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MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

その顧客データ、マーケティングに利用して大丈夫?押さえておきたいデータ管理の基本と取るべきアクション

 9月7日に行われた「MarkeZine Day 2021 Autumn」より、SAPのセッションレポートをお届けする。「その顧客データ、マーケティングに利用して本当に大丈夫ですか?~グローバルブランド事例に学ぶID統合、同意管理、データ活用プラットフォームの在り方~」と題されたセッションでは、世界中で進むプライバシー保護対策を前に、企業が抱えるデータ管理の課題と取るべきアクションが語られた。

顧客からの信用度が低い、企業のデータ活用

 2018年に、顧客との様々な接点を一貫して管理し、最適なカスタマーエクスペリエンスを創出する次世代のCRMソリューション「SAP C/4HANA」を発表したSAP。現在では「SAP Customer Experienceソリューション」にリブランディングして提供している。本セッションでは、世界中で取り組みが進む個人情報保護を踏まえ、そのソリューション群の中核となる「SAP Customer Data Cloud」を活用し、GDPRに100%準拠して顧客データをマーケティングやビジネスに活用するグローバルブランドの事例が紹介された。

 冒頭、スピーカーのSAP阿部智亜氏は、企業へのデータ提供に関する顧客の本音を明かす。調査によると、実に80%以上の顧客が「企業はデータ保護を徹底すべき」と考えており、また「自身のデータが企業にどう利用されているのかを自分自身で管理したい」「個人情報の提供は利点よりリスクが大きい」と感じているという。

当日の投影資料より(以下、同)
当日の投影資料より(以下、同)

 顧客に信頼してデータを預けてもらい、ビジネスに活用していくことは多くの企業が目指すところだが、実際には様々なデータ管理の壁が存在する。

 たとえば、顧客の同意を取りデータを取得するタイミング。デジタルコミュニケーションが主流となる中、顧客が取引や購買に至るまでの接点は平均して6ヵ所あり、今後も増えていくと見られている。さらに、集められたデータはサイロ化されたデータベースに蓄積され、分散していく。その管理データ量は、約165TBにも及ぶという。

 つまり、データ取得は複雑さを増し、厳密な管理も追いついていないのが現状だ。よって、企業のデータ利用を信用できると考えている顧客は、40%にも満たない。

データの主体は顧客。居住国の法律に準拠する必要も

 一方、世界中で個人情報保護の法律が続々と誕生している。たとえば、個人情報保護のベンチマークと呼ばれるヨーロッパ圏を対象としたGDPRや、ブラジルのLGPD。日本でも、2020年に個人情報保護法の改正が成立し、2022年4月に全面施行予定である。これらの法律に共通する基本的な考え方は、「顧客のデータは顧客のものである」ということだ。

 「サービスを利用するとき、顧客は氏名や住所、メールアドレスなどを登録し、プライバシーポリシーや利用目的の範囲に対して同意します。対して企業は、明らかな同意の証拠を保管する義務がありますし、その保存に透明性を確保しなくてはなりません。さらに、利用目的が変わったならば、その都度新たな同意が必要です。これらを管理するため、顧客情報管理のデジタル化・システム化は不可欠です」(阿部氏)

SAP アジアパシフィックジャパン カスタマーデータマネージメント センターオブエクセレンス 阿部智亜氏
SAP アジアパシフィックジャパン カスタマーデータマネージメント センターオブエクセレンス 阿部智亜氏

 GDPRを例に補足すると、データの主体者である顧客の権利は、データへのアクセス要求権、訂正要求権、消去要求権など多岐にわたる。そして、自国の法律だけが遵守対象ではない。日本でビジネスを展開する企業であっても、海外から利用できるサービスの場合、顧客が居住する国の法律に対応することが求められる。

 つまり、マーケティングやビジネスにデータを活用するには、各国のプライバシー保護法の対応と顧客を中心とした同意管理機能、セキュリティ対応型認証と、顧客から預かった情報を安全に保管するセキュリティ対策など、すべてのレイヤーにおいてプライバシーを守り、セキュリティ担保を整える必要がある。

データ活用に必須な同意管理の仕組みとは?

