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電通グループのデジタル領域3社が描く、DXの最前線(AD)

クロスセルが増加!資生堂と電通デジタルが取り組む新ロイヤルティプログラム構築

 事業戦略において高LTV顧客の維持・拡大が重要となる中、資生堂では同社が展開するコスメティクスブランド「クレ・ド・ポー ボーテ(以下、CPB)」において、グローバル展開を見込んだロイヤルティプログラムをローンチ。電通デジタルとDentsu InternationalのMerkle社の協力を得て、開発工数を減らしながらブランドイメージの一貫性を保つシステムの構築に取り組んでいる。グローバルスタンダードなプログラムの円滑なローカライズについて、その狙いや実現の方法をうかがった。

高LTV顧客の維持には実像を知るためのデータが必要

――今回のロイヤルティプログラムを設立された背景と課題をお教えください。

五島:弊社の展開する「クレ・ド・ポー ボーテ(以下、CPB)」ブランドは高額商品ですが、継続的に購入してくれる方を増やしていきたいと考えています。いかにファンを作りブランドに引き留めることができるかが一番大きな課題ですね。

資生堂 クレ・ド・ポー ボーテ ブランドユニット 事業戦略部 ブランド戦略G マネージャー 五島 和哉(ごしま・かずや)氏
資生堂 クレ・ド・ポー ボーテ ブランドユニット 事業戦略部 ブランド戦略G マネージャー
五島 和哉(ごしま・かずや)氏

五島:特にLTVの高いお客様を維持するためには、お客様の実像を正しく知り、タイムリーかつスピーディに対応することが重要です。しかしこれまでは、お客様がどのタイミングでどういった商品を購入されたかという詳細を簡単に確認することができませんでした。そのため、自分たちが実施しようとしている施策に合わせてより細かいデータを取れることが必要だと考えていました。

 それを実現する取り組みとして、CPBの新たなロイヤルティプログラムを立ち上げました。

ブランド価値を向上するための要件

――CPBの新たなロイヤルティプログラムの概要をお教えください。

原:「クレ・ド・ポー ボーテ メンバーシッププログラム」は、年間の購入ポイントやボーナスポイントの合計に応じてお客様のステージが変動し、ステージに合わせた限定アイテムを年間のギフトとして進呈するサービスです。大切なお客様に1年間の感謝の気持ちをお伝えすると同時にCPBブランドならではのラグジュアリーな世界観やワクワクする時間をお届けします。

資生堂ジャパン プレステージブランドマーケティング部 クレ・ド・ポー ボーテG原 由美(はら・ゆみ)氏
資生堂ジャパン プレステージブランドマーケティング部 クレ・ド・ポー ボーテG 原 由美(はら・ゆみ)氏

原:ポイントを貯める楽しさはもちろんありますが、単純にポイントを貯めて何かがもらえるプログラムではありません。お客様の日常の中でCPBをそばにおいていただくことで、お肌はもちろん生活の一部も潤っていることをご実感いただける体験をご提供したいという考えです。

――顧客側からすると購入に応じて「新しい体験が得られる」嬉しさがあり、企業側は高LTV顧客を維持できるのですね。このような体験を可能にするために、システム面ではどのような検討があったのでしょうか。

赤井:ブランド価値を上げるためには、お客様にどのような体験を提供していけばよいのかをロイヤルティプログラム全体で考える必要があります。グローバル展開をしても各エリアでお客様に提供する体験に乖離があってはいけません。CPBブランドの一貫性を持った体験を構築して提供するのが理想です。

資生堂 クレ・ド・ポー ボーテ ブランドユニット ビジネスプランニング&オペレーション部 コミュニケーションプランニングG 赤井 一興(あかい・かずおき)氏
資生堂 クレ・ド・ポー ボーテ ブランドユニット 事業戦略部 ブランド戦略G 赤井 一興(あかい・かずおき)氏

赤井:そのため、国ごとに事情が異なる海外マーケットにも幅広く展開することを見越したソリューションを1つの基盤として使いたいと考えています。その点、今回採用した「Loyalty Plus」は全エリアで一貫性を持ったプログラムの提供を可能にする選択肢でした。Loyalty Plusは、Merkle社が開発するロイヤルティプログラムに特化したSaaSソリューションで、多くのブランドが採用しています。

 Loyalty Plusを使ってみてよかったのは、自分たちで期間を指定すればすぐに日本のプログラムに合わせた形でデータが確認できるところ。実績の確認も容易です。各マーケットの顧客構成も本社がリアルタイムで把握でき、次のアクションにつなげられます。

ローカライズに必要なブランド理解と落とし込む力

――資生堂では、ロイヤルティプログラムの計画段階から電通デジタルに協力を依頼したとうかがいました。どのようなきっかけで同社への依頼に至ったのでしょうか。

五島:ニューヨークにある弊社全社のDXをつかさどるDigital Center of Excellenceにブランド全体のCRMの相談をしたところ、Loyalty Plusがロイヤルティプログラムのソリューションとして優れていることを知りました。

 Merkle社は、Dentsu International(旧:電通イージスネットワーク)のグローバルネットワーク・ブランドの1つで、テクノロジーを活用したデータ分析に強みを持つデータマーケティング会社。Loyalty Plusはそのオリジナルプロダクトで、全世界的なラグジュアリー市場において豊富な実績がありました。

 海外のプロダクトを使う不安感もありましたが、オウンドメディアの支援でお付き合いがある電通デジタルさんが導入の窓口になっていただけることと、プロダクト自体にアジアでの実績があったことで安心して取り組めました

伊関:Merkle社には自社開発のシステムであるLoyalty Plusの運用実績が既にあることから、戦略策定のノウハウも強みとして持っています。そのため電通デジタルでは、グローバルに使用されているプログラムを日本にうまくローカライズすることに注力していました。

