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MarkeZine Day 2020 Autumn(AD)

1年で1,300万PVへ!ユアマイスターの「オーディエンスビルディング型」新コンテンツマーケティング

 コンテンツマーケティングのトレンドは、サイト訪問者のコンバージョン獲得を最重視する「刈り取り型」から、オーディエンスが求めるコンテンツを発信して関係性を構築していく「オーディエンスビルディング型」へと、移りつつある。2020年9月1~2日に開催した「MarkeZine 2020 Autumn」では、オーディエンスビルディング型の新コンテンツマーケティング戦略を実践し、1年でPVを3倍に押し上げ、1,300万PVを達成した「YOURMYSTAR STYLE(ユアマイスタースタイル)」の加瀬健吾氏と、その施策を支援してきたFaber Company(ファベルカンパニー)の前田絵理氏が登壇。オウンドコンテンツを軸にSEOやSNSなど複数チャネルを活用し、オーディエンスとの関係構築で成果を伸ばしてきた成功事例が公開された。

コンテンツマーケティングの新潮流「オーディエンスビルディング」

 ハウスクリーニングや靴・カバン修理などのプロを検索・予約できる職人のECプラットフォーム「YOURMYSTAR(ユアマイスター)」の快進撃が止まらない。同ドメイン内で展開するオウンドメディア「YOURMYSTAR STYLE(ユアマイスタースタイル)」でのSEO集客や、SNSでの情報発信で顧客と関係性を構築し、ECプラットフォームへの流入を増やしている。この1年で流入は3倍に、CVは6倍へと急増した。

 同社が重視しているのは、「オーディエンスビルディング」の考え方だ。企業都合でサービスを売りつけるのではなく、まずはオーディエンスの役に立つ良質なコンテンツを出す。そして関係性を構築してビジネスゴールを達成していく、というマーケティングである。

講演資料より(以下、同)

 ユアマイスタースタイル編集長の加瀬健吾氏は役に立つコンテンツの作り方、そして集客につなげるための秘訣をSNS、SEO、CVの3軸に分けて語った。 

ユアマイスター株式会社 オウンドメディア編集長 加瀬健吾氏

SNS投稿は圧倒的な高品質で競合に大差をつける

 ユアマイスターが運営するInstagramのアカウントは22万フォロワーを突破、TikTokは11万フォロワーで人気アカウント9位(国内企業部門)に選ばれている。高評価のポイントは、「ユーザー目線を徹底的に追求しているところ」とFaber Company(ファベルカンパニー)の前田氏は分析している。

株式会社Faber Company ミエルカCS&マーケター 前田絵理氏

 たとえば、「石鹸でスニーカーを洗ってみた」というInstagramの投稿でもユアマイスターではリアリティーとわかりやすさを追求。1つの投稿に10枚の写真を載せて、ユニークな工程が伝わるようにしているのだ。1投稿にかける作業時間は、一般企業の平均30分~1時間程度に対し、ユアマイスターは4時間と少々長いが、エンゲージメント率は圧倒的な高さを誇っている

 一方、TikTokで重要なのはトレンドとの掛け合わせ方。流行している楽曲や、話題になっているチャレンジ企画は毎日チェックしているという。さらに「TikTokのメインターゲットは20代。大人が作っても共感を得にくいので、若いスタッフに任せることが非常に大切」と加瀬氏は語る。同社はメンバーの8割以上が、25歳以下だという。

 そしてInstagramとTikTokの両方で徹底しているのが、ハッシュタグの分析。競合アカウントを参考にし、分析ツールも駆使しながら傾向を把握している。ハッシュタグの数も多く、Instagramは上限の30個、TikTokは画面が埋まるギリギリの4~6個を付けるルールだ。

SEOにおいて大切な2つのポイント

 月間1,300万PVを誇る「YOURMYSTAR STYLE」は、SEOの成果も大きい。たとえば、「オキシクリーン」「エアコン掃除」「重曹」など月間検索回数10万回以上のビッグワードで、検索上位に表示されてる。つまり、たくさんのオーディエンスの目に留まるコンテンツを連発しているのだ。