 もう少し、同意管理を分解してみよう。

 SAPでは、同意管理の仕組みを大きく4つの枠で設計している。1つ目は、顧客自身がデータ削除や編集などができる、セルフサービス型のデータ管理。マイページを想像すると良い。2つ目は、利用規約やプライバシーポリシー、マーケティング活動への同意が適切なタイミングで適切な相手から取得できる、同意・プリファレンスの機能。3つ目が、システム全体との連携。そして4つ目が、同意のバージョン管理だ。

 このような仕組みを揃えた上で、「データをMAやCRM、Eコマースなどのシステムやサービスとつなげ、お客様がシームレスに安心してサービスを受けられる環境を作る必要があります」と阿部氏は語る。

 特にGDPRは、世の中で最も厳しい個人情報保護法と言われている。が、裏を返すと、GDPRを100%準拠した顧客ID&同意管理ができれば、データを活用した信頼のおけるマーケティングやサービスを確立できるのだ。

無人コンビニの顧客をアプリで管理するスイスのValoraグループ

 続いて阿部氏は、「100%GDPR準拠、顧客データは新たなビジネスモデルの構築にした成功例」として、2つのグローバルブランドの事例を紹介した。

 1社目は、スイスに本社を置くValoraグループだ。ベーカリーなど食品製造事業でも知られる同社は、ヨーロッパ圏で2,700社以上のフードコンビニエンスストアを運営し、1日に平均50万人の顧客が利用する。そんなValora が、2019年に新規事業としてスタートしたavec boxは、いわば無人のキオスクだ。

 買い物の流れは、次の通り。まず顧客は、自分のスマートフォンにアプリ「avec app」をダウンロードし、顧客情報として身分証明書とクレジットカードを登録する。店舗を利用するときは、入り口でアプリを立ち上げQRコードをスキャンして入店。顧客自身が商品をスキャンするとアプリ上に表示されたショッピングカートに追加され、登録されたクレジットカードで決済する。

avec box(クリックで再生)

 avec boxは、自分の好きな時間に軽食を取りたいというニーズや、人的リソースの最適化、新規出店エリアの拡大などにも貢献。駅構内という立地から地元生産者との協業も生まれているという。

GDPR100%準拠の顧客データがビジネスにもたらすメリット

 では、avec boxの顧客IDと同意の管理、データ活用を見ていこう。avec boxの基本コンセプトは、顧客のプロファイルを中心に置き、カスタマージャーニーに沿ってGDPRに対応した事業を実現することだ。

 たとえば、アプリダウンロードとユーザー登録時には、アプリの利用規約、プライバシーポリシー等の基本条項に加え、登録した個人情報の利用目的に対する同意を取得する。さらに来店時には「店舗利用データや決済情報をマーケティングに活用してよいか?」という同意を得て、利用履歴に基づくレコメンデーションを実行。一般プロファイルに加え、居住地、利用店舗、購買履歴、利用頻度、時間帯などのデータを、出店計画や品揃え、在庫の調整、新サービス開発やマーケティングに活用し、利用者の利便性向上および事業の効率化に役立てている。

 SAPは、Valoraのこの取り組みをSAP Customer Date CloudをはじめとしたSAP Customer ExperienceソリューションおよびSAP Business Technology Platformを中心に支援している。

 「アプリでは、お客様自身でいつでもデータの閲覧や編集、削除、移行ができます。また、登録時に居住地の選択をすることで、お客様に適したプライバシーポリシーの対応が可能です」(阿部氏)

 さらに阿部氏が言及したのは、GDPR100%に準拠したことでのメリットだ。「GDPRに準拠した形で信頼を構築し、1to1のパーソナライゼーションを実現できたことにより登録率が20%以上向上した」と阿部氏。その上、顧客からのフィードバックが多く集まるようになり、新規サービスの開発スピードやサービスの成功確率にも繋がっているという。

