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専門のMA担当部門はあえて置かない、東洋インキグループのEloqua活用とは?

 扱う製品が違えば、売り方もターゲットもまったく異なる化学メーカーの特性上、あえてデジタルマーケティングの専門部隊を置かず、各事業部が独自に運用するユニークな体制でOracle Eloqua活用を行う東洋インキグループ。組織横断のDX推進から、MA活用もレベルアップを続ける同社の取り組みと効果を東洋インキSCホールディングス、トーヨーケム、日本オラクルに取材した。

東洋インキグループのEloqua活用とは

MarkeZine編集部(以下、MZ):本日はOracle Eloqua(以下、Eloqua)導入・活用について伺いますが、まずは皆様が担当されている業務内容と、Eloqua活用においてどのような役割を担っているのか教えていただけますか。

写真左より、東洋インキSCホールディングス株式会社 グループ経営部 水野翔太氏、同社グループ広報室 横井郁氏、トーヨーケム株式会社 情報・通信材営業本部 新システム営業課 課長 大里耕太郎氏、日本オラクル株式会社 クラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 第四営業部 担当営業 岡村大輔氏
写真左より、東洋インキSCホールディングス株式会社 グループ経営部 水野翔太氏、同社グループ広報室 横井郁氏、トーヨーケム株式会社 情報・通信材営業本部 新システム営業課 課長 大里耕太郎氏、日本オラクル株式会社 クラウド・アプリケーション事業統括 CXクラウド事業本部 第四営業部 担当営業 岡村大輔氏

水野氏:東洋インキSCホールディングスでグループ経営部に所属しています。現在は直接Eloquaと関わりはないのですが、2019年から2021年の間、Eloqua導入のきっかけとなった、デジタル化/DXを推進する部門横断プロジェクトに参加していました。特に営業・マーケティング領域において、同席している大里と私が中心となって社内で様々な活動を進めていたので、本日はその部分を中心にお話ししたいと思います。

横井氏:ホールディングスのグループ広報室に所属しています。広報室自体はグループ全体のPR、IR、SRの発信を担う部署です。私はPR業務全般を担当しており、当社グループのWeb企画なども行っています。横串プロジェクトの終了に伴い、一部の業務を広報に移管することになり、Eloquaで発送するメールやランディングページ(LP)作成時の確認などに携わっています。

大里氏:私は東洋インキグループで、ポリマー・塗加工関連品の開発・販売事業を手掛けるトーヨーケムに所属しています。2021年まではホールディングスの水野と共に横串プロジェクトを担当し、デジタルマーケティングの普及・活用を担当しました。プロジェクト自体は終了しましたが、現在は、トーヨーケムのマーケティングの一環としてデジタル施策を取り仕切る業務を兼務しています。

MZ:グループ全体でEloquaの導入・普及に取り組んだ後、運用に関しては各事業会社が行い、全体をグループ広報室が見ているわけですね。専任のデジタルマーケティング部門などは置いていないのでしょうか?

水野氏:専任の部門や担当者は置かず、実際に事業実務を担当する社員が兼任でデジタル施策に取り組んでいます。

MZ:ありがとうございます。では最後にオラクルの岡村さん、東洋インキグループさんとのご関係と担当業務についてお願いします。

岡村氏:私は日本オラクルでデジタルマーケティング支援製品の導入のご提案、その後の活用支援を担当しています。東洋インキグループ様に関しては、導入時からの担当営業として本プロジェクトでは導入とその後の活用支援を担当いたしました。

組織横断のDX推進から、MA活用もレベルアップ

MZ:今回のEloqua導入の背景には、どのような課題があったのでしょうか。

水野氏:大前提として、私たちはケミカルメーカーとして常に新しいビジネスと顧客を創出し続ける必要があります。しかし、その実現は容易ではありません。また、コロナ禍以降はリアルでの営業が展開できない中で、新しい売上を作るという現実的な課題にも直面しました。そこで、先程申し上げた、グループ横串でのDX推進プロジェクトの中で2019年より営業・マーケティング領域でのデジタル化活動が始まった流れがあります。

 当時は過去既に導入していた簡易的なMAツールを活用し、LPを作り、名刺を取り込んでメールを出して反応を見るといった活動を、デジタル化に賛同した事業部門と進めていました。しかし、デジタルマーケティング活動が活発になるにつれ、新しい要求が出てきました。例えば、事業部をまたいだツール活用をしようとすると、顧客セグメントの管理やアクセス分析などに問題を感じる面が出てきました。