講演資料より(タップで画像拡大)
※タップで画像拡大

 「オキシクリーンというキーワードからの自然流入数を調べた時は、(多過ぎて)パソコンが壊れているのかと思った」と笑う加瀬氏が、SEOで大切にしている2つのポイントを語った。

1、ユーザーのニーズ別にコンテンツを作る

 まず、検索ユーザーのニーズに、丁寧に応えるコンテンツを作ることは大前提。

 そのためのニーズ調査は、もともと手作業でやっていたという。たとえば、検索エンジンの検索窓に「エアコン掃除」と打ち込んだ後に出る2語目を参考にしたり、検索上位サイトやQ&Aサイトなどから地道に分析。これらのデータ分析は効果的だが、「調査時間がかかり過ぎて、本当に大変でした」と加瀬氏は振り返る。

 そんな時に知人の勧めでFaber Companyが提供するコンテンツマーケティングツール「MIERUCA(以下、ミエルカ)」を知ったため、導入を社長に直談判したのだという。「今まで1週間ほどかけて調べていたことが、15分程で表示されるので嬉しい!」と、調査時間の短縮効果を実感しているようだ。

 Faber Companyの前田絵理氏も、かつてはミエルカユーザーの一人だった。「私もミエルカの時短効果に驚きましたが、何よりも精度の高さに感動しました。現場ディレクターの工数削減はもちろん、ニーズ分類の質も上がりますよね」と語る。加瀬氏と前田氏ともに「特によく使う機能はこれ」と指名するのが、以下の検索ニーズ調査機能だ。

講演資料より(タップで画像拡大)
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ニーズの多さを「丸の大きさ」で、ニーズ同士の関連性を「丸同士の近さ」で表示するため、直感的でわかりやすい。

 検索ニーズを分類したら、1つのニーズに対して1つのコンテンツを作ることを、加瀬氏は大切にしている。「1つの単体キーワードを狙うのではなく、1つのニーズに1つのコンテンツを作るというのは、ビッグワードの攻略において重要なポイント」と前田氏も太鼓判を押す。 

 そして、この機能は調べたいサイトのドメインを入力すると、どのニーズグループが検索結果上で何位なのかも、色分けで表示される。

講演資料より(タップで画像拡大)
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最新の機能では、ニーズのグルーピングも自動で表示される(上記の「頻度」と「道具」の欄が分かれているように)。それぞれの検索順位も出るので、どのニーズを持つオーディエンスとの関係が構築できているのかチェックし、施策に活かせる。

 「“エアコン掃除”というキーワードに対する、多くのニーズをユアマイスターさんは網羅していることが、この機能の結果からもわかりますね」と前田氏。自社サイトだけでなく、競合サイトも分析できるため、ニーズのカバレッジ(どれくらい網羅できているか)比較も簡単に行うことができるという。 

2、圧倒的な当事者目線に立つ

 もう1つのポイントは、ユーザーの当事者目線でコンテンツを設計できているかを追求することだ。文章に「私たち」という一人称を使うといったテクニックのほか、「エアコン掃除というキーワードを調べた人は、夏の暑い日に会社から帰ってきてエアコンをつけた30代男性、一人暮らしかもしれない。缶ビールを飲みながら調べているのかもしれない……」といったように、ユーザーがどのようなシーンで検索しているか、細かいところまで想像するという。

 そうした想像をしていくと、導入部分ではエアコン掃除をしないとどうなるのか注意喚起をしたほうが良いのではないか……などと、コンテンツの方向性が自ずと決まってくるという。前田氏も「ユーザビリティというのは結構簡単に使われがちな言葉ですが、ここまで当事者目線を徹底して作られたコンテンツは多くありません」と絶賛する。

 当事者の目線で一緒に体験していく臨場感が、コンテンツの最初から最後まで維持されている。この理由を加瀬氏は「ほとんどの場合、ライターか編集者が写真を撮っているし、エアコン掃除などの企画内容も実際に体験しているんですよ」と説明。

 自分が体験し、良いと思ったことを写真に撮り、文章を編んで、コンテンツ化していく。こうすることで生まれるリアリティーがオーディエンスに伝わり、信用してもらえるのだという。 

