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「一言発想法」から学ぶ、ファンの心を動かす方法

博報堂が開発した「じぶんランウェイ」の誕生プロセスを追体験 体験価値創造の7ステップ

 本連載では、クリエイティブの面から多岐にわたるクライアント企業の支援をしてきた博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 尾崎チームが、「一言発想法」の考え方を共有。フレームワークを活用し、マーケターの実務上の悩みを具体的に解決する視点やアイデアを提供していく。最終回となる第6回は「じぶんランウェイ」という事例をベースに、発想〜設計のプロセスを解説していく。

サービスへの願いや想いをベースにコンセプトを考える

 前回の記事「『テコの原理』を使った体験設計 企業のイシで生活者のイヤを解決する」では、ファンを生み出す仕組みについてテコの原理を使用しながら解説しました。最終回となる今回は、これまでお話ししてきた発想〜設計のプロセスを、実際に博報堂が開発した3Dアバター試着サービス「じぶんランウェイ」をベースにしながら再現していきます。

じぶんランウェイ サービスイメージ

 このサービスは、コロナ禍によりリアルで試着がしにくい環境下で生まれたバーチャル試着の体験です。

 自分自身を3Dスキャンして、フォトリアルな自分のアバターを生成し、そのアバターが様々なファッションコーディネートを着てランウェイ上を歩き、自分を360°自由自在に確認できます。試着した複数の自分がランウェイ上を続々とウォーキングして登場し、比較しながら試着を楽しむことが可能です。

 これにより、試着した自分を比較して見たいといった要望や、試着が面倒くさい、動いてみたらどうかがわからないといった試着に対する不満の解決ができます

 実際に、サービスの体験を考えていくときのSTEPは7つです。

サービスの体験を考える7つのステップ

 まずSTEP1〜3は前回説明した支点(サービスの目的)を定めるSTEPです。

 STEP1では、自分たちのサービスに込める想いや願いを記入します。段階が進むごとに精緻化していけば良いので、簡潔な一言である必要はなく、飲食業をやりたい、ファッション関連のサービスをしたいなど、想いベースでの記入になります。

 今回は、「ファッション関連、特に試着をもっと気軽に楽しめるサービスをやりたい!」という想いから入りました。

体験価値のヒントは生活者が抱える何気ないモヤモヤ

 試着に関するテーマで何をやりたいか決まりました。STEP2では“試着に関する不平や不満”を箇条書きにしていきます。「色々なお店を回るのは面倒くさい」「試着室でも後ろ姿や全身が見にくい」など、日々の生活の中で自分を含めた周囲の人が不満に思っていることを書きだします。その中で1つ重要なのが生活者の日常生活における“モヤモヤ”を発見することです。このモヤモヤすることが新しいサービスや体験のヒントになっていきます。

 次に、STEP3ではイシとイヤの2つが重なる部分を見つけて、「生活者にとって意味があること」を考えていきます

 具体的な思考フローとしては、「試着の体験は改良点がありそう」、「でもコロナでお店に行きにくい」、「デジタル上での新しい試着体験を考えればニーズがありそう」、「服の廃棄問題にも貢献できて、生活者の気持ちに寄り添えそうだ。(支点の位置が左に寄ってファンになってくれそうか?を確認)」。それを踏まえて、今回の目的を「デジタル技術で人と地球にうれしい試着体験を提供する」に設定してみるといった流れです。

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この記事の著者

尾崎 徳行(オザキ ノリユキ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 クリエイティブディレクター
1998年博報堂入社。以来、100を超える企業やブランドのブランディング、統合コミュニケーション、 商品・サービス開発などに従事。多様なクリエイティブ領域の経験を生かして、新しい体験価値の創造を実践している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

庄司 健一郎(ショウジ ケンイチロウ)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 エクスペリエンスディレクター

2001年、大手ディスプレイ会社に入社。大規模イベントや商業施設の体験演出に携わる。
その後米国留学、外資系広告エージェンシー等を経て2019年より博報堂。
テクノロジーを活用した体験設計を得意と...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

中島 優人(ナカジマ ユウト)

博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局 エクスペリエンスプラナー
広告コミュニケーションの経験を活かしながら、生活者の思い出に残る体験づくりを目指す。公共空間、学習施設、アプリ、XRなどジャンルを問わず企画を行っている。
消費者が選んだ広告コンクール/Japan Brandin...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/42591

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