大里氏:当時のツールだと、キャンペーンメルマガ開封率の確認ができませんでした。既存のメーリングリストの活用も難しく、事業会社の新しい製品情報を既存顧客に届けることもできませんでした。特に、当時は社会情勢的に展示会も開催できず、情報を届ける手段が非常に貧弱だったのです。そこを解決したいと考えました。

水野氏:そこで、もう少しレベルアップしたツールを導入することにしたのです。

事業部/事業会社ごとに運用できるEloquaを採用

MZ:なぜ、Eloquaを選んだのでしょう?

水野氏:グループの各事業会社や各部門が独立して使うことを想定していたので、リードやセグメントを事業部別に分けて管理できる点に惹かれました。また他社での実績が豊富なので、岡村さんから日系の化学メーカーや製造業の事例を伺い、立ち上げや運用のコツなどの情報をいただいたので、それも安心材料として大きかったです。

岡村氏:Eloquaの場合、メールやLPの制作に関してはHTMLなどの専門知識がなくても使うことができるので、事業部の方々も運用しやすいメリットがあります。加えてカスタムテーブルを活用しながら事業部単位で柔軟にデータ管理や拡張を行えることはもちろん、後々の海外展開を踏まえ、アクセス権限の設定をかなり細かくできるなどセキュリティ面もご評価いただけたポイントだと思います。

Eloquaの特徴
Eloquaの特徴

オンラインイベントのPV数130%、問い合わせ件数も2倍に

MZ:ホールディングスではEloquaをどのように活用されているのですか?

横井氏:グループ全体の展示会「Value Showcase」の集客で活用しています。ちょうどEloquaの導入と重複する時期に、展示会のオンライン化が進んでいました。そこで、使ってみることにしたのです。

 2021年7月の第1回の際は導入直後で手探り状態だったこともあり、第2回Value Showcaseでも再びEloquaを活用しました。2022年2月に開催したのですが、今回はエレクトロニクス分野がテーマでした。そこでEloqua登録済みの約7万件の名刺データを業種やお客様のキーワードからエレクトロニクス領域に絞り、案内をお送りしました。結果、製品ページのPV数が前年比30%増、問い合わせ件数も2倍に増えました。

 またイベントは、URLを知っていれば誰もが事前登録なしに視聴できる完全オープン型だったのですが、Eloquaに登録済みのお客様に関しては、いつ来場して何を視聴したのか、その後の資料ダウンロード状況はどうだったかなど把握できるので、イベント全体の動向を推定しやすかったのも良かったと思います。

Eloquaでメルマガ配信、問い合わせ件数もノウハウも増加中

MZ:トーヨーケムでは別用途でEloquaを活用されているとのことですが、具体的にどのように使っているのでしょうか?

大里氏:基本的には月1〜2回、製品のキャンペーンメールを配信しています。運用体制は私を入れて兼任者が2〜3名でメインチームを組んでいますが、コンテンツ作りは各事業部の若い社員が中心となって作成しています。体裁を整えて配信し、結果をフィードバックするのがメインチームの役割ですね。メールの成果についてはコンテンツ担当者とも共有しています。

MZ:その方法は社内でデジタルマーケティングのノウハウがしっかり蓄積できそうですね。成果はいかがでしょうか?

大里氏:メール開封率や問い合わせ件数などのKPIは設けていますが、社会のトレンドやタイミングもあるので、結果は良し悪しがあります。しかし、メルマガを配信するようになってから問い合わせ件数も増えてきているので、手応えを確実に感じています。また、通常の営業活動にプラスして、各営業担当が新しいコンテンツを考える環境が生まれつつあります。

自主性と統一感、両方を維持

MZ:大きな事業体のツール活用を考えた時、ホールディングスが統制を取りながら、事業会社が自由に活用する体制は一つの理想形だと思います。一方で、バランスを取るのが難しい部分もあると思います。運用に当たり、工夫されているポイントはありますか?