昨年比6倍に伸長!コンバージョンを上げる2つのポイント

 ユアマイスターのオウンドメディアは、サービスページへの送客と問い合わせがコンバージョンポイント。一年前の数値と比較したところ、今年の春はコンバージョンが6倍に伸びた

 事業の主軸であるハウスクリーニングは、夏と冬がコンバージョンの大きく増える時期だ。今年は新型コロナウイルスの影響で住環境への関心が高く、業界全体に追い風が吹いているともいえる。だが、それを差し引いても「オウンドメディアなどからの流入によるコンバージョンは過去最高を記録しています」と語り、加瀬氏はコンバージョンを上げる2つのポイントも紹介した。

1、コンバージョンもニーズ別に

 まずは、ニーズごとにCTA(Call to Action)を使い分け、複数の動線でコンバージョンまでエスコートしている点だ。たとえばエアコン掃除へのニーズは「プロに頼みたい」と「自分で掃除したい」に二分される。プロに頼みたい人については、そのニーズがすぐに満たされるよう、記事の冒頭でECサイトにエスコートする誘導バナーを貼っておく。

 一方、自分で掃除したいと考えている人についてはどうなのか。「自分で掃除する方が正解というパターンもあり、それはそれでいい。でも、素人では綺麗にできないというケースも多くあります」と加瀬氏。そこで素人とプロの完成度の違いを見せる「プロはここまでやる」という関連記事を紹介するなど、別の動線から最終的にECサイトへとエスコートしていくと語る。

 ここで「私たちはコンバージョンへ“誘導する”という言葉を使いがちですが、“エスコートする”という姿勢がとても素敵」と前田氏。ユーザーがプロに頼んでみたいと心を動かす動線を作る上で、大切にしたい心構えといえるだろう。

2、膨大な種類のバナーを徹底的にABテスト

 加瀬氏が紹介するもう1つのポイントは、ニーズ別や季節別にバナーを用意し、徹底的にABテストを行うことだ。クリックされやすいバナーとは、初見のユーザーが見てもわかるようなデザインであえうことが多いという。しかし、自社のサービスを知り尽くしたマーケターやデザイナーであるからこそ、“わかりにくい”バナーを作ってしまいがちなので注意したい。加瀬氏は年末の大掃除のキャンペーン用バナーを例に、詳しく説明してくれた。

 まず、「プロによる大掃除」と謳ったバナーに換気扇、台所、お風呂の写真を載せたが、一体どこの掃除をするのかが伝わりにくい。スマートフォンの小さな画面では、何が映っているのかもわかりにくい。また「今なら29,800円」と値段を出しても、相場を知らない人にとっては、それが高いのか安いのかも不明だろう。

 そこで、換気扇を掃除している最中の写真を1点のみに絞った。換気扇を選んだのは、「最もプロの大掃除らしい画だったから」という理由だ。相場がよくわからない人にも伝わるよう、「今なら6,000円off」と具体的なメリットを記した。このような改善を加えた結果、CTRは200%増となった

 もう1つの事例として、時計修理のバナーの結果も共有された。ユアマイスターで扱う修理サービスは、靴やカバンなど幅広い領域を扱うため、ついすべての対応分野の写真を入れたくなってしまいがちだ。だが時計のみに特化したバナーを作ってみたところ、CTRが上昇。「パッと見て何のことかがわかるバナーを作ることが大事」と話す加瀬氏には、「でも、さらに改善するとしたら、時計のガラスが割れている写真にすると思います」と新たな改善案も浮かんでいる。

 快進撃を続けるユアマイスターの様々なノウハウを、余すところなく紹介した講演の最後に、前田氏は「オーディエンスの役に立つという大前提を忘れず、汎用性の高い加瀬編集長のノウハウを自社サイトの施策に落とし込んで、ぜひ実践してもらえれば」と締めくくった。 

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この記事の著者

田崎 亮子(タサキ リョウコ)

マーケティング&コミュニケーション領域の編集・執筆・翻訳を手掛ける。コミュニケーション領域の専門誌編集、コーポレートコミュニケーション領域の制作会社を経て、現在はフリーランス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/20 11:00 https://markezine.jp/article/detail/34264