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顧客の意図に沿った「検索体験」で機会損失ゼロへ Yextに学ぶ、世界標準のPull型マーケティング

 企業のデジタルシフトが進む一方、顧客が公式な情報を効率的に得るための「検索体験」の重要性が高まっている。企業による検索への対策をPull型マーケティングとして支援する「Yext」の廣川氏は、今後の顧客体験の強化、ビジネス成長、コスト削減の実現に欠かせない要素だと述べる。「MarkeZine Day 2021 Spring」では、同氏がその背景や市場の動き、新たな対策の仕組みを解説した。

ここ数年で名だたる企業がPull型マーケティングを強化

 Welcia、ヤマト運輸、吉野家など、日本でも様々な業界の企業においてYextのソリューションの導入、およびPull型マーケティングの強化が進められている。廣川氏はその理由を「SEO対策ではなく、検索が重要になってきたから」だと語る。

 「情報を“構造化”することによって一元管理が可能となり、広告換算以上の効果が見込めます。顧客が求める情報を正しく発信していくための構造化は、Pull型マーケティング中でも特に重要なキーワードです」(廣川氏)

 廣川氏は今最も企業に求められているという「検索対策」について、順を追って解説した。

Yext セールスエンジニアリング部 セールスエンジニア 廣川侑氏
Yext セールスエンジニアリング部 セールスエンジニア 廣川侑氏

「Push型」の低迷と検索数の大幅な増加

 何かを知りたいと思った時、能動的に行っている「検索」という行動。廣川氏の示すデータでは、企業のウェブトラフィック流入元のうち、検索を通してのサイト流入は62%と高い数値になっている。

 テレビCMやWeb広告が起因となり、興味が湧くことで「検索」をするのは習慣となっているが、企業にとっては「顧客が求めている情報を正確に返す」という当たり前の体験が重要になってくるというわけだ。

 さらに廣川氏は、Push型マーケティングは効力がこれまでになく低下傾向にあるというデータも示した。過去に行われた調査で、消費者がメールの購読の解除したことがある割合は96%、何らかの形で広告を避けている割合は74%、広告ブロッカーの使用率は47%だったという。

 「Googleは2022年までにサードパーティクッキーを段階的に廃止していくと発表しています。リマーケティングやリターゲティングなどのデジタル広告に代わる手段として、ユーザーの検索の意図を理解して情報を提供することの重要性が高まっています」(廣川氏)

 またガートナーも2025年までに80%のマーケターがパーソナライゼーションの取り組みを放棄すると予測しており、今後は「顧客が検索した時に答えを返していく」ことがより求められるという。

 では、Pull型マーケティングをめぐる状況はどうだろうか。廣川氏によれば、年間のGoogle検索数は16年のうちに約300倍に膨らみ、音声アシスタントの利用(音声検索)も3年の間に3倍以上に増えている。

意図を捉えるマーケティングの重要性

 これらの検索にある意図を捉えることが、マーケティングにとってなぜ重要なのだろうか。廣川氏はまず、コンバージョンと検索の単語数の相関関係を示した。

 次のグラフの通り、「牛丼」「ランチ」といった単体のキーワードでは検索結果における企業・ブランド間の競争が激しくなり、コンバージョンしにくい。一方、「虎ノ門・ランチ・ワンコイン」といった3単語以上だと購買意欲が高く、検索エンジンによるランク付けもしやすくなるため、コンバージョンしやすくなる。事実、検索の70%は3単語以上で構成されているという。

 「短いフレーズのキーワードよりも3単語以上のロングテールはコンバージョンが2.5倍高いデータもあります。顧客が求める検索結果に対して、正しい情報を返すところがYextの目指すところであり、ユーザーも求めているところと考えます」(廣川氏)

検索結果は「リンク」から「答え」に変化

 当然、過去にも検索対策は行われてきた。しかし現在では、検索エンジンのアルゴリズムの変化したことで「これまでのSEOセオリーは通じなくなった」と廣川氏は述べる。実際、SEOコンサルタントの66%が検索キーワード毎にランキング要因が異なると回答しているという。

 また、検索結果にも変化が現れている。10年前までは主にテキストリンクが表示されたが、現在ではたとえば「ビッグマックのカロリー」と検索した場合、「563kcal」という具体的な数字、さらに近所の店舗地図が結果に出てくるなど、検索結果は「リンク」から「答え」に進化している。

 この変化には、2012年にGoogleが発表した構造化データベース「ナレッジグラフ」が大きく関わる。構造化データベースでは、サイト内の情報において「牛丼」というワードがメニューであること、「テイクアウト」がサービスの提供方法であることといった、情報の定義づけをする

 Googleの検索エンジンでは、このように情報が定義づけされているため、任意の情報を探し出すことが可能になり、たとえば「渋谷区 牛丼 テイクアウト」と検索すると、地域にある店舗やメニュー、サービスの提供方法を求めていると判断され、最適な「答え」が検索結果として表示される。

 検索エンジンが情報を正しく理解するために、Webサイト内の情報を構造化していくことで、Googleを始めとする検索エンジンが正確にWebサイトの情報を取得可能になるのだ。

 Fortune500企業におけるWebサイトの構造化対応状況によると、日本は1.9%と特に後れをとっている。だからこそ「早いタイミングからこの取り組みをすることで、競合他社と差別化できる」と廣川氏は語る。また、顧客のカスタマージャーニーのステージによって異なる”意図”に寄り添い、かつ“正確な”情報を、検索を通じて提供できることが今後のビジネスの成否を大きく左右すると主張した。

