マーケティングになぜ「パーセプション」が重要なのか
今回紹介する書籍は『パーセプション 市場をつくる新発想』(日経BP)。著者は、本田事務所の代表のほか、PRストラテジストである本田哲也氏です。同氏は他にも国連機関や外務省のアドバイザー、Jリーグのマーケティング委員などを歴任。カンヌライオンズでは、公式スピーカーや審査員も務めています。
商品やサービスのコモディティー化が進む昨今、認知の獲得だけでは消費者の心を動かすことが難しい状況になってきました。そんな中、本田氏は認知活動に加えて「世の中から商品・ブランドに向けられる認識、つまり『パーセプション』の正しいコントロールスキル」が重要だと主張しています。加えて、パーセプションを変えることは新しい市場を創造するうえでも欠かせないと続けました。
なぜ今、パーセプションに注目すべきなのでしょうか?
今こそパーセプションに注目すべき3つの理由
本田氏は、パーセプションの重要性が高まっている理由として次の3点を挙げました。
まず挙げられたのが、現代は「メタ認知」をすることが非常に重要になっている点です。SNSや仮想空間に触れる機会が格段に増える中、企業やブランドと消費者の関係は、よりフラットになっていきます。そのため「企業やブランドが自己を客観的に見つめ直し、パーセプションの理解と把握をしなければならない」と本田氏は指摘しました。
次に、社会との接点の重要性が高まっている点を指摘。パーパスやSDGs・ESGが注目を集め、企業は実績などファクトの積み上げによって社会的な信頼を得ることが重要になっています。その中で本田氏は「信頼を獲得するには、パーセプションの理解が不可欠」だと主張しました。
3つ目は、現代のマーケティングで「長期的でしなやかなブランド管理」が求められている点です。目まぐるしい変化が起きている中で、企業は適応しながらも芯がぶれないブランドであり続けなくてはなりません。それを客観的に見極める手法として、本田氏は「パーセプションによる管理」が必要だと述べました。
パーセプションを形成する5つの要素とは?
また本田氏は、パーセプションを形成する要素として以下の5つを挙げました。
1.事象
2.リテラシー
3.グループ
4.タイミング
5.コントラスト
1つ目の要素は、パーセプションに至る事実や何らかのファクトを伴った「事象」です。何となくイメージを抱くのとは違いその根拠である事象が存在することで、パーセプションは形成されます。同じ事象であってもそれを見る人の経験や価値観でパーセプションが異なってくるため、2つ目の「リテラシー」もまた要素の一つです。
3つ目の「グループ」は、既知のものにグルーピングやカテゴライズをすることです。どのグループに所属するかで、パーセプションも異なります。4つ目にある、社会の潮流や時流などの「タイミング」も、パーセプション形成に影響を与える要素です。
最後の要素「コントラスト」は、相対評価です。比較対象が与えられることで、今までとは異なるパーセプションが生じます。
これら5つの要素が相互にあるいは1つだけでも存在することで、パーセプション形成が起こると本田氏は解説しました。
さらに本書では、具体的なパーセプションの活用方法や事例、パーセプションを設計から計測・分析するまでのフレームワークを解説した一冊となっています。自社のブランドがユーザーに「どう思われているか」の解像度を高め、パーセプションをコントロールする方法を学びたい方は、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。