水野氏:確かにバランスをどう取るかは悩ましい問題です。現状はこの体制ですが、これが最終解だとは思っていません。ただ、化学メーカーは事業部や部門ごとに扱う技術も顧客も異なり、各部門が責任を持って事業を回すという形態と文化があります。そのカルチャーに合わせると、現状では専門部署を置かない体制がベストなのかもしれません。

 この体制でのメリットは、製品やビジネスのことを一番理解している現場の人間がデジタルマーケティングの活動を行うので、施策の中身も現場に即したものになります。また当社の場合は広報室という取りまとめ役が同じオフィス内にいるので、コミュニケーションを取りやすいというのも運用面でのメリットです。

大里氏:私はこの形がやりやすいですね。現場で施策を回して、メールの表現や工夫などは、広報がしっかり見てくれるので安心です。

横井氏:そうですね。お客様との1対1のコミュニケーションは確かに事業部の得意分野ですが、メールは1対マスのコミュニケーションです。その知見は広報が多く持っています。この観点から表現面でのアドバイスをしたり、事業部の独立性を重んじつつもグループとして守るべき一定のラインを設定し、判断できていると思います。

MZ:岡村さんは様々な企業のクライアントと向き合っているかと思います。東洋インキグループにおけるEloqua活用の特長や、他社が参考になる点はどこでしょうか?

岡村氏:グループ横断のDX推進プロジェクトを展開し、複数のグループ会社・事業部の方々がタスクフォースを作って導入を進められた点は、どの企業でも参考になると思います。事業部でビジネスが異なる反面、共通の目標や目的を持って動いたことが、Eloquaのスピーディーな導入・活用につながった要因だと思います。

 また、個人的にうまく活用が進んだポイントだと感じているのが、PRの知見を持つ広報部門の方がメールの校正やコンテンツのクオリティチェック含めたMA運用の統括をしている点です。MAを運用するにあたっては、マーケティング専任組織の必要性が叫ばれることもありますが、専任でなくても広報の皆様の知見を活用して成果を出しているのは珍しいケースだと感じています。

グループ全体でさらなるEloqua活用の底上げを推進

MZ:最後に、今後のEloqua活用やデジタルマーケティングの展望を伺えますか?

横井氏:全体としてレベルアップできる余地はまだあると思うので、今後は「どういう企画を届けるのか」「それは本当にビジネス戦略に適した企画なのか」などを踏まえ、全体的な底上げを目指していきたいと考えています。Eloquaのスコアリング機能についても理解が進んできたので、事業部で使いやすいようにテンプレート等を作成し、展開したいと考えています。

大里氏:今回の取り組みを一過性の事象として終わらせたくはありません。営業活動の1つのツールとして定着していって、Eloquaを通じて新しい製品と新しいお客様をつなげ、売上が拡大していくサイクルをしっかり回していけるように、引き続きチャレンジを繰り返しながら進めていくつもりです。

水野氏:長期的視点に立って考えると、横井が言うようにマーケティングスキルの底上げに注力する必要があると思います。現在の活用は既存の製品や技術ありきでの活動ですが、企業として求められているのは、戦略的にターゲットとすべき市場切り拓いていくことです。すると、Eloquaの使い方にも、これまでと異なる発想が求められます。

 単発の製品紹介メールだけではなく、長期視点に立ったコミュニケーションを目的とした運用のためのレベルアップとステップアップをしていきたいですね。

MZ:Eloquaを活用した新規開拓や新企画を考えると、今後も様々な取り組みが生まれそうですね。日本オラクルとしては、今後、どのような形で東洋インキグループを支えていくのでしょう?

岡村氏:Eloquaは多種多様なデータを格納して活用できるほか、大量データを処理してもパフォーマンスが落ちないといったインフラ面でのメリットも大きいです。グループ全体のイベントはもちろん、各事業会社が開催するイベントやセミナーのデータも統合して蓄積していき、より精緻なセグメンテーションを実施するなど活用の幅を広げるお手伝いをしていくつもりです。

 マーケティングソリューションという点でいえば、新規集客のための広告ソリューションや、Eloquaからの訪問者を誘導するWebコンテンツのパーソナライズソリューションなど、トータルでご支援できることと、また化学業界でのお客様も多い領域なので定期的なユーザー会の開催などを通じて、より高次のデジタルマーケティング実現に向けて、包括的なご提案ができると思います。様々な角度から、東洋インキグループ様のEloqua活用を今後もご支援していきたいですね。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/04 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39427