正しい情報の提供で「機会損失をなくす」仕組み

 こうした背景の中、YextではKnowledge Graph、Answers、Pages、Listingsから構成される検索プラットフォーム「Search Experience Cloud」を提供している。

 まず、「Yext Knowledge Graph」で企業独自のナレッジグラフ(構造化データベース)を構築し、情報を定義づけする。そして、Yext Knowledge Graph内にある店舗や拠点の情報を175以上の検索エンジン・SNS・マップ・アプリへ一括配信する「Listings」や構造化されたランディングページの構築・運用を行える「Pages」といった製品を通じ、自社の公式な情報をGoogleなどのナレッジグラフに渡す。これにより、ユーザーが検索した時に正しい答えを返すことができる。

 自社情報が、顧客に誤って伝わることは企業側にとって機会損失に繋がる。企業やブランドの公式な情報をYextの検索プラットフォームからインプットし、その情報がGoogleのナレッジグラフの中に格納されれば、検索エンジンが正しく情報を獲得でき、検索結果に好影響を与えることが可能になる。

 また、Google以外の複数の情報提供メディア(FacebookやInstagram、Appleのマップなど)にも店舗や拠点の正確な情報を送ることで情報の統一もできる。これも各媒体における情報の信頼性を高め、検索結果に好影響を与えられるという。

自社Webサイト内の検索体験が与える影響

 廣川氏は検索メディアおける検索に続いて、企業Webサイト内の検索にも言及した。

 廣川氏が示す企業のウェブトラフィック流入のデータによると、直接流入は29%に上り、流入者はサイト内で情報を探し求めていることがわかる。しかし、サイト内検索を設置している企業は多い一方、より良い検索体験のためのPDCAを回している企業は少ないという。

 従来のサイト内検索では、サイト内をクローリングし、検索ワードがマッチしたサイトのリンク一覧を表示することが大半だった。

 しかし、キーワードに反応してしまい、たとえば「求人 東京」と検索しているにもかかわらず、「求人」だけに対応して大阪の情報を表示したり、「東京」に対してセール情報が表示したりするなど、一部一致となっていた問題があった。

 これにより、サイト内での質の低い検索に不満を持っている人は86%にもなるという。再訪問したくないという人も7割に上り、その結果、検索サイトに逆戻りし、他社サイトに流れるなど、検索が収益を促進するはずが逆に悪影響を及ぼしかねない。

 しかし、検索を行うユーザーこそが最高の顧客になるとも廣川氏は語る。検索を行うユーザーはコンバージョンが約2倍で平均単価も高いのも特長なのだという。

収益を促進するサイト内検索という新たな世界観

 Yextでは、検索メディアにおいて検索体験を向上するListingsとPagesのほかにも、自社サイト内で最適な答えに導くことを可能にする製品として「Answers」を提供している。

 サイト内検索のAnswersでは、顧客の検索意図を捉え、関連する答えをセクション分けして提示することで、問題を解決するのと同時に収益への導線を敷く

 廣川氏はデモ動画を使い、Answersを導入したWebサイト内で「コロナ マスクメイク おすすめ」を検索する様子を見せた。この検索結果では、マスクメイクの崩れを防ぐ「商品」の紹介のほか、悩みの解決方法を示した「FAQ」、試してみたいが購入までのハードルが高いと感じる人に向けたモニターキャンペーンといった「申し込みの動線」、オフラインの送客を促す「近くの店舗情報」や「経路検索」なども表示している。検索ひとつで最終的なコンバージョンまでつながる導線を提供できることを示した。

 またAnswersでは、検索体験が向上するだけではなく、顧客が実際に何を検索したのかという情報も蓄積される。これにより、検索した情報に対してクリックの有無やどういった情報を返したのかを確認でき、サイト内コンテンツのPCDAが回せるようになる。

 廣川氏が挙げたイギリスの大手通信会社の事例では、こうした取り組みの結果、コンバージョン率が改善。サイト内検索を使用しない顧客と比較してAnswersを使用した顧客のコンバージョン率(購買率)は+2.2倍になったという。また米国州政府の事例では、サイト内検索を使用しない顧客と比較してAnswersを使用した顧客のサイト滞在時間は+3.7倍、コンテンツの閲覧量は+1.6倍というデータを紹介した。

 「求められているものがシンプルに返せているため、他社Webサイトを見る必要がなくなり、結果、自社サイトのコンテンツ閲覧量が増えます」(廣川氏)

 Yextでは自社サイトにもAnswersを導入。その結果、GoogleにおいてYextブランドの検索数が34%減少したという。廣川氏によると、これは自社サイト内でユーザーが求める情報を提供できている証拠であり、Googleに戻ってYextを検索し直す必要がなくなったことを示しているという。

  廣川氏は「Pull型マーケティングを実現していくには、検索エンジンと自社サイトの両面で顧客の求める情報を正しく提供すること、それらを数値的に証明できる仕組みを持つことが重要」と述べ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

西原 小晴(ニシハラ コハル)

 京都府立大学農学部出身。前職は大手印刷会社にて化学物質管理のシステム開発&管理者。退職後、化学・建設・環境法規制などの知識を活かして大手企業のライティングを行う。現在はリードナーチャリング、セールスライティングをメインとするマーケターとして活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/22 12:00 https://markezine.jp/article/detail/35897