電通デジタル オウンドメディアプランニング事業部 事業部長 伊関 淑恵(いせき・よしえ)氏
電通デジタル オウンドメディアプランニング事業部 事業部長 伊関 淑恵(いせき・よしえ)氏

伊関:弊社は以前にも資生堂様のオウンドメディアを支援させていただいていたため、CPBのブランドアイデンティティや資生堂様が大切にされているお客様とのコミュニケーション、あるいは一般ユーザーの日本市場におけるパーセプションなどを熟知しています。

 フロントエンドでデジタルでのお客様とのコミュニケーションや接点をどう見せていくかを強みにしているので、お客様のご意向、ブランドイメージをコミュニケーションにどう落とし込むかが腕の見せどころでした。

国内外での分担体制・密な調整でスムーズに

五島:Merkle社の高評価ポイントは、全世界に拠点があり戦略構築がグローバルな視点でできることです。米国の会社ですが、データサポートのチームが上海にあり、時差のない形できめ細かいサポートを受けられたのもありがたかった点です。

 電通デジタルは、フロントエンドの開発力・運用力が高く、Webサイトとの連携においてシームレスな体制を構築できました。また、Merkle社を含む関係各社ともきめ細かいご調整をいただいき、グローバルスタンダードのプログラムをスムーズにローカライズできました。

――ロイヤルティプログラムの計画から実装までどのような段階があったのですか。

五島:大きく分けて3段階あり、戦略フェーズではMerkle社のストラテジーチームを中心とした体制による戦略策定と制度設計。構築フェーズではMerkle社がシステム実装、電通デジタルさんがフロント制作を担当。運用フェーズでは、電通デジタルさんには運用サポート、Merkle社にはシステム保守をしていただいています。

独自のポイント制度で組み合わせ購入が増加

――ロイヤルティプログラムの中で新たな体験を生み出すために、キャンペーンなども合わせて実施されたのでしょうか。

原:日本人にとってポイント制度はきめ細かく作られているシステムです。お客様が店舗でもEC上でもCPBブランドを楽しんでいただけるように「特別なキャンペーンポイント」など両者をつなげられるようなキャンペーンをしたいと、電通デジタルさんと弊社スタッフの力を借りながら実施しました。Loyalty Plusに機能がない場合は追加の開発をしていきました。

五島:このプロジェクトで一番大事なのは、現実のリテールで弊社の美容部員からのご案内につなげることです。そのため今回のプロジェクトでは、ECとリテールのデータをハイブリッドで分析し、ポイントを渡している点があります。Loyalty Plusの基本のプランでは、1つのチャネルを中心に据えるのが基本でしたので、この組み合わせが難しかったですね。

ロイヤルティプログラム マイページ利用画面(イメージ)
ロイヤルティプログラム マイページ利用画面(イメージ)

五島:我々がおすすめしている化粧水と乳液の組み合わせの購入でボーナスのポイントを差し上げるキャンペーン構築をした際は、去年と比べても組み合わせで使っていただいているお客様の数が増えました。実績としてそういったメッセージングに効果が出てきています。

多チャネルを通じた体験のため既存システムと連携

――国内外のマーケットを想定してプログラム開発をされてきた中で、特に苦労されたのはどのような点だったでしょうか。

伊関:フロントエンドに関しては、日本の場合のお名前の表記は苗字が先、海外ではつけない「様」をつけるなど、慣習といった細かい部分まで担保する必要がありました

 バックエンドに関しては既存のデータベースとどう連携させるか、どうルール化しシステム化していくかが、一番労力の多かった部分です。資生堂様が既に開発済みの顧客データベース「watashi+」やアプリとの連携、導入済みのSalesforce Marketing Cloudなどを用いたコミュニケーション設計など、関係各所との調整を行いました。

 また、欧米の開発に対するアジャイル的な取り組み方と、完璧なものをリリースしようとする日本との取り組み方の違いの調整も必要でした。

――今後、ロイヤルティプログラムを通じ、どのようなことを実現したいとお考えでしょうか。

五島:ECをはじめデジタル化が加速する中、ブランドとお客様との関係構築についてボーダレスに考えなくてはならない時代だと思っています。法や制度的にはまだまだ難しい問題が残っていますが、お客様が世界中のどの場所のお店に来られても、肌状態やお好みなどのきめ細かいデータに基づいた接客ができるようなCRM構築が理想です。

 今回パイロットケースとして日本マーケットでローンチしましたが、将来的に同ブランドを日本以外のマーケットにも展開することも視野に入れ、統一されたブランド体験を実現したいと思っています。

――電通デジタルではロイヤルティプログラムでCPBのデジタル分野での成長をどのようにサポートしていくのでしょうか。

伊関:資生堂はお客様とのコミュニケーションやブランドイメージを大切にされながらも、デジタルに関してはとてもチャレンジングな、新しい取り組みをされています。

 我々オウンドメディアプランニング事業部としてはフロントエンドを構築するだけでなく弊社がこれまでに蓄積した知見を組み合わせ、新たにできることを想定しながら一緒にトライしております。今後、海外へ展開される際も電通グループのグローバルネットワークを活用したワンストップのサービスをご提供できればと思います。

体験価値向上を支援 電通デジタルの幅広い支援領域

 電通デジタルでは、本記事で紹介したソリューションの導入サポートやローカライズのように、顧客体験の戦略策定や全体設計を起点に、Webサイト、ECサイト、ソーシャルメディア、LINE、メール、DM、店頭ツールなど、あらゆる顧客接点を通した体験価値向上を支援しています。詳しい情報はこちらから。

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/01/26 17:49 https://markezine.jp/article/detail/35197