミュニケーションにチャレンジしたいと意気込んでいる。2020年の夏商戦はどう展開されていくのか。同社のさらなる発展に期待だ。

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/06/10 10:00 https://markezine.jp/article/detail/33311