グローバルで顧客IDを管理し、統一した顧客体験を提供するドテラ

 2社目の事例は、アメリカのユタ州に本社があるエッセンシャルオイルの大手ドテラ(doTERRA)だ。同社は、美容ビジネスオーナーやサロン経営者などのプロシューマー向けに、ダイレクトセリングモデルを展開し、45ヵ国で調達したオイルを、世界100ヵ国以上に出荷している。

 ドテラは、年間成長率25%以上と急成長のまっただ中。毎年100万人以上の会員増加があり、取引先企業も増え続けている。同社は、この急激なビジネス成長に対しても、グローバルで統一した顧客体験を提供したいと考え、顧客IDプラットフォームの構築に着手した。

 ドテラのフォーカスポイントは3つ。1つは、サプライチェーン、会計、人事計画制度の向上。2つめは、顧客体験・カスタマーサービスレベルの維持。そして3つめは、Eコマースのパーソナライゼーション実現だ。

 これまでのドテラは、各国それぞれで顧客登録の接点を運営し、マーケティングやビリングなどのシステムにデータを連携していた。そこで、まずは顧客登録の窓口をグローバルで集約。顧客IDの発行から利用規約の合意履歴を統一して管理する仕組みへ移行し、同一レイヤーから各システムへデータを連携する環境を整えたという。ビジネスが急成長する中でも、顧客の体験を損なわず、データのプライバシーも安全に維持する顧客IDプラットフォームが誕生した。

 その結果、ドテラは様々なメリットを得ているという。まずは、カスタマーサービスの改善と実行スピードの向上。そして、顧客動向に応じたサプライチェーンや人事設計の実現、事業計画精度の向上だ。さらに、バックエンドシステムとの連携工数やコストの削減も実現した。

 しかしながら、「ID統合や同意管理の徹底が、本当に事業の成長へ結び付くのか?」の疑問は浮かぶだろう。阿部氏は一般的な話と前置きして、「CXに投資している企業は、そうでない企業に比べて成長スピード、コスト低減、利益の創出に差が出ている」と言及。また、「ID統合と同意取得管理の徹底は、サービスの利用頻度やLTVを伸ばすことにもつながる」とその重要性を説く。

顧客と企業の信頼関係を結ぶSAP Customer Data Cloud

 終わりに、SAP Customer Data Cloudのデモが行われた。

 SAP Customer Data Cloudは、ID登録から認証、認可、同意管理とデータ統合〜活用までを実現する顧客データ管理ソリューションだ。本日のセッションで語られてきた、個人情報の取得、管理、運用する上で必要な、最高峰のプライバシー保護およびセキュリティ環境を提供。GDPRを始め、主要各国の法規制対応や認証を取得し、現在はそのプラットフォーム上で32億IDを管理し、月間113億の同意情報処理を行なっている。グローバル企業が安全且つ効果的に顧客データを活用する為のソリューションを提供している。

 「SAP Customer Data Cloudの考え方は、お客様と企業の間に信頼関係を結び、最高のカスタマーエクスペリエンスを提供すること。お客様が安心してサービスを利用でき、かつ自分のデータを安心な形で企業に預けて、パーソナライズやサービス向上に活用してほしいと思えるような関係作りをご支援します」(阿部氏)

 データを用いた顧客体験の創出やマーケティングは、ID統合や各種の同意管理を前提とした上で成り立つ。阿部氏は、それをシームレスに成り立たせるSAP Customer Data Cloudの強みを提示し、セッションを締めくくった。

「SAP CX DAY 2021」開催!

 SAPジャパンは、企業のCX向上を支援するイベント「SAP CX DAY 2021」を2021年11月18日(木)13:00よりオンラインにて開催します。アシックス、エイチ・ツー・オー リテイリング、Mizkanなど、カスタマーサクセス、従業員満足、企業としてのパーパスを追求しつつ新たに事業成長の基盤を築いている先進企業より、その取り組みをご紹介いただきます。

【開催概要】
イベント名:SAP CX DAY 2021
開催日時:2021年11月18日(木)13:00 〜 | オンライン開催
詳細・参加お申し込みはこちらから

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/